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檻

声。耳の中で反響している。どこかで水滴が落ちている。ひそひそとした囁き声。揺らめくランタン。


「新入りか?」


「……あいつら、また一人捕まえたのか……」


「随分若いな」


四方から押し寄せてくる音が、俺の目を暗い部屋へと開かせる、もし「部屋」と呼べるならだが。それは小さく、地下牢のような一帯で、唯一足りないものといえば牢屋くらいだ。あちこちに、おそらく排泄物であろうものが詰まった樽が散らばっている。壁は少しずつ剥がれ落ち、茶色い染みが、病的な装飾のようにこびりついている。そして中央、俺の真正面には、格子で守られた大きな門がある。


目がゆっくりと開く。


意識を失っていたわけじゃない、ただ目を閉じていただけだ、自分がどこにいるのか理解しようとして。


まだ感じる、あのゴブリンの爪がここまで引きずってくるときに腕に食い込んでいた感触を。奴らは何にぶつけようが気にしなかった、腕が一歩間違えれば折れそうな角度になっていても、まったく気にしなかった。


空気は腐敗の臭いを放ち、中の人々も同じくらい、あるいはそれ以上にひどい状態に見える。


壁から体を離し、周囲にうずくまる人影を見渡す。何人かは、新入りに困惑しながら見つめ返してくる。他の者たちは気にもかけない。頭を腕に埋め、胎児のような姿勢でかろうじてしがみついている。


誰もがぼろぼろのローブに包まれていて、俺にも同じものが着せられているらしい。ほとんど何も覆っておらず、靴もない。


誰もが憂鬱そうで、完全に虚ろになっている。そして、俺が投げ込まれるのを見て、彼らはさらに沈み込んだようだった。


ここでは、希望は架空のものだ。


みんな男だが、それぞれあまりにも違う。青い肌の者、角のある者、昆虫のような顔の者……だが、俺たちすべてに共通する重要な特徴は、俺たち全員が持つ人型だ。


うめきが漏れる。


最高だ。まともな脱出方法もないまま、敵の牢獄に真っ直ぐ放り込まれた。セイブル・ヴェイルが助けてくれるかもしれない……かもしれない……でも、それだけに頼るなんて?


いや、それはない。


それに、正直、彼らがタイロクスと戦おうとすらしなかったのを覚えている。ただ武器を鞘に収め、注意深く聞いていた。それ以降に何が起きたのかは、ほとんど思い出せない、あのオークの手が、俺の頭蓋骨を潰す2プシ手前のところで、10分間くらい俺を掴んでいたことを考えれば。


だが、セイブル・ヴェイルについて、正直に言えば、彼らが俺を救っても何も得るものはない。むしろ、彼らはただ、命を懸けて誰かのために危険を冒すだけだ、その相手が――


……いや、やめよう。


いずれにせよ、俺はここで朽ち果てるつもりはない。すでに奴隷として鎖に繋がれている。首のこの首輪が、その事実を残酷に思い出させてくる。


奴隷であること自体、十分にひどい。ここから彼らの助けを借りて脱出できるかどうかなんて、関係ない。


「よお、なんでそんな暗い顔してんの?」


意外にも気軽な声が、この陰鬱さを切り裂く。この重圧から少しだけ解放されたと言えば嘘になる。いや、今のは、少し評価しすぎだな。


「落ち着けよ、ウォール。こいつはたぶん、2年間仲良くしてた女の子に告白したら、あっさりフラれたんだと思う」


それは推測にしては具体的すぎるだろ!!


「いや違うって、見ろよ、首輪ついてるじゃん。たぶんこいつ、奴隷だったのが捕まって、二重奴隷になったんだよ!!」


それはまあ、根拠のある推測だな。


視線が、目の前に立つ、奇妙なくらいリラックスした二人の男へと移る。一人が手を差し伸べてくる。


1時間ほど脇に垂れ下がっていた手が、油切れとしか言いようのない動きで、彼の手へと上がっていく。


彼はかなり軽々と俺を引き上げてくれる、その顔をようやくじっくり見ることができる。


「よお」彼が二本指の敬礼をする。「名前はウォール・フラムバーン。ヴァルティア出身」


見た目は若そうだ。ダンジョンの中でサングラスをかけているせいで、正確に判断するのは難しいが。


雪のように白い、わずかに水色がかったスパイキーヘアーをしている。顔には、ほとんど目立たないが確かにそこにある傷が下唇にある。それに、どういうわけか、彼のメガネは没収されなかったらしい。しかも……妙にモダンな見た目をしている?


彼の自己紹介に頷くが、俺が名乗る前に、彼の仲間が隣に歩み出る。


「スティル・エフェット。ヴォラリス出身」彼が微笑む。


どちらの場所も、聞いたことすらない。


スティルはだいたい同じくらいの年齢、いや、もしかしたらもっと若いかもしれない。灰色の波打つ髪、ほとんどスパイキーで、頭にはそれを少し抑えるヘッドバンドをつけている。ダイヤモンド型のイヤリングもしている。よく見ると、彼の目が閉じているのか、単に隠れているだけなのか、判断がつかない。


彼が手を差し出す。握手する。


「カイト」


「……」


「……」


たぶん、俺が二人の自己紹介とは対照的に、出身地を言わなかったから見つめているんだろう。ちょっとした問題がある――俺はそもそも、この世界の出身じゃない。


「どこ出身?」スティルが尋ねる。


「……アマツラっぽい名前だな。たぶんそこ出身だ」ウォールが顎に手を当て、笑いながら言う。「実は俺、あそこで一度、海坊主を倒したことあるんだよね」


その言葉に聞き覚えがある。日本の民間伝承に出てくる海の精霊のようなものだったと思う。詳細は覚えていない、ただ基本的なことだけ。まあ、それは正直どうでもいい。この世界は、既存の民間伝承への俺の期待に、いつも変化球を投げてくるのが大好きらしい。ゴブリンだけでも十分な証拠だった。


神様、もし妖精がグロテスクな巨人か何かだったら、マジで誰かを傷つけかねない。


「それ、絶対ジンにからかわれてただけだと思うよ。しかも、まんまと引っかかって、小さな女の子みたいに叫んでたし」スティルが訂正する。


「おい。ジンはあの地域には住んでないだろ。それに、あれは追い払うためだったんだよ」


「同じ文の中で自己矛盾してるけど、まあいいよ」


二人が言い合う間、こめかみをさする。だらだらと言葉を投げ合ってるだけじゃないか。もっと本気出して言い合えよ、くそ。


「何そんなイライラしてんの、目ぇ半分の奴」ウォールが尋ねる、その質問はこちらに投げかけられている。


「はぁ?」


もう名前呼びし合う仲になったのか?


「スティ、こいつ今にも寝そうな顔してない?」


お前の名前、そんなに縮める必要ないほど短いだろ!


「3日ぶりに聞いた真実だな」


「おい」


「?」


ウォールが個人的に傷ついたような顔をする。おそらく、スティルの言葉に反撃するつもりなんだろう。彼の口が開くのを見て、来るべき猛攻に備える。


「……ハエが羽を失ったら、それって『歩く』って呼ぶのかな?」


……。


「たぶん、そうなんじゃない」


こいつらの脳みそには、ハエしか入ってないのか。


心の中でうめく。


よし、二人の性格は把握した。でも本当に、どうしてこんなにリラックスしていられるんだ? 周りには、体を丸めて泣いている少年たちや、崩壊した人生を見つめる中年男性たち、そしてただ途方に暮れている老人たちがいるのに。


よし。本題に入る時間だ。


「なあ、ウォール」


「何?」


「お前ら、どうやってここに来たんだ?」


彼が一瞬上を見上げ、眉を寄せる。


「……俺たち、75匹のコボルドに襲われてさ。長い、激しい戦いだった。かろうじて生き延びたけど、回復中にあのゴブリンどもに捕まったんだ」


「コボルドは3匹だったし、回復中でもなかった。あんたが寝るときに焚き火を消し忘れたから、あいつらに見つかったんだよ」スティルが訂正する。


「それ、俺が言ったことじゃん」


なるほど。スティルの言うことだけ聞いておこう。メモした。


「でも真面目な話」ウォールが続ける。「俺たち、実はここでは新入りなんだ。そもそもここにいる理由は、俺たちの……えっと、ギルドが、ヴァロスから行方不明になった村人たちを探しに送ったからで……」


「それで、身をもって知ることになったってわけ」スティルが言う。


「――ああ」


ウォールがあくびをする、手が気だるげに口へと動く。


「まあ、そんなに大したことじゃないけどな。さっき看守が来て、俺たちはもうすぐ、何かのゲームのために釈放されるって言ってた」


思わず頭が動く。タイロクスが言っていたやつだ。彼は俺にこの「ゲーム」とやらを挑もうとしていた。もし彼がこの囚人たちを釈放する気があるなら、おそらく何か危険なものになるはずだ。


「そもそも、ここでお前らに何をさせてるんだ?」尋ねる。


彼らの顔が少しこわばる。小さな違いだが、それに気づく。


「基本的に、俺たちは繁殖用の家畜だよ」ウォールが平坦に言う。


「……」


「悪い」


ここの状況がこんなに悲惨な理由が、突然、はるかに腑に落ちる。この人々は……想像すらできない何かを、強制されている。


「ゴブリンは無性生殖の生物です。それに、理知的種族と交配できる、数少ない異形種のひとつでもあります。そうして、より強力な異形種を実際に作り出すのです」


「……」


「……これは、極めて不適切な質問だとは思うけど、聞いてもいいか、それってどういう仕組みなんだ?」


「別に問題ないよ」スティルが言う。


「あいつらの交配の仕方、本当に奇妙なんだ。種を食べさせられて、それを飲み込む。何時間もえずいた後、あいつらがその中身を回収して、どこかへ持っていく。少なくとも、俺が見た限りではそうだった」


「それは奇妙だな。てことは、お前らはまだ……?」


「してない」


「してないよ」


この二人がこんなに落ち着いていられることに、再び思いを馳せる。


「……なんでお前らは緊張してないんだ? これって、誰でも気が狂いそうになるような絶望的な状況だと思うんだけど」


こんなに率直な質問をするつもりはなかったが、ウォールが先ほどあまりにも無関心そうにあくびをしていたのを見て、限界を越えてしまった。


「……うーん、たぶん、それは……」


彼は顎を叩く。


「俺、周りのみんなの考え方に、自分が影響されないようにしてるんだよね、わかる?」


彼は手を振る。「周りの環境や知り合った人々には確かに簡単に形作られるものだけど、それでも、自分が保てる個性ってものはあるだろ。それって、そんなに難しいことじゃないんだよ」


彼はメガネを直す。


「俺は俺だし、俺が何をするかについては、俺だけが力を持ってる」


「なるほど」


正直、いい指摘だ。彼は過度にうるさかったり騒がしかったりするわけじゃない。ただ、自分が普段そうであろう性格を保ち続けているだけだ、単に絶望に沈むことを拒んでいるから。彼は彼であり、彼は彼である。


言い換えれば、彼は「普通」に屈することを拒み、自分の個性を発揮しているんだ。


スティルがくすくす笑う。


「俺の場合は、まあ、たぶんもうこういう状況に何度もいたことがあるからかな」彼の頭が後ろに傾き、上を見上げる。


「絶望って、天井を本当に暗くするけど、小さな白い希望の点が入ってくると、それをすぐに壊しちゃうんだ。希望はその逆でね。少しの絶望が希望を塗りつぶすことはできるけど、それはほとんど気づかないくらいなんだ。俺にはまだ、希望の水玉模様が残ってるんだと思う。それが、俺を普通に保ってくれてる」


まあ、意外と良い答えだった。


「お前は? お前、それを何度も持ち出す割に、そんなに落胆してるようには見えないけど」


スティルが尋ねる、俺自身に向けて。


セイブル・ヴェイルに頼ることはできない、だから『ああ、仲間が助けてくれるから』なんて答えは論外だ。


「もし最善の答えを言うなら、俺はすでに脱出を試みると決めてるからだ。今こうしてる間も、脱出方法を考えてる」


二人が互いに目を見合わせる。


「ああ、なるほど、そういうタイプか。お前は、現状を積極的に拒絶して、その状態にとどまり続けることを否定してるから、絶望しないんだな」彼が締めくくる。


「――もっと簡単に言えば、たとえぼんやりとでも、すでに次の一歩が見えてるってことだね」ウォールが付け加える。


「まあ、そうとは言わないけどな……」


実際は、それとはかけ離れている。かなり遠い。


意見を言う前に、部屋中に大きな音が響き渡る。全員の頭が、まるでヘッドライトに照らされた鹿のように、その音の方へと弾かれる。


部屋の入り口が大きく開き、光があたり一面に散らばる。


何人かがバラバラの位置に散っていく。何人かは立ち上がり、何人かは隠れようとする。俺は、しかし、どうすればいいのかわからず、同じ場所に留まる。ウォールとスティルも同じで、その顔には今、厳しい表情が浮かんでいる。


ドスン、ドスン。


階段を降りる重い足音。


その圧力は、骨を砕くのに十分なほどだ。圧倒的な恐怖感を抑えられない。


「ご機嫌よう、家畜どもよ……」


深い声、その轟きが俺の芯まで震わせる。


タイロクス。


ドスン、ドスン。


彼が視界に入ってくる。楽に10フィートはあり、俺たち全員を見下ろすほどそびえ立っている。彼は巨大だ。顔は鎧のような骨で覆われているようで、生物であることの唯一の兆候は、その眼窩の中に光る赤い輝きだけだ。角が天井まで届くほどそびえ、ほとんど突き刺しそうなほどだ、その脅威の証として。


俺の前に立っているのは、怪物だ。


「俺が留守にしている間、遊び回ったりはしていなかっただろうな? お前たちを牢から解放していたのは、たったの一日だけだ」


答えはない。


彼はここに一人だ。もし俺たち全員が結束して彼を襲えば、勝算はあるかもしれない。だが、それは「もし」の話だ。ここにいる全員が、あの生物と戦うために命を懸けるとは思えない。もしそうすれば、彼らは明らかに――


「――タイロクス!!! 彼女にしたこと、絶対に許さない!!」


その音の出所へと頭を向ける。足が地面を叩く。


一人の男が突進する。キチン質のような物質でできた顔をしていて、触角と大顎を備えている。手には、底が欠けた大きな石を握っている。


槍を持った二体のゴブリンが階段を駆け下りてくる、必死にリーダーを守ろうとして。


こいつ、何やってるんだ? タイロクスは彼の5倍の大きさだ、絶対――


「バキッ!!」


その音が壁に反響する、部屋の大きさのせいで特に大きく。それに続いてこだまが、それから叫びが響く。


「――ぎゃあああああああああああああ!!!!!!!」


彼に突進していったその男の背中から、奇妙な大きな塊が突き出ている。青い血が傷口から流れ落ち、彼が地面に崩れ落ちる中、滴っている。彼の背中は今、不自然に外側へと丸まり、痛みにのたうつ大顎から、口のように泡が噴き出している。上半身と下半身の動き方には明確な違いがある、まるで上半身がだらりと垂れ下がっているかのように。


一体何が起きたのか、まったくわからない。


そのオークが、俺たちを見つめながら手についた血を振り払う。


「知っての通り、俺は自らの手で暴力を振るうことに強く反対している」


彼は、のたうつ男を見下ろす。


「だが、もし自らを守らなければ、俺の身に損害が及んでいただろう。だから、これは純粋な正当防衛だ。俺が理由もなく他者を攻撃するところなど、決して見ることはないだろう。俺は、ここでは正しい側にいる」


こいつは一体、何を言おうとしているんだ? 男の背骨を折ったことへの正当化を、自分自身に与えているのか? こいつ、何を言ってるんだ?


犬歯が互いに押し付け合う。


群衆から息を呑む声が上がる。


「さて、お前たちは皆、まもなく始まる奇妙な『ゲーム』の噂を聞いていると思う」


一瞬の静寂。


「それは真実だ。この町で、あるゲームが行われる。結果次第で、お前たちの仲間が解放に値するかどうかが決まる」


息を呑む声。喜びのものだ。


部屋を見回す。何人かは困惑した様子だ、そもそもなぜ解放されるのか、あるいはなぜゲームをプレイしなければならないのかについて。だが、彼らはそれに疑問を投げかけることはできない、殺される、あるいはもっとひどい目に遭うリスクを冒すことになるから。要するに、彼らには従う以外の選択肢がない。


「二つのチームが編成される。ひとつは『俺のチーム』、俺自身の兵士たちで構成され、その数は3。そして『お前たちのチーム』は4だ」


彼の背後で、ゴブリンの見張りたちが油断なく立ち、タイロクスの命令に逆らう者に飛びかかる準備をしている。だが一体だけ、体を奇妙な角度に傾けて立っている。


その視線が俺の方へと移動し、目が合う。


「そして、お前たちの新入り、カイトが、隊長を務める」


胸が締め付けられる。


視線が俺に突き刺さるのを感じる。あまりにも多くの命の重みが、今、俺の肩にのしかかってきた。


「ルールは、『かくれんぼ』として知られるゲームに似ている。ただし、いくつかの違いがある。ゲームの前に、お前たちは自らに呪いをかける。設定された境界線を越えると死ぬ呪文だ。その後、お前たちは俺の兵士たちを見つけることになる、彼らは背中に特定の紋章を刻んでいるが、それを見抜くのはお前たち次第だ。隠れ場所を選ぶ際は、そこに『ロック』しなければならない。時間をかけすぎれば殺される、間違った選択をすれば殺される」


「お前たちには、4人を選ぶための45秒間が与えられる」


叫び声が始まり、混沌が訪れる。


「あの子はもう決まってる、ジャイト、あいつが一人目だ!」


「俺が行く!」


「いや、お前は馬鹿すぎる!」


騒がしいやり取りが噴出する。


「俺が行くよ」ウォールが言う、その顔は決然としている。


「俺も、だな」スティルが付け加える。


20秒。


ここにいる全員が、自分自身の命を恐れていて、誰か他の者が自分を差し出してくれるのを必死に待っているんだろうと思う。正直、責められない。それが人間の本性だ。自らの命を守ること。


「――俺……行く」


声が割り込み、全員の頭がその出所へと動く。それは奇妙なことに、地面からだった。そして俺たちが見たのは、あの同じ昆虫のような男だった、その背中は奇跡的に元通りになっていて、まるで一度も損傷したことがなかったかのようだ。まだ血にまみれているが、目に見える傷はもうどこにもない。


こいつ、なんでもう治ってるんだ?


彼は膝に手をつき、俺の隣に立ち上がる。


「驚くほど頑丈だな」オークが切り出す。


「ああ、お前の種族は再生が速い傾向にあるんだったな」タイロクスが述べる、両手を背中に回しながらその昆虫人を観察する。


その男は答えないが、体格差にもかかわらず、そのオークを見つめ返す。


「さあ、お前たち全員、この装置に手を置け」


一体のゴブリンが俺たちの方へと駆け寄ってくる。小柄で、キュロスより大きくはない。開いた両手のひらに、リング状の奇妙な石のような物体が乗っている。その穴は、俺の手が入るくらいの大きさだ。


俺たちのチームが順番に、その物体の中に手を入れ始める。何人かが顔をしかめる。


俺の番になると、その物体自体を分析するのに少し時間をかける。ギザギザで、鋭くさえある。奇妙な文字があちこちに刻まれている――


何かが手首を掴む。


「――くぁっ?!」


手が突然リングの中に押し込まれ、鋭い痛みの感覚が体に入り込み、思わず顔をしかめる。病院での注射のような感覚だ。その物体を持っていたゴブリンが、俺の腕を掴んで押し込んだのだ。


急いで手を引き離し、手首を掴んで痛みを振り払おうと手を回す。呪われた代物だ。


「さて、それでは、余計な前置きなしに、ゲームを――」


部屋の端にある大きな門が開き始める、腐った金属の大きなきしみ音が部屋中に反響する。その音自体は特に大きい、まるでそれが何年も開かれたことがなかったかのように。


光がキャンバスに絵の具を注ぐように差し込み、やがて俺の目を眩ませる。


「待て」


ついに、口を開く。


ゆっくりと高まっていた興奮が、俺へと向けられる、全員の目がこちらを向く。誰もが完全に沈黙している。世界が一瞬死んだかのようで、その光を、中央に立つ俺へと注いでいる。この瞬間、部屋中で暴れ回っている唯一の感情は好奇心だ。


「ん?」


腕が上がり、何かを指し示す。


「……お前の左にいる兵士。あいつが、隠れる側の一人だろ?」


視線が、そのゴブリンに絞られる。


「?!」


部屋から息を呑む声が湧き上がる。この群衆、本当にそれが好きらしい。


「……一体どうして、そんなことがわかった? ゲームはまだ始まってもいないぞ」タイロクスが尋ねる。


指がそのゴブリンを指す。


「お前は、ゲームに開始地点があるとは一言も言わなかった。むしろ、ゲームはもう始まってるんじゃないのか? だってお前は、すでに隠れる側の一人を用意してるんだから。お前はただ、先にルールを説明しただけで、それは何の意味もない」


「それに、お前のその小さな仲間についてだが、あいつはここにいる中で唯一、ずっと反対方向を向き続けているゴブリンだ。普通なら、何かの作業をしているだけだと片付けるところだが、よく見ると、あいつはただ腕を動かしていただけで、忙しいように見せかけていた。つまり、紋章を隠していたんだ。なぜこいつがここまで危険を冒して降りてきたのか? 知るかよ。それに、たとえそれが根拠のない非難だと言われても、俺は角度を変えて実際に何をしていたのか観察したわけじゃない、だがあの部屋の一角――あいつが入ってくる前――は完全に空だった。もうひとつの反論として、あいつがポケットから何かを取り出したという可能性もあるが、あいつはズボンを履いていない。鎧だけだ」


「それに、もしそれが、入ってくる前からすでに手の中に収まるくらい小さいものだったなら、あんな大げさな腕の動きで、そんな小さな物体をいじる必要なんてなかったはずだ」


「……」


「それに何より、俺がそれを指摘したときのあいつの顔のひきつりが、決定打だった。まあ、それがなくても十分だったけどな」


「それに、それが意味するのは、紋章そのものが赤い頭蓋骨だってことだ」


そして、もし運が良ければ、それらは全部左腕にあるはずだ。だが、それは声に出さない。


「……」


タイロクスの背後にいたゴブリンが何か話そうと、両手を上げるが――


脳漿が壁に飛び散る音が響き渡り、血と肉片が地面に降り注ぐ。


死体が地面に崩れ落ちる。


タイロクス自身が、拳の甲でその頭を破壊したのだ。彼は、これをまったく気に入っていない。


ざわめきが広がる。


人々の海の中、俺の目がそのオークの目に固定される、彼も同じことをする。これは、他の人々を巻き込んだゲームじゃない。これは彼と俺の間のゲームだ。彼は知性のゲームを進めようとしている、自分が知的に優れていることを証明するために。


「さっき、自分の手で暴力を振るうことには反対だと言ったよな。つまり、お前はより戦術的な人間ってことだ。それが、お前のゲームだとしよう」


「じゃあ、仮定として、もし誰かがお前自身のゲームでお前を打ち負かしたら、どうなるんだ? お前はそいつを殴るのか?」


そのオークは沈黙を保つ。


賢い選択だ。


彼は賢い。これはファンタジー的な戦いじゃない、だが、それでも戦いには変わりない。俺たちの知恵が互いに測られようとしている。巨大な悪魔対、小さな少年。


これは今、彼の世界だ。ここではすべてが彼の意志に従って動いている。


拳を握りしめ、それを掲げる。


「俺はお前を叩き潰す、タイロクス」


俺がこの世界の出身じゃなくて、よかったよ。

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