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FRACTURED://EDEN  作者: DALG0ZA
第一篇『侵入』
11/13

必然死


少女は迫る一撃を辛うじてかわし、流れるような動きで後方へと回転した。長く流れる黒髪が後ろへとなびき、風に捕らわれたリボンのようにねじれる。


相手からもう一撃が繰り出され、彼女は素早く滑らかな動きで刀を抜き、その一撃を受け流す。


金属同士がぶつかる地点で火花が散る。一瞬、その光が彼女の顔を照らし、瞳に宿る落ち着いた激しさを際立たせる。


相手の大剣は巨大で、彼女の全身の長さに匹敵するほどだった。あれの一撃をまともに受ければ、彼女を真っ二つにするのは明らかだ。


幸い、これまでの一連の攻撃を防ぐには、彼女の刀で十分だった。この先も、その猛攻に耐え続けられるかは、まだわからない。


「アサカワ……アサカワ……その名、その刃……」


もう一撃。


受け流す。


「お前、東方のアマツラ出身だろ? 俺とコウガも、あそこの出身なんだよ!」


銀髪の男が高く立ち、その圧倒的な大きさにもかかわらず、次の一撃のために武器を構える。アサカワは構えを保ち、後ろ足を後方へと引き、刀を下向きに角度をつけて備える。


「同じ場所出身の二人が戦うなんて、おかしいと思わないか?」コウタが尋ねる。その気軽な口調が、緊張し硬直した体の構えとは裏腹だった。


彼が先ほど発した脅しが、まだ彼女の脳裏に響いている。彼の本性を鋭く思い出させる。彼は明らかに、彼女を見下すように話しかけ、その警戒を解こうとしていた。


「くそ、話せよ!」彼は吠え、剣を地面に叩きつける。自分の試みがこれ以上進展しないことに苛立って。その動きを予測し、アサは本能的に後方へ跳んだ。その攻撃は明らかに前兆があった。


だが、彼女が予想していなかったのは、その後に続いた爆発だった。地面から剣を持ち上げると、コウタは彼女の方向に岩の爆発を起こす。その武器の凄まじい力が、二人の下の大地を割り、石を空中に散らした。


彼女は最初の飛来物の下をかいくぐり、次の呪文の準備を始める。中指を鳴らし、体を左に傾け、腕を外側へと振り抜く。


「ガイアドロス13、包囲」


伸ばされた腕からエネルギーが放出され、発射された石を互いに引き寄せる。それらは接着剤のように張り付き、飛来する瓦礫を逸らすのに十分な強度の壁を形成する。


「それだ。剣術がお前の強みじゃないってのはわかってた。まあ、タウマイトレベルの魔術を期待してたんだけどな、基礎呪文じゃなくて。全力を出せよ――」


石がコウタの顔面に見事に命中し、その言葉の途中で頭が後ろに弾かれる。


「お喋りが過ぎます。集中してください」


コウタは一瞬静止し、その衝撃を処理する。ゆっくりと頭を彼女の方に戻す。首が、位置を戻すようにポキポキと鳴る。包帯はまだ顔を覆っているが、今や頭頂部から一筋の血が流れている。


「じゃあ、他にどうやって自分の気持ちを言葉にすればいいんだ? 人間が自分を表現するのは、当然のことだろう」


「自分の気持ちを言葉にすることと、自己中心的な言い分をまくし立てることには、明確な違いがあります。あなたは後者です」


彼の口元に小さな笑みが浮かぶ。手を伸ばし、剣の刃の部分に触れる。


「シャミ」


その瞬間、警告もなく、何かがアサカワへと発射される。受け流す時間がなく、彼女は腕を上げてその一撃を受け止める。袖が裂け、傷口から絶え間なく血が流れ出るのが露わになる。


彼女は一瞬、コウタを見つめる。彼の手は宙に角度をつけていて、まるで何かを投げ終えたかのように、指が半分丸まっている。腕を下げる彼を見ながら、彼女の頭は彼が何をしたのかを理解しようと高速回転する。


「ようやく、困惑した顔になったな。お前を殺す価値が、より高まったってわけだ」


彼の手首が一振りされると同時に、痛みがアサカワの体を貫く。よろめきながら腕を押さえ、後ずさる。


血が地面に飛び散る。


その真紅の染みを見つめ、頭が加速する。自分の血が、どうしてこれほどの距離まで届いたんだ? 通常の傷なら、数インチ噴き出すだけのはずだ。


なのに、なぜこんなに遠くまで飛んだんだ?


コウタを見上げる。もし彼を見極めたいなら、より直接的な対決の方がいいだろう。可能であれば、彼が自分の能力を使う前に、この戦いを終わらせたい。


彼女は人差し指を噛み、呟く。「グラヴィタス2、上昇」


その言葉が発せられた瞬間、現実が変化する。二人を中心とした半径4メートルの重力が反転する。地面が震え、石や葉、そして小さな生き物までもが空中へと浮かび上がる。地面には影が残る、決して空中に浮かぶはずのないものたちの影が。


鳥たちさえ、自分の翼がもう指令に従わなくなったことに混乱し、投げ出される。


「まさか、こいつ、ステージ2を使いやがった――!?」


男は剣を地面に打ち込み、足が浮き始めても自らを固定しようとする。彼の体が、ゆっくりと、だが確実に上昇していく。


もはや明確な方向というものは存在しない。何ひとつ、固定されたままではいられない。


グラヴィタス系の呪文は強力だが、制約が伴う。ほとんどが局所的な範囲に限定され、術者はその影響下の空間内に留まる必要がある。


アサカワも例外ではなかった。彼女もまた上へと浮かんでいくが、彼女は近くの根の張った木に刃を打ち込んでいた。


コウタを観察しながら、彼女は彼の剣が地面に十分深く食い込んで固定されていることに気づく。だが、地面の緩んだ構造と、上昇が続いていることを考えれば、それも長くは持たないだろう。


野戦型の呪文は、続けば続くほど、より強力になっていく。


二人は、いわば「持久戦」に突入し、相手が先に踏ん張りを失うことを期待していた。


2分が経過しても、コウタは安定していた。彼はうめき、力を込め、地に留まるためにできる限りのことをしていた。


他に選択肢がないと悟り、アサカワは木から剣を引き抜き、頭上に刃を掲げたまま、彼へと身を投げ出す。


重力が無効化されている今、距離は急速に縮まる。重量が意味を持たなくても、ベクトルは依然として作用する。


コウタは笑みを浮かべながら剣を持ち上げ、それを迎え撃とうとする。彼女の動きを読み切ったと思い込んでいた。


だが、彼女は斬りかかるつもりはなかった。


アサカワは空中で体をひねり、彼の刃に足を乗せ、強力な突き――というより蹴りに近い動作で、自分を木の方へと後方に押し出す。


その突然の押し返しがコウタの武器を不安定にし、彼を反動へと追い込む。彼はなんとか握りを維持したが、彼の想定は裏切られた。


彼は、この反発の後に剣が地面に落ちると予想していた。この種の状況では、いつもそういうパターンだった。大剣を扱う際、武器の重量は最初に教わることであり、ほとんど第二の本能となっていた。


戦闘でそれを適切に扱うには、重心を考慮しなければならない。コウタはこの事実に、絶大な自信を持っていた。


だが代わりに、それは後方へと浮かび続けた。


彼の目が見開かれる。この重力は、まったく不自然だ。


彼は空中で無力に回転する。剣が、彼の動きを支配していた。


方向感覚を失いながら、姿勢を立て直そうとするが、制御を超えて上昇し、回転を続けるばかりだ。


「!?」


アサカワは自分の刃をさらに深く木に食い込ませる。手が、今やさらに出血している。


第二段階の魔術は代償を要求する。第一段階の呪文は簡単な身振りで唱えられる。タウマイト――第二段階に到達した者――であるからといって、魔術の負担が軽くなるわけではない。そのレベルの呪文は、それ以上に、あるいはそれ以上の犠牲を要求する。


「グラヴィタス16、衝突」


彼女は手を下向きに振るう。


世界が反応する。


すべてが落下する。石、動物、瓦礫、すべてが見えない糸に引かれるかのように急落する。何匹かの生き物は落下によって怪我を負ったが、致命的なものはなかった。


だがコウタは、凄まじい力で地面に叩きつけられる。痛みの喘ぎが漏れ、体が顔を下にして土に激突する。


「ぐはっ!!」


彼女は彼の背骨を折ることを狙っていた。だが彼は、ぎりぎりのタイミングで体勢をずらすだけの賢さを持っていた。


彼の体は、地面に広がったまま反応しない。


一瞬、彼は静止していた。


意識を失ったのか?


アサカワは慎重に前へと歩み出す。手を刃の上に浮かせながら。彼が一時的に朦朧としていることは明らかだったので、完全な警戒は必要なかった。


近づく。


近づく。


突然。


バン!


コルスのリボルバー。グルーム。


彼女は視線を逸らすことを許さなかった。集中は相手に固定されたままだった。


コウタの左手が素早く動く。彼は自分の刃の端をタップする。


彼女は即座に反応し、刀を振り下ろす。


彼は横に転がり、その一撃をかわす。


アサカワは再び反応し、彼が移動した一帯を狙って斬りつける。


二人の武器が再び火花の中でぶつかり合い、刀の刃先が彼の顔面のわずか数センチのところまで迫る。


「くっ……くそ……」


この時点で、これは力の勝負になっていた。ただし、本来の意味とは違う形での。アサカワは彼が肉体的には自分を上回れることを知っていたが、彼女には有利な点があった。彼女は彼の上に位置し、両手で刃を下向きに押し込み、剣先が抵抗に震えていた。


彼は歯を食いしばり、ブーツを地面に食い込ませて踏ん張る。彼女は一撃に体重を乗せ、全身のあらゆる筋肉を張り詰めさせる。


どちらも譲らない。


突然の動きで、コウタが手首を前方に弾くと、アサカワの体がほとんど本能的に反応する。


彼女は後方によろめき、バランスを崩しかけるが、辛うじて体勢を立て直し、再び防御の構えを取る。刀を構えたまま。


ようやく前を向いた男が、立ち上がり始める。


「くそ……肋骨、1本か2本折れたかもな……」コウタが歯を食いしばりながら唸る。胸を押さえながら。彼は剣を杖代わりにし、ゆっくりと立ち上がる。


腕の筋肉が緊張し、武器を彼女にまっすぐ向ける。眉が、相手への純粋な怒りで歪む。


「お前をぶっ殺してやる、このクソ女」


彼の手が上がり、刃の平らな部分をタップし、それから拳を握りしめる。皮膚の下で血管が目に見えて膨れ上がり、怒りに脈打っている。


彼が自己中心的な狂人であり、敗北に慣れていないことは明らかだった。


アサカワは再びの直接攻撃を予測し、それを迎え撃つために刃を上げる。


だが、一撃は来なかった。


突然――


鋭い感覚が右腕から爆発する。驚いて、彼女はそれを見る。


手首から肘にかけて、肉が血と痛みの噴出とともに裂ける。袖の破片が吹き飛ぶ。彼女は喘ぎ、後方によろめきながら、自分の損傷した手足に視線を固定する。皮膚は何箇所も穿孔され、傷は見えない針で刺されたかのように丸く清潔だ。ちぎれた筋肉の下で、脂肪が輝いている。


いくつかの箇所では、皮膚が緩んで垂れ下がり、あまりのダメージにこれ以上体にしがみつくことができずにいる。


彼女は歯を食いしばり、傷にもかかわらず堂々と立つコウタへと視線を上げる。


疲れたようなため息とともに、アサカワは息を吐く。


その息が、戦況を変える。ひとつの「真実」が明らかになった。


相手の機能の謎は、とうの昔に明らかになっていた。彼は単に血を操っているのではなかった。彼のセヴェラントは、より緻密なレベルで、体の内外を問わず血を操る能力を可能にしていた。


だが、アサカワが確認しなければならない、ひとつの明白な事実があった。


呪文や紋章を用いて魔術で召喚する一般的な「血の儀式」を扱う術者とは違い、この男はセヴェラントを使っていた。それはより効率的だった。より速かった。アルカナの消費に縛られない。


彼女は自分のより深い能力を使うのを避けたいと願っていた。従来の技量だけで彼を打ち負かすことで。だが今や、それはもはや「敗北の可能性」の問題ではなかった。


そうだ。彼女が恐れていたのは、負ける可能性ではなかった。


彼女が勝利することは、不可避だった。問題は、それにどれだけの時間がかかるかという、マイナスの要素だった。


彼女は、勝利する予定だった。


そして、勝利を勝ち取るということは、否定しようのない支配力を確立するということだった。


意図的な落ち着きをもって、彼女は刀を鞘へと滑り込ませる。かすかなカチリという音が、開けた場所に響き渡る。


「もう諦めるのか?」コウタが笑いながら、前へと進み出て再び剣を掲げる。


後ろ足を踏み込み、彼は突進し、武器を頭上に掲げる。


彼の雄叫びが静寂を打ち破り、刃は彼女を肩から腰まで斬り裂こうと狙う。


「悪いが、お前を生かしとくつもりはねえ!」


彼は刃を垂直に振り下ろす。


アサカワは体を横にずらす。


コウタの頭が、彼女の動きを追おうと急いで振り向く。困惑しながら。


彼女の刃はすでに抜かれ、手に握られている。まるで、すでに攻撃を終えたかのような構えで。


彼は、それを見ていなかった。


鞘から抜く動作と一撃の間に、動きも、息も、何もなかった。一瞬の瞬きが、彼からすべてを奪っていた。


素早く、彼女は下向きに斬りつける。


届く距離ではない。


彼女は突く。


再び、何もない。


コウタは慎重に、困惑しながら武器を上げる。彼女は空を斬っている。何もない場所を。自分の力を見せびらかそうとしているのか?


これは脅しの手口か――


そのとき、彼はそれを感じる。


「円月の鋼」


男はシャツが裂けるのを感じる、鋭い痛みの感覚。だが、この瞬間、痛みは彼の心の中で優先事項ではなかった。


彼女の声の響きが、彼の骨の髄まで凍りつかせた。


その緊張は、恐怖だけから来るものではなかった。それは呪文や潜在的な拘束から生まれたものでもなかった。


もっと深いところから来ていた。


原始的な窒息、魂の拘束。手足が言うことを聞かない。神経がのたうつ。彼自身のあらゆる部分が、内側に折りたたまれていく。


彼はそれを今、感じることができる。彼女の「虚無エントロピー」を。


停止。


相手が「強力」であればあるほど――それは、どれだけの戦いに勝ってきたかで測られる――そのホローポイントがより顕著になる、というのは常識だった。


強者は自らの弱点を露わにしなければならない、それがこの世界の法則だった。


だが。


「虚無エントロピー」と呼ばれる現象が存在した。弱点が、何千にも増殖して顕現する。もし相手を圧倒するだけの強い意志を持たなければ、逆に自分自身が相手の虚無エントロピーに圧倒されることになる。


それは、力を測るための「代替手段」のようなものだった。もっとも、世界そのものによって利用されているにもかかわらず、それを「代替」と見なすのは愚かだと考える者もいた。言うなれば、自然な代替手段だ。


これをさらに説明する良い例えとして、狼が挙げられる。強い狼は、その顔にある傷跡によって見分けられる。彼は傷つき、老獪で、弱点だらけだ。それでも彼は、それ自体において強い。


この世界では、どんな能力も他の能力を圧倒し得るが、それでもなお、いかなる状況でも常に貫かれる客観的な「真実」というものが存在した。父親は常に幼い子供を圧倒できる。剣は常に肌を貫く。


ほとんど客観的な「力の真実」だ。


コウタ自身の知覚が、彼を裏切った。


彼の目には、パターンの知覚が植物の形を取っていた。彼の敵は木々や茎として現れた。樹皮の裂け目、腐った花弁が、彼にとってのホローポイントとして見えていた。それが、彼の現実だった。


だが今、その森は黒く染まっていた。


すべての葉が枯れていく。すべての根が彼を強く締め付ける。それは彼の肺の中から生え、呼吸を縛りつける。


彼は動けない。


彼は話せない。


彼は、ある者からすれば、彫像とほとんど変わらない状態にまで達していた。


少女は位置を変えていなかった。ただ見つめていた。表情のない、空虚な目で。石の沈黙。


もはや、彼が向き合っているのは女性ではなかった。もはや人間でもなかった。


彼の前に立つのは、人の手が届かない何かによって形作られた生き物だった。静寂と鋼から作られた異形の存在。


「セ……セヴェラント……?」彼の声が、まるで水中から発せられたかのように割れる。


この世界のもうひとつの誤りが、その姿を現す。彼が長年理解してきた「論理」という言葉が、まさに彼の目の前で殺されていた。この世界を結びつけているとされる法則が、破壊されていた。


理屈が通らない。


彼女はタウマイトだった。魔術の道を選んだ者。第二段階へと昇華した者、後戻りのできない地点に到達した者。既知のあらゆる法則によれば、彼女はセヴェラントを所持できるはずがない。


それでも、彼の体は知っていた。


彼女は、持っていた。


では、なぜ――


「あなたの機能……刃に触れることで、相手の血を操れるようになる、それでしょうか?」


男は女性の前に膝をつき、その目を見つめる。彼女の声は、彼の心に食い込んでくるように聞こえた。ひと言ひと言が重く、正確だった。冷たい。機械のように。


彼はまだ動けなかった。


目が左右に動き、パニックで瞳孔が開く。剣すら怯えているかのように、手の中で震え、ついに握りから滑り落ちて地面に落ちる。


虚無エントロピーはもう彼を縛っていなかったが、恐怖がその代わりを務めていた。目の前に立つものへの、生々しい、麻痺させるような恐怖。


彼女の長い髪が風に揺れる。コートが影のように、風に流れて背後になびいている。紫色の瞳が彼を貫き、頭蓋骨に穴を穿つように突き刺さる。


20秒の苦悶の後、彼女はついに刀を鞘に収める。そのカチリという音が、弔いの鐘のように反響する。戦いが今、終わったことを示す合図。もはや戦う理由はない。


彼に背を向け、少女は歩き去り始める。


「なるほど」


彼女が言ったのは、それだけだった。


これが、戦いの終わり方だった。誰も死んではいないが、それでも「殺す」という行為は存在した。ある種の「死」。確かに物理的なものではなかったが、精神的には。そうだ、確かに――


小方コウタの自我が。


彼女がいつでも好きなときに戦いを終わらせられたのだと悟った瞬間、それが彼を打ち砕いた。彼女の刃は一度も外していなかった。ただ、斬らないことを選んでいただけだった。もし彼がさらに傲慢さを見せていれば、間違いなく斬り倒されていただろう。


だが、それさえも……


彼女の足音が、歩き去るにつれて小さくなっていく。


彼女は彼を殺すべきだった。この屈辱を終わらせるべきだった。だが代わりに、彼女はそれを彼に生かしたまま抱えさせた。


今、彼は理解した。


これが、諸王国から恐れられる傭兵集団、セイブル・ヴェイルの力だ。


いや、傭兵集団ではない、殺し屋の組織だ。


彼女は、そのメンバーの一人にすぎなかった。他のメンバーが持つ純粋な強さすら、この男には想像もつかなかった。


もし最初から真実を知っていたら、どれだけの報酬であっても、この仕事を受けることは彼にとって悪夢になっていただろう。


これは戦いではなかった。教訓だった。


地面を見つめながら、土が彼に向かって微笑み返しているかのように感じ、コウタはもうこれ以上見ていられなかった。おそらく、彼にはまだわずかな自我のかけらが残っていたのだろう。


指が土を握りしめる。


ついに、彼は顔を上げる勇気を振り絞る。視界の中で、少女は木立の中へと歩いていく。鞘を片手にゆるく持ちながら。


「ま――待て!」彼が声を張り上げる、しゃがれた声で。「教えてくれ! お前は何をした?! 俺は、どうして負けたんだ?!」


彼女が立ち止まる。


世界そのものが、彼女とともに凍りついたように見える。


風すら、止まる。


「たとえ私の能力を説明したとしても……」彼女が頭を振り向けながら言う。


その瞳、深い紫は、かすかに光っている。周囲に光があるにもかかわらず、影が彼女の顔を覆い、その突き刺すような瞳以外のすべてを隠している。


「あなたはいずれにせよ、負けていたでしょう」


その瞬間、小方コウタという人間を定義していた性格的な特性が、粉々に打ち砕かれる。


それだけだった。


力の問題でも、戦略の問題でも、技術の問題でもなかった。


彼らが出会った瞬間から、彼が負ける運命は決まっていた。彼女はただ、それを後にするのではなく、今終わらせることを選んだだけだった。


最初から、彼は勝ち目のない戦いをしていた。


そして今、小方コウタは絶望へと沈んでいく。


完全なる敗北。肉体的にも、精神的にも、魂においても。


―――――――――――――――――――――――


太陽が谷の天井から明るく差し込み、その輝きは眩いほどだ。この一帯は、今や開けた草原のように感じられ、木はほとんど見当たらない。俺たちは15分ほど歩き続けている。生存をかけた必死の全力疾走というより、気楽な散歩のような道のりだ。


穏やかだ。穏やかすぎるくらいに。もし俺たちがまだ地下にいることを知らなかったら、地上に戻ってきたと思うくらいだ。


周囲では、草が日光の中で穏やかに揺れ、開けた空間を静かな交響曲のように吹き抜ける柔らかな風に押されている。奇妙なウサギに似た動物たちが、時折こちらを覗き見ては、慌てて逃げていく。俺たちが何者であれ、明らかに怯えている。


キュロスが少しばかりそれらを熱心に見つめているのに気づく。ただの好奇心じゃない、空腹の視線だ。彼の見つめ方には、何か落ち着かないものがある。まるで、遅めの昼食のために獲物を品定めしているかのように。


視線と言えば、キュロスに出会ってからずっと気になっていた質問をすることにする。失礼かもしれないし、ただ単に変な質問かもしれないが、退屈が脳のペンキを剥がしていくように蝕んでくる。


「キュロス」


「はい?」


「お前……」一瞬、これが聞く価値のある質問なのか考えて言葉を切る。だが、結局聞いてみる。「目、あるのか? どうやって見てるんだ?」


ゴブリンが気分を害するかもしれないと予想し、少し身構え、鋭い反論を待つ。だが、驚いたことに、何もない。


ゴブリンはただ、ペースを変えずに歩き続ける。


「はい。あなたには混乱するように聞こえるかもしれませんが、実際、私には目があります。顔の膜がそれらを覆っています。あなたが理解している一般的な『目』とは異なる形をしています」


「じゃあ……白い球体みたいなもの?」自分の目を指しながら強調する。


「いいえ。それらは神経と血管のネットワークで、極めて小さな網膜が膜自体に組み込まれています」


「それ、わけわからんな」


「基本的に、あなたが見ている膜――目がないように見える部分――そこが、私の目の在り処です」


「ああ、じゃあ、あの空白の部分全部がお前の目なんだな」


「その通りです」


理解しているかのように頷くが、実際には理解できているかどうか自信がない。


「じゃあ、誰かがそこに触れたら、びくっとするのか?」


「いいえ。敏感な部分は膜によって保護されています。触れても反射は起こりません」


「じゃあ眠るときは? どうやって閉じるんだ?」


大量の質問をしてることはわかってるが、選択肢が「一瞬でこちらの首を刎ねられるかもしれない不機嫌な少女と一緒に、あと15分無言で歩く」か「ゴブリンと話す」かなら、まともな人間なら誰でも後者を選ぶだろう。


「閉じる必要はありません。ただ眠るだけです」


つまり、魚みたいなものか。魚には瞼がなくて、目を開けたまま眠ると、どこかで読んだことがある。脳の一部を活性化させたままにして、食べられないようにするために。今、理解できた。


この時点で、俺たちは森に入っている。この森の実際の構造は、それほど雑然としておらず、むしろ林のような感じだ。


「面白いな、それを――」


言葉を止める。哺乳類、と言おうとしていたが、ゴブリンは動物というより植物に近いんだった。まあ、それなら筋が通るか。他の点でも説明がつかないと思っていた奇妙な行動の多くが、それで理解できる。


とはいえ、俺はこの世界についてほとんど何も知らない。この先、他にどんな狂った事実が待ち構えているか、知る由もない。


考え事をしている間、視線がナヴィに落ち着く。彼女は前方を歩き、普通の人間らしく体を左右に揺らしている。


それが、俺を不安にさせる。


彼女は、まるで何事もなかったかのように歩いている。ほんの1時間前、彼女の動脈には木の杭が突き刺さっていたのに、今はジョギングから帰ってきたかのように動いている。


先ほど、それがどうして可能なのか彼女に聞いてみた。返ってきたのは「人は回復するものでしょ。それって当たり前じゃない?」というだけだった。


ああ、でも、そんなに速くはないだろ。


まあ、ここはファンタジー世界だ。もしかしたら、彼女は何かの治癒魔法か、瞬時に体を治す奇跡の呪文を使ったのかもしれない。魔法に違いない。他に、そんなことを説明できるものなんてあるか?


「もう100回目だけど、何ジロジロ見てんの?」ナヴィが鋭く言い、こちらを睨みつける。


「はは、悪い。癖なんだ」


彼女は鼻を鳴らし、再び前を向く。


まあ、また意地悪モードに戻ったか。さっきの弱々しい、疑問を抱いているナヴィの方が個人的には好きだったが、まあ、彼女はもうそういうふうに見られたくないんだろう。それは責められない。


もう二度と持ち出さない。たとえ、俺のキャラらしくそのことに触れるのがふさわしいとしても。


正直、彼女の性格は、失礼で自己中心的なだけだと思っていた。だが、俺はあの、カーテンの裏側をちらりと覗くという、ありがちな瞬間を経験した。人間には層があって、誰もが一枚岩じゃないってことがわかる瞬間を。


よし。これは間違いなく、深読みしすぎだ。


「カイト?」


「ん?」


「あなたの個人的な話に立ち入ってしまい申し訳ないのですが、先ほど……あなたが静かだったことに気づきました。あの洞窟で。ハイアーガルド様との会話の間。何か問題があったのですか?」


「気にかけてくれてありがとう、キュロス。でも俺は大丈夫だ」


よし。彼に優しく引き下がってもらえるような何かを言わないと。彼は悪気があるわけじゃないが、自分の個人的な問題に人が首を突っ込んでくるのは好きじゃない。それは身勝手なことかもしれない。まあ、それでもいい。


「聞いてくれ。俺、頭に問題があるんだ。時々、冷や汗をかいたり、変な行動をとったりする。でも、ほとんどの場合は大丈夫だ。心配してくれるのは嬉しいよ、本当に。でも、お前が心配する必要はないことなんだ」


視線を前方に固定したままにする。目を合わせない。


「もしまた起きたら、『カイトがまたやってるな。すぐに戻るだろう』くらいに思っといてくれ」


かすかな笑みが、自然と顔に浮かぶ。


キュロスが頷く。ゆっくりと。俺の言葉を処理している。おそらく、それを気に入っていないだろうことも伝わってくる。彼が今、目の前の人物を助けるべきかどうか――彼自身にとって自然なやり方で助けるべきか、それとも本人が明言した通りのやり方で助けるべきか、葛藤しているんだろう。


彼は世話焼きなタイプだ。少し純朴ではあるが、優しい。それを利用するのは間違ったことか? たぶん。今、俺の道徳の羅針盤は、正確には北を指していない。


「お人好し」という言葉が存在するのも、そういうわけだろう。それは、普通の人間として見られる者たちが、過度に優しさに頼る誰かを指すために使う言葉だ。平均的な人間は、優しさに対して一定の許容量を持っていると感じる。特に、それが絶え間なく、押し付けがましいものであるときには。


誰かが繰り返し他人の問題に干渉するとき、それは疲れさせるものになったり、苛立たしくすらなったりする。おそらく、干渉している側は、それを迷惑だとは認識しておらず、本気で助けになっていると信じているんだろう。だが、受け取る側にとっては、そう見ることはできない。


これが結果として、どちらの側も本当には相手を理解できない、混乱した迷路を生み出す。


繰り返すが、優しさが悪いものだという意味では、まったくない。むしろ、その正反対だ。俺が言いたいのは、他人の問題に立ち入り始めた瞬間から、それがグレーゾーンになり始めるということだ。さらに言えば、もし誰かの問題に立ち入らずにいたなら、それもまた一種の優しさと言えるんじゃないか? 相手が本当は好まないだろうと知っているものを、意図的に避けているという意味で。


いつか、彼に本当の真実を話す日が来るかもしれない。


「わかりました」ついに彼が言う。


俺の勝ちだ、彼は後者の選択肢を選んだ。俺の言うことを聞くことにしたんだ。


歩きながら、周囲の野生生物を眺める。鳥だ。こんな地下で。それに驚く。


まあ、俺たちは谷の中にいる。おそらく、頭上にそびえる崖や岩棚に巣を作っているんだろう。


この場所を説明する最良の方法は、巨大な階段状のボウルだと思う。層状のプラットフォームを持つ谷で、それぞれが前より低い位置にある。いくつかは、ランプのように螺旋を描いて下る洞窟で繋がっている。他の場所では、ただ草と岩を持つランダムな浮遊プラットフォームがある。


この世界の地形は、ほとんど狂気すれすれだ。


「キュロス、あとどれくらいだ?」


「うーん。この木々に見覚えがあります。あと13分ほどでしょう」


「はあ。急ごう。脚が死にそうだ」


ナヴィは何も言わない。


視界の端で、何かが動く。素早く、小さい。頭を振り向ける。


ウサギだ。


これまで見てきた生き物と比べると、普通に見える。真っ白で、丸々していて、小さい。今まで見てきたどのウサギよりも、かなり小柄だ。正直、なかなか可愛い。


その注意を引こうと、小さな音を立てる。


それはびくりとして、反対方向へと逃げ出す。


責められない。もし自分の20倍もの大きさの何かが変な音を立てて見つめ始めたら、俺だって逃げる。


それでも、それが走り去るのを見て、少しうめいてしまう。撫でられなかったことへの落胆。


グシャッ。


血が草の上に飛び散り、日光の中で赤く光る。


目が見開かれる。体が固まる。


今のは、本当に起きたのか?


あれはウサギだった。


そこに、ウサギがいたはずだ、だろ?


現実だ。粉々になった体が、そこに濡れた染みとなって横たわっている。巨大な手が、今しがた着地した一帯の上に浮かんでいる、血が手を染めている。黒い爪が日光にきらめき、まるで笑っているかのようだ。


重い呼吸が空気を満たす。悪臭が波のように鼻を打つ。


まるで下水道で腐ったネズミが、もう一度死んだかのような臭いだ。


視線が、ゆっくりと上へと動く。


モンスターだ。


以前と同じやつ。


病的なベージュ色の肌、ピンクがかった縞模様、ケーブルのように体を走る血管が見える。骨が肉から突き出ていて、ギザギザした鋼のようだ。悪夢によって歪められた無毛の犬のように見える、あまりにも有機的すぎる生き物だ。犬のような頭蓋骨が、背中に垂れる乱れた毛の塊とともに垂れ下がっている。


その目は巨大だ。飛び出している。寄っている。


唾液が大きく開いた口から滴っている。呼吸がどんどん大きくなっていく。重くなっていく。


でかい。バスほどの大きさだ。


催眠術にかけられたようになる。それが人工的な手段によるものなのか、それとも純粋な恐怖によるものなのか、判断がつかない。


その顎が後ろに引かれているのに気づくのが遅すぎる。今にも飛びかかろうとしている。


その手足が伸び、類人猿のような腕が跳躍のために構える――


ドガン


何かがそれに命中する。


それは横によろめき、頭がほとんど左に折れそうになる。


甲高い、人間じみた悲鳴を上げる。俺の神経を火にかけるような。それは女性が声の限りに叫んでいるように聞こえる、何かがさらに俺を驚かせる。悲鳴そのもののせいじゃない。


この、まったく同じ音を、以前に聞いたことがあるからだ。


その体が軌道を逸らされる。


体がまた動けるようになる。


振り返る。


ナヴィはすでに走っている。


そうだ。俺も動かなきゃ。


脚を踏み込み、前方へと突進する、土が背後に跳ね飛ぶ。左腕が前方へと、まるで泳いでいるかのように振れる。


アドレナリンが体中に溢れる。冷たく速い感覚が体に爆発し、俺は前より強く走る。空気がぼやけて過ぎ去っていく。


今、恐怖で漏らしていないのは、あのロボットが持っていたような奇妙な武器をこいつが持っていないと気づいたからだ。以前の「天使」とは違い、こいつはただの速度と力だ。


だが、そのとき、その平静を貫くひとつの考えが浮かぶ。


こいつ、ずっと俺たちを追ってきていたのか?


そうに違いない。俺たちがただの偶然でこいつに再び遭遇するはずがない。確率が低すぎる。


俺たちは洞窟を通り抜けた。そのすべてが、狭い通路で、あんなに大きな何かが通れるはずのない小さな空間だった。あの洞窟が、それぞれの層を隔てる唯一の入り口だったはずだ。じゃあ、どうやってこいつは俺たちについてきたんだ?


泥の斑点で足を滑らせ、転びそうになる。ぎりぎりで体勢を立て直す。


自分がどれだけ遠くまで来たか確かめようと、生物をちらりと見ようとして、頭を後ろに振り向ける。走っている速度のせいで、首がほとんど痛むほどだ。


待て、何もない。


いなかったのか――


影が地面を飲み込む。


それが大きくなっていく。光が暗くなっていく。世界がゆっくりと、暗くなっていく。


見えない。まだ走っている。


「上!」ナヴィが叫ぶ。


頭が跳ね上がる。


目が見開かれる。


それが、頭上を飛んでいる。


本能的に反応し、前方へと身を投げ出し、その生物に押し潰されるのをぎりぎりで回避する。前に転がり、低く身をかがめ、今しがた跳んできた方向に向き直る。


土埃が一帯から噴き上がり、その生物を包み込む。


いや、「押し潰す」というのは正確じゃなかった。


それは俺を串刺しにしようとしていた、跳躍しながら爪を使って貫こうとしていた。どうしてわかるかって?


今、その腕は地面に埋まり、抜こうともがいている。荒々しい、獣じみたうめきがその口から漏れ、一秒ごとにより激しくなっていく。唾液が地面に伝う、ほとんど血と同じ粘度で。


右を向き、キュロスに目をやる。


「村まで、あとどれくらいだ?」


「あとほぼ5分です」


舌打ちしながら、注意を再び生物に戻す。その腕はまだ食い込んだままだ。俺たちにはチャンスがある、反撃するための隙が。とはいえ……


命だけは持って逃げられるかもしれない。


だが……


「反撃しないと」ついに言う、声は鋭く集中している。


「なんで、そんな必要あるの?」ナヴィが尋ねる。


「村に近すぎる。もしそこに助けを求めて走ったら、オークが俺たちの接近に気づいた瞬間、捕虜を殺すかもしれない。一番いい選択は、距離を保ってここで片付けることだ」


拳を握りしめる。頭の中の緊張が、拳に表れている。モンスターを睨みつけながら、最初の一手を考える。


今、露出しているその腕に何かすべきなのは明らかだが、この生物がわざと演技しているんじゃないかという考えが頭を蝕む。いや、たぶん考えすぎだ。


「ナヴィ! あいつの腕を切り落とせ! 風の呪文を使え!」


それが最良の選択肢だ。角度は完璧で、四肢のひとつを切り落とすのに理想的だ。頭を狙うのが理想的だが、まだあまりにも速く動いている。それに、遠距離攻撃を使う方が、近づくよりもはるかにいい。


ナヴィのアルカナの残量がどれくらいなのかわからないが、こいつを殺すチャンスを失うリスクは冒したくない。


少女が鼻を鳴らす、まるで『あんた誰?』とでも言いたげに。


「エアロニス23、断」彼女は人差し指を鳴らし、生物の腕に向ける。


鋭い風の弧が、もがく獣に向かって空気を切り裂いていく。だが、俺がまったく予想していなかったことが起こる。


驚いたことに、それが体をひねり、背中を迫り来る一撃の方へと向け、ダメージを別の場所へと逸らす。


「?!」


「?!」


あんなふうに体を曲げられるのか?


それはついに腕を引き抜き、唸り声とともにナヴィの方へと回転する。血が背中を伝っているが、その傷は動きを鈍らせていない。


それが突進する。四つん這いになり、彼女に向かって突撃する、左の爪が後方に引かれている。その速度は、その大きさに反して、あらゆる理屈を無視している。


ナヴィはその下を転がり、反対側でしゃがみながら立ち上がる。彼女は立ち上がる、踵を弾ませながら、アドレナリンで動きが鋭くなっている。


一瞬、生物がよろめき、その理由に俺は気づく。転がりながら、彼女はその脚を切り裂いていた。動きを封じるほどではないが、妨げるには十分な。


だが、それの間合いが速度の低下を補ってしまう。


それが咆哮し、両腕を上げて叩きつけようとする。


ナヴィが跳んで距離を作る。それから、彼女はその胴体に向かって突進する、過剰な動作で守りが下がっている隙をついて。サーベルを前方に構えて。だが彼女は、それを見誤っていた。


それが脚を振り上げ、彼女の肩を捉える。彼女はその一撃の一部をサーベルで防ぐが、その力が彼女を後方へと吹き飛ばす。


「くっ!?」


素早く体勢を立て直し、彼女はサーベルを地面に突き刺し、滑りながら止まる。長い溝が、乱れた土の上に彼女の軌跡を刻む。


くそ、何かしなきゃ。ただ座って見てるだけじゃなくて。


戦闘が再開する、俺の目で追いつけないほどの速さで攻撃が交わされる。奇妙なことに、彼女はもう呪文を唱えていない。数秒おきに何か放つと思っていたが、そうしていない。


彼女はその左腕に一撃を与え、鋭い悲鳴を引き出す。


その動きは重く、ほとんど鈍いように見えるが、それぞれの一撃の速度と力は変わらない。まるで手足が自らの意志で動いているかのようだ。彼女は今のところ持ちこたえている。それより速く動き、反撃に頼っているが、スタミナがやがて彼女の敗因になるだろう。


何か使えるものを探していると、あるものが目に留まる。


近くの高くそびえる木へと視線が漂う。アイデアが浮かぶ、危険だが有望だ。


「キュロス、ついてこい」ゴブリンに合図し、一度頷く。


俺たちは木の向こう側へと駆ける。ここからなら、もし倒れれば、直接その生物に着地するはずだ。その高さは、太さよりも重要だ、驚くほど細いから。


「これ、切れるか?」樹皮に手のひらを当てながら尋ねる。その粗さが肌にこすれる。


キュロスが頷き、幹に手を押し当ててから引き、二本の鉤爪の指でそれをのこぎりのように切り始める。彼はダガーに相当するものを扱っているにもかかわらず、驚くほど効率的に作業する。まあ、心を決めさえすれば、何でもできるものなんだろう。


振り返る。ナヴィはまだ交戦中、回避がどんどん遅くなっている。彼女にとって、あと最大で30秒だ。


キュロスは素早く作業し、木くずが地面にこぼれ落ちる。その動きの速さから、かすかに熱が放たれている。彼の方法はほとんど外科的だ、片手の人差し指と中指を幹に押し当て、右手のひらでさらに力を加えている。


その音は戦闘よりも大きいが、木の陰にいる俺たちに、あの獣は気づかない。


さらに15秒ほどで、幹はほぼ切り抜けられ、薄い木片だけが残っている。両手をそこに当てる。


「よし、押せ――!」


キュロスが加わる。足を地面に食い込ませ、全力で押す。


木がその負荷にきしむ。歯を食いしばる、棘が手に食い込む、一本一本が前よりも鋭い。脚が土に押し込まれ、靴が砂利で満たされる。


全体重を木に預け、必死に倒れてくれと願う。


ついに、10秒ほど押し続けた後……


幹が鋭い音とともに崩れ、勢いが引き継がれる。


ナヴィはすでにその一帯を離れていた、先に俺たちに気づいていたから。


木が傾き、風が耳元を駆け抜け、葉が散る。


それが生物に叩きつけられる、耳をつんざく衝突音が土埃の雲となって噴き上がる。


人間じみた悲鳴が空気を切り裂く。前にも聞いたことがあるが、それでも落ち着かない気持ちにさせる。あんな音は、こんな場所にあるべきじゃない。あんな生物のものであっていいはずがない。


それを振り払い、ナヴィが近づいてくるのを見る、視線が瓦礫に固定されている。彼女は緊張を解かない。その体の動きは極めて張り詰めていて、まるで何かを待っているかのようだ。


「本当に効いたの? あいつ、頑丈すぎるでしょ」少女が、切れ切れの呼吸の中で言う。声はまだ戦闘の余韻で震えている。


消えていく煙の方に目をやる、最後の煙が樹冠へと巻き上がっていくのを見つめながら。


「陳腐なことは言いたくないけど、俺たちは大丈夫だ。あの木は、あいつを押し潰すのに十分な大きさだった」腰に手を当て、その場に自分を固定しようとするかのように。


「まあ、それでも移動した方がいい。もし万が一まだ生きてたら、俺たちはもういなくなってるはずだから」


「……」


彼女はついてくる、俺たちがその一帯を離れ始めると、足音だけが森の静けさを破る。


奇妙なほど静かだ、平和な静けさじゃなく、何かが間違っているという虚ろな静寂だ。


不安が、俺の思考の端にまとわりつくが、それは体を凍りつかせるような息苦しい恐怖ではない。


むしろ、遠くの地震の前に感じる、かすかな振動のようなものだ。おそらく、みんなまだあの遭遇でショックを受けているから静かなんだと自分に言い聞かせる。まあ、ナヴィを除いて。彼女はいつも通り動いている、軽く、素早く、まるで何も起きなかったかのように。


俺たちのペースは、歩きと小走りの中間くらいだ、緊急性と用心深さの両方から生まれた奇妙なリズムだ。あの生物が死んだという確証はないが、少なくとも傷ついている、おそらくひどく、ということには同意できる。


それでも、俺は震えている。


恐怖の急上昇に伴う類の震えじゃない。


体が、完全には制御できない形で震えている。周囲の森は、あるべき以上に暗く感じる、緑が光の届かない場所でほとんど黒に近いほど深まっている。幹が古代の柱のように上へと伸びる、静かで動かない。


北アメリカの、ある種の森を思い出させる、動物をほとんど見かけない、静寂が空っぽではなく、見張っているように感じる場所。ここでの本当の生命は、遥か頭上の鳥たちだけのようだ、それでさえ、くぐもった音に聞こえる。


脚が下で震える。


なんでまだ震えてるんだ? なんで震えてるんだ?


仲間たちに目をやる。彼らの目は地面に固定されている。


いや。俺じゃない。


何かが地下で動いている。土を掘り進み、迫っている。


その気づきが、胸の中で氷のように当たる。


「ナヴィ、あそこから出――」


一瞬の残像。


それが、目に映るすべてだ。何かが大地の下から噴き出し、たった一度のありえない瞬間に、俺が知っていたナヴィ・ハイアーガルドという少女は消えていた。


まず、腕が地面に湿った音を立てて落ちる、前腕から綺麗に千切れて。骨が薄明かりの中で青白く光り、筋肉の切れ端が緩く垂れ下がっている。


次に、彼女の胴体の上半分が来る、斜めに、あまりにも綺麗に切断されていて、猥褻なほどだ。血が、ねじれたリボンのようにその後ろを引いていく。頭はまだ繋がっているが、角度のせいで、その顔は俺から隠されている。もう片方の腕が、残された肩からだらりと垂れ、指がまだ何かを掴もうとするかのように、わずかに丸まっている。脚は他のすべてから離れた場所に着地し、すでに自らの下に折り曲がっている。


彼女の胴体が、まるで投げられた物のように空中で回転する、生命もなく、抵抗もなく、ただの質量。ただの重さだ。まるで、誰かが肉の袋を上に投げて、重力に任せているのを見ているかのようだ。


ナヴィ・ハイアーガルドは、もはや人間じゃない。彼女は今、単に「ナヴィ・ハイアーガルド」と呼ばれる物体だ。


そして、それがすべて落ちてくる。その音は吐き気を催すほどだ、肉と骨が土の中に崩れ落ち、血が弱々しくしたたり落ちる。


一瞬、そこに立ち尽くす。


長くはない。ただ、長く感じるだけだ。


視線が、攻撃者へと這うように動く。視界が震え、体中のあらゆる筋肉が、恐怖よりもはるかに酷い何かで振動している。


そうだ。これが、それだ。


パニックじゃない、恐れでもない。


恐怖だ。


腹の中で始まり、魂に巻きついてくる類の。歯がガチガチと鳴っている、顎が食いしばりすぎて痛む。叫びたい。漏らしたい。


キュロス――


彼は大丈夫だろう。俺より速い。もし俺が逃げれば、彼も逃げるはずだ。


生物を見上げる。その目が、俺の目に固定される、ゆっくりと、意図的に。どこかから蒸気が漏れ、あまりにも酷い臭いを運んでくる、思わずえずきそうになる。全身が血にまみれている、それがナヴィのものなのか、自分自身の傷からのものなのか、判断がつかない。


その腕が体の前にぶら下がっている、それぞれがぴくぴくと痙攣しながら。


口が開くが、音は出てこない。試みるたびに、言葉が互いにつまずき、喉の中で死んでいく。


視界の端から、闇が忍び寄ってくる。


振り返る。


走る。


後ろ脚が俺を前方へと押し出し、体がみっともなく、よろめきながらの全力疾走で前へと突き進む。自覚すらないまま、すすり泣いている。


追跡はない。背後の空気は静止したままだ、まるでその生物が俺のことなど、まったく気にもしていないかのように。俺はライバルじゃない。ただの、後で捕まえられるもう一片の獲物にすぎない。


走りながら、肩越しに振り返る。


キュロスを追っている。


俺は――?


俺にできる――?


俺はやる――?


頭を前方へと勢いよく戻し、目をきつく閉じる。見たくない。ナヴィはもういない、彼女なしでは、俺たちにチャンスなんてない。留まることは、死ぬことだ。


今、俺がしていることは、自分勝手なんかじゃない。生存だ。誰だって、そうするはずだ。逃げるか死ぬか、それだけだ。


1時間が経った。いや、もっと長いかもしれない。判断がつかない。胸が焼けるように痛み、脚は今にも崩れそうだ。森は夜へと沈んでいる。


木の幹に体重を預け、息を切らしながらあえぐ。


もう、目の前すらほとんど見えない。世界は、ただ黒の濃淡が移り変わっているだけだ。


夜の音が、生き生きとしてきている。ざわめき、カチカチという音、姿の見えない何かからの低い鳴き声。そのすべてが、まるで嘲笑のように感じられる、円を描いて走る首なし鶏を笑うかのように。


そうだ。俺は、奴らにはそう見えているに違いない。狂人。異星人。ここに属さない何か。


木に拳を叩きつける。


「くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそ!」


すべてが台無しになった。


ナヴィは死んだ。キュロスもたぶん死んだ。次は俺だ。俺は迷子で、行き場がない。引き返すことも不可能だ。何も見えない。


前にもこんなことがあったよな? そして前は乗り越えた。だから今回も、そうならない理由はないだろ?


もしかしたら、運が良ければ。もしかしたら、誰か見知らぬ人が俺を見つけてくれるかもしれない、前みたいに。


ああ。可能性は低い。でも、ゼロじゃない。


両頬を叩き、目を無理やり大きく開ける。


ここで死ぬわけにはいかない。あいつらの後を追って地面に沈むわけにはいかない。あいつらのために、生きるんだ。


一歩、前へ進む。乾いた葉が足の下で砕ける。もう一歩。また音がする。


太い根をまたぎ越えながらうめく、バランスを保ちながらも十分な速さで前進できるよう、慎重に体を動かす。次の一歩は不揃いな地面に着地する、でこぼこと窪みが混ざり合っていて、一歩一歩を慎重に踏み込まなければならない。


俺は生きる。


俺は生きる。


俺は、生きる。


前に進んでいると、背後から音がする。重い、密度のある、最終的な音、まるで岩が固い土に落ちるような。


突然だ。鋭い。それが静寂を貫き、神経にまっすぐ突き刺さる。当然、不意を突かれて、びくりとする。


止まる。ゆっくりと、その方向へ振り返る。目を細め、薄闇を透かして見ようとする。


地面に何かがある。すぐには判別できない。身を乗り出し、よりはっきりと見ようとする。


しゃがみ込むと、再び胃の中に穴が開く。ショックと嫌悪の感覚が満ちる。それは、俺が決して気づきたくなかった気づきの感覚だ。以前にも感じたことのある感覚、それでも同じように痛む。この感覚には、決して慣れないだろう。歩き続ければよかった、走り続ければすらよかった。なぜ振り返ってしまったんだ。なぜこんなことが起きているんだ。なんでなんでなんでなんでナンデナンデナンデ


ああ。


あれは、キュロスの頭だ。


「ぎゃっ――!?」


白い痛みの閃光が右腕で爆発する。ショックで息が奪われる。手がなくなっている。感じない。神経が熱い金属を打ち込まれたかのように感じる、電流が全身を駆け巡る前に、あらゆる部分を焼き尽くしながら。


今、地面に倒れている。


俺の腕――


俺の腕がない見えない感じない。


「く――くっ。ああああああああああああああああああああ!」


それが泥の中に転がっている、綺麗に切断されて、血が熱い噴出とともに飛び散っている。骨がその惨状を通して光っている。皮膚が剥がれ、生々しく空気にさらされている。それに、痛みがあまりにも鋭く、頭蓋骨の中の悲鳴のようで、あらゆる思考を引っ掻いてくる。あまりにも痛くて、泣きそうになる、そして……


笑い声。


人間じみている。あまりにも人間じみている。その音は喜びとともにねじれ、歯が痛むような感じでしたたり落ちる。


何か湿ったものが顔に飛び散る。ゆっくりと頬を伝う。唾液だ。あの生物が俺を味見している、この瞬間を味わいながら。


自分の見開かれた目に映る反射の中で、それが今見える、あの目が、俺に固定されている。


まだ笑っている。


俺はまだ叫んでいる。


音が混ざり合い、森が俺たちの騒音を、身を乗り出す観客のように包み込む。これは狩りじゃない。演技だ。でなければ、なぜあいつがただそこに座って笑うんだ? なぜ、死体の破片を俺に投げつけるんだ?


それは、ハイエナのような「笑い」に似た音を出しているというわけじゃない。ただ偶然そんな音を出しているというわけでもない。


いや、あれは、笑っている。間違いなく。


残された腕を握りしめ、体をひねって森の奥深くへとよろめきながら進む。


つまずく。叫び声を上げる。自分の声すら、哀れに聞こえる。木々は答えない。大地は気にかけない。


「んぐぅ……ひ……ひぃ……」すすり泣く。


追ってくる音がない。それが、もっと悪い。それが背後にいるのか、前方で待ち構えているのか、わからない。


以前も追われたことがある。だが、これは違う。こいつは意図的だ。賢い。


残酷だ。


「モンスター」という言葉には、多くの意味がある。ひとつは、大きく、醜く、見苦しい生物。もうひとつは、不道徳などの点で、社会の通常の規範から逸脱した性質を持つ者。この生物は「生き物」なんかじゃない、それはあらゆる意味において「怪物」だ。わざと俺を弄んでいる。


その事実を知っているのに、それでもその通りに動いてしまう。何か手の込んだ計画があるからじゃない。結局、これが俺という存在だからだ。自分自身の生存を守るために逃げる、肉の袋。本能だけに頼る、無価値な存在。俺は、何の力もない人間にすぎない、唯一の取り柄が知性だけの。それが人間から剥ぎ取られたとき、俺たちはただの、何にも頼れない弱者になる。


戦えない。ただ走って、死なないことを神に祈るしかない。


呼吸が急上昇する、吸うたびにぎざぎざになる。


血が傷口から流れ続けている。左手が滑りやすく、どれだけ強く押さえても止まらない。


「かはぁ――かは――か――!」


汗が髪を額に張り付け、目に沁みる。それが顔を伝い、血と混ざり合い、あの金属的な悪臭を再び鼻に運んでくる。


世界がくぐもり、鈍くなっていく。


待て。光だ!


木々の中でのざわめきが、その希望をすぐさま消し去る。


いや。


さらに力を込める。足が地面を叩く。ここで死ぬわけにはいかない。


死んでたまるか!


追跡の音が膨れ上がり、ほとんど頭の中にあるかのようになる。視界が狭まるが、今、それが見える。闇からそびえる壁。蔓に絡まった門。それは、この地獄の風景の中で、要塞のように威圧的だ。安らぎの一帯。


キュロスの村。そうに違いない。


何かが背後の地面に叩きつけられる。その力が背骨を貫き、俺を前方へと打ち出す。転がり、投げ落とされたコインのように転がっていく。


顔が伸びた根に激突する。痛みが頭蓋骨へと爆発的に広がる。何か小さく硬いものが舌の上に落ちる。


血が口の中に溢れ、熱く、金属質で、濃厚だ。


くそ。ノイズだ。ノイズしか見えない。


死んでたまるか。死んでたまるか。その思いが、機械的に、必死に、繰り返しループする。死んでたまるか。


背中が壁に叩きつけられるまで、転がり続ける。脚が壊れた人形のように宙に突き刺さる。歯が口の中で散らばっている。左目が腫れて閉じかけている。


体の中のすべてが、止まってくれと懇願している。ただそこに横たわり、成すがままにさせてくれと。


いや。


ただそこに横たわり、自分の命がこの神なき怪物によって消し去られるがままにするなんて。


死んでたまるか。


無理やり腹ばいになる。無事な方の腕を土に食い込ませる。血が口から滴り、二つの小さな歯の破片の傍らに、鈍い音を立てて落ちる。


出血が今、さらに悪化している。めまいがする。


轟音が止んでいる。もしかしたら、追跡は終わったのかもしれない。それは重要じゃない。動かなければ。


見上げる。壁の上に影が立っている、松明の光に縁取られている。彼らが俺を見ている。ほとんど彫像のように立っている、無関心に。それでも、彼らに呼びかける以外の選択肢はない。


「……たしゅけて! たしゅけ!」言葉が喉に詰まり、血に絡まる。


彼らはしばらく見つめている。一人が背中に手を伸ばし、何かを引き抜く。目を細める、視界が揺れている。


彼がそれを引き絞る。


きらめき。


「?!!」


何かが首を貫く。鋭い。あまりにも鋭い。


血の奔流が喉と胸を満たす。後方に倒れ込み、むせる。


「ゴボッ」


その中で溺れている。呼吸のひとつひとつが逃げていく試みで、吸い込む以上に咳き込んで吐き出している。


くそ、くそ、すべてが痛い、すべてがぼやけていく。


指が喉を掴む、滑る表面の上を滑りながら。


矢が頸静脈を切り裂いた。


俺は死ぬ。もはや、それはほとんど不可避だ。


壁の上の影たちが向きを変え、視界の外へと歩き去っていく。


叫べない。誰も助けに来ない。


よろめきながら前へ進む、ゴボゴボと音を立てながら。血が胸を伝い、粘つく川となって流れ落ちる。握りしめる手が何度も滑る、滑る肌の上で自分の指すら滑る。汗と涙と血が、奇妙な混合液となって混ざり合い、体を伝っていく。


胸が今にも破裂しそうだ。空気を求めて戦うが、何も入ってこない。


歩き回りながら、さらにゴボゴボという音を漏らす、血がまだ首から胸へと流れ落ち、シャツを不快な茶色に染めている。


膝から崩れ落ちる。


「ゴボッ。ゴボッ。ゴボォォォォォォ――」


心が徐々に真っ白になり、目の前の木々が前よりも暗くなっていく。


地面に倒れる。


「ゴボッ」


溜まっていく血の温かさが、肌に染み込んでいく。視界が静止画像へと崩壊していく。最後の一噴きが、逃げ場を失ったタイヤの空気のように漏れ出る。


世界が、暗くなる。


╔════════════════════════════╗


||L I F E E X P U R G A T E D||

「BL00DLO_00SS」

╚════════════════════════════╝

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