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子宮恋愛

「おい、柏葉ぁ! お前なぁ、遅刻するなら遅刻する! 休むなら休むぅ! 会社に連絡するのが筋だろ? 社会人の常識だろうがぁ? おい!」

「・・・・・・・」

「お前、聞いてんのかよ? ふざけんなよ?・・・・・・・・・おい?柏葉? お前、どうしたの? 顔、悪いけど? お前、大丈夫?」

「・・・・・・・すみません。・・・・・・・ご迷惑おかけしちゃって・・・・・・・」

「まぁ、ほら、それはいいんだけどさ? 体調、悪いなら、帰った方がいいぞ? 仕事、代わりにやっておいてやるから、な?」

「あ、いえ。・・・・・・帰っても、やること、ありませんから・・・・・・それに、警察に、全部、お任せしてあるので・・・・・」

「警察? お前、なんか、したのか? 大丈夫なのか?」

「あ、僕じゃなくて、・・・・・・妻っていうか、彼女っていうか、・・・・・」

「お前・・・・・・結婚してないだろ?」

「あ、ああ。ええ、そうなんですけど。将来的に、結婚を考えている彼女がいまして、・・・・・・それが、・・・・・」

「それが、どうしたんだ?」

「いなくなっちゃったんです・・・・・・」

「いなくなったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」

「ちょちょちょちょ、ちょ、声が! 声が大きいです! 木崎さぁん!」

「あ、いや、すまん。わるい。・・・・・・・・いなくなったって、どういう事だよ?」

「いや、分からないんです。帰ったら、昨日、帰ったら、姿がなくて。それで、しばらくしても、帰ってこなくて。・・・・・・携帯に電話したんですけど、通じなくて・・・・・・・」

「友達とか、知り合いとか、共通の、なんか、そういうの、いないのかよ?」

「・・・・・・・・・・・・・ああ、はい。」

「はいじゃないよ?」

「いないです。」

「あれじゃないのか? 旅行に行ったりとか、それとも、ほら、会社の仕事で、急に、出張とか? ・・・・・その前に、お前、なに?一緒に、住んでたのか?」

「あ、はい。ちょっと前から。結婚を前提に考えていたので。それで、お試しで、同棲をはじめてみた、・・・・・矢先に。・・・・・・こんな事になるなんて。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・。」

「柏葉さぁ。・・・・・・・お前、それ、単純に、振られただけ?ってことはないのか?喧嘩して、出て行ったりとか?」

「そんなハズ、あるわけないじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

「いや、悪い。悪い。・・・・・いや、だって、ほら。同棲して、出ていくなんて話、よく、聞くし。」

「未江に限ってそんな事はありませぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

「未江? 未江ちゃんって言うのか?お前の彼女?」

「ええ、はい。それがなにか?」

「怒ることないだろ? 心配して聞いてやってるんだから」

「はあ? あのぉ、聞いて欲しいなんて頼んだ覚えはありませんけど。」

「・・・・・・・・ああ、悪ぃ。・・・・・・・冷静になれよ?な?」

「僕はずっと冷静ですよ?」

「で、なにか? 警察って? 警察に行ってきたのか?」

「ええ、はい。・・・・・警察に、行方不明の、捜索の、お願いに行ったんですけどぉ・・・・・・・・・・チッ」

「・・・・・・どうした?」

「警察も役に立たないっていうか、・・・・・・・・・・・・・・・・・・木崎さんと同じ事、言われましたよ? 旅行とか?仕事とか? 別れたんじゃないのとか? ふざけんなって話ですよ

分かります?木崎さん。僕が、どれだけ、未江のこと、心配しているか・・・・・分かります?」

「ああ、分かる。分かる。うん、分かる。」

「それなのに、すぐ帰ってくるかも知れないから、事件性はないとか、僕の方が、彼女の事を束縛していて、僕の方に、問題があるみたいな事、言うんですよ? おかしいと、思いません?」

「まあまあ。まあ。・・・・・初対面の人間だからな。いくら警察とは言え。初対面の人間の事を、分かるなんて事、まず、あり得ないからな。ま、あれだろう? 世間的な、一般論で、警察の人も、しゃべったんだろう? 警察だって、最近の事情考えれば、迂闊な事、言えないしな。」

「それは分かりますよ。僕だって、それは、理解できますよ? でもですよ? 僕達、もうすぐ、結婚をしようかって、考えている人間に向かって、言う話ですか?って話ですよ?」

「そうだな。・・・・・それは、お前の言う通りだよ。警察が悪いよ。」

「そうでしょ? 木崎さんも、そう、思うでしょ?

警察も、一応、話は聞いてくれて、しばらく帰って来なかったら、また来るように言われました。事件性の有る無しは、また、その時、考えるって。」

「ま、そうだろうなぁ・・・・」

「もしかしたら、誘拐とか、殺されちゃってたら、どう責任取るつもりなんですか? この一刻一秒、争う事態かも、知れないんですよ?」

「柏葉、落ち着けよ? すぐにそう、決まったわけじゃないだろ?

・・・・・・・警察って、なかなか、そういうの、やってくれないんだぞ?」

「・・・・・・・そういうのって、どういう事ですか?」

「ほら、振り込め詐欺っていうかさぁ、あの、ほら、フリマアプリ?オークションサイトとかの、詐欺? あれだよ。

・・・・・・知り合いが、詐欺にかかってさぁ。・・・・・・商品、買ったけど、送られて来なかったんだ。結果的に、送られて来なかったんだけど、警察に、相談に行ったら、まだ、届くかも知れないから、待ってろって言われて、話は聞いてくれたけど、事件として、取り扱ってくれなかったんだそうだ。呆れて、相談するの、やめちゃったって言ってたぞ。・・・・・一万円ぐらいの、スマホ。」

「うちの未江と、スマホを一緒にするんですか!」

「・・・・・・そういう話じゃねぇよ! だから、警察って、案外、動いてくれないって話だよ! 一万円だから、高い、勉強代だと思って、諦めたって、そういう話だよ。・・・・お前、すぐ、怒るなよ?」

「じゃなんですか?未江が勉強代だと、言いたいんですか?」

「そんな事、一言も、言ってねぇだろ? 分かった、分かった、もうお前、帰れよ? 仕事場にいても、役に立たないから、帰れよ?その方が、いいだろ?」

「役に立たないってどういう意味ですか?」

「だから、そういう意味だよ! 他にあるか? こっちが心配してやってんのに、キレ散らかしやがってぇ! 仕事になんねぇから帰れって、言ってんだよ! 俺が、部長に、話しておいてやるから。」

「いいですよ、自分で、話しますから・・・・・・・ありがとうございました。木崎さん。・・・・・失礼します。」

「・・・・・・気を付けて帰れよ!」




「あ、ああ、どうもお疲れ様です。」

「おお」

「木崎さん聞きました?」

「なにをだよ?」

「柏葉さん。・・・・ずっと、会社、来てないって。」

「まぁ。・・・・見てれば、来てないの、分かるからな。」

「ちょっと噂で聞きましたけど、彼女が、いなくなっちゃった、らしいじゃないですか?」

「・・・・お前さぁ、そういうの、どこで、聞いてくるの?」

「あ、いや、・・・・・・・・志穂美さんに・・・・・」

「あのバカ、なに、言ってんだよ?」

「本当にいなくなっちゃんですかね?」

「お前、なに言ってんだよ?」

「いやぁ、だって、おかしいじゃないですか? 連絡が取れないって。このご時世、連絡が取れないなんて、こと、あります? スマホ持ってない、うちの、爺さん婆さんだって、連絡が取れるんですよ? もし、地震とか起きて、連絡、取れなくなったら、困るじゃないですか?電話が、最低限の、ライフラインですよ?」

「まぁ、・・・・そうだ、けど。」

「僕、柏葉さんに、写真、見せてもらったんですよ。・・・・なんか、もうすぐ、結婚するかも知れないって。」

「ああ、俺も、聞いた。」

「これから結婚しようって相手が、突然、いなくなります?それこそ信じられないですよ?

志穂美さんが言ってたんですけど」

「・・・・・・」

「ほら、キャバクラとかホステスとか、そういう女に、騙されて、結婚、チラちかせられて、貢いでたんじゃないか?って。ほら、柏葉さん。根が真面目じゃないですか。木崎さんと違って。」

「うるせぇよ」

「だから、お金、貢ぐだけ貢がされて、ドロン、されちゃったんじゃないかって、話で。そうじゃなきゃ、連絡が取れないって、あり得ないですよ。」

「お前さぁ、・・・・・・志穂美もそうだけど。・・・・・一応、柏葉も、精神的に落ち込んでいるわけだからさぁ、変な、噂、やめてやれよ?」

「いやいやいや、・・・・・・ちょっとした話ですよ。ちょっとした。やめて下さい、僕の方こそ、変な噂が出ると、困りますから。

可哀そうなのは分かりますけど。・・・・・部長が言ってましたけど」

「今度は部長か?」

「ええ。部長が。・・・・・柏葉さん。相当、青い、顔、してたって。・・・・・なにか悪いモン食ったんじゃないかって心配したって。そうしたら、木崎さんに言われたとか、なんとか」

「俺ぇぇぇ? 俺の所為? やめろよぉぉぉ?そういうの?」

「いやぁ部長がそう言ってましたよ。彼女、いなくなっちゃったのも、柏葉さんの所為じゃないか、って言ったって。・・・・・本当ですか? 木崎さん。ほんと、人間性、疑っちゃいますよ?」

「お前なぁ・・・・やめろよ、そういうこと、言うの。

いや、だからな。俺は、柏葉に、なんか、仕事、手につかないようだから帰った方がいい、って、そう言ったんだ。なにがどう間違えたら、そういう、話になるの? 俺、怖いよ?」

「部長はそんな風には言ってませんでしたよ。木崎さんに相当言われて、彼女、いなくなっちゃった所で、酷い事、言われたから、立ち直れないって。・・・・・・木崎さん。訴えられたら、負けですよ?」

「玉守・・・・・お前なぁ!」

「部長も心配してましたよ、むしろ、木崎さんの方。柏葉さんの怒りかって、刺されなければいいけど?って。」

「俺なに?殺されちゃうの? いや、えぇぇぇぇぇ?」

「木崎さん。・・・・・香典、幾らがいいッスか?三百円くらいで?」

「ふざけんなお前ぇぇぇぇ!!!」

「昭和のノリの、ハラスメントおじさんがいる職場じゃぁ、仕方がない事件じゃないかって、うちの嫁さんも、言ってますよ。」

「・・・・・お前んちの嫁さんまで、俺が、殺される前提で、知ってんの?」

「でも、本当に、部長が言うには、真っ青だったって。真っ青、通りこして、真っ黒だったって。・・・・・・気の毒としか、言いようがないですよね。結婚、考えていた人が、いなくなっちゃったら。俺だったら、立ち直れないですもん。立ち直る為に、心ない事、言った、職場の先輩、刺すしか、方法ないですもん。」

「やめろよ、本当に、もう。」

「・・・・・ご愁傷様です。」






久世「あんたん所は、興信所か、なにか、いかがわしい事、やってんのかい?」

大貫「ママ! 言い方。・・・・・いくら暇だからって、こんな所まで、おしかけてこないでよ!」

久世「はぁ? ・・・・・お前、いつから私に、そんな、偉そうな口が、聞けるようになったんだい? 誰がここまで、大きくしてあげたと思ってんだい?」

大貫「ママ、それは、ママのおかげだけど。・・・・それとこれとは、話が違うでしょ? それにぃ・・・・・杏子さんに見つかると、まずいから・・・・・」

久世「なんだい?お前・・・・瀬能んとこの娘が怖いのかい? 随分、飼い慣らされちまったもんだねぇ・・・・情けない。」

大貫「ママ。ほら、最中、あげるから、帰ってよ」

久世「人を年寄り扱いするんじゃないよ! 口ん中が、渇くもん、出しやがってぇ、茶ぁくらい、出せないのかい?」

大貫「・・・・・出すから、待ってて。・・・・・・食べたら、帰ってよ? 知江、あんたも。」

矢板「・・・・はいはい。」

久世「それでなんだい?さっきの、ヒョロっとしたガキは?カミさん探しているとか、なんとか、言ってたけど?」

大貫「ママ、人の仕事に、首ぃ、突っ込まないで・・・・」

久世「聞こえちまったもんがしょうがないだろう・・・・好きで、聞こえたんじゃないんだ。」

大貫「・・・・・昔から、ママは地獄耳だし、人より、細かい所に、目が行くし。嫌なのよ。」

久世「お前、ひとを、なんだと思っているんだい!」

大貫「だから杏子さんに妖怪不死身ババアって言われるのよ・・・・」

矢板「・・・・・・・プ・・・・・・・・・・・・・いえ、なんでも。でも、ママ。・・・・寿子の仕事に、首、突っ込むのは良くないですよ?」

久世「誰も、首なんか突っ込んでやしなじゃないか。たまたま、待ってたら、聞こえたって、言ってるだけだろ?」

矢板「はいはい。・・・・・ダメよ。寿子。こうなったら、ママは、なにを言っても聞かないわ。」

久世「あんたも。・・・・人をなんだと、思っているんだい? 寿子、茶が、ぬるい。もっと、いい、お茶、ないのかい? 私んとこに、いた時は、もっと、いいもん、出していただろう?」

大貫「はいはい。ああ、うちには、これしか、ないのよ。」

久世「まったく。瀬能の娘も、たかが知れるねぇ。」

大貫「だから、杏子さんの悪口、やめてよ。・・・・言われるの、私、なんだからね?いい?」

久世「それで、あの、男の、カミさんが、どっか、行っちまったのかい?」

大貫「そうね。そうみたいね。・・・・・・ほら、うち。・・・・・・隔離シェルターみたいなこと、やってるでしょ?そこに、来ているんじゃないか、って。」

久世「なんだい、シェルターって?」

矢板「家族の事情で、一緒に暮らせない人を、一時的に、保護する私設のことよ。ほら、例えば、父親の暴力とかで、暴力に堪えられなくて、逃げ出す母親とか、」

久世「ああ、駆け込み寺かい?」

矢板「そうね。江戸時代の、縁切り寺みたいな、もんね。」

大貫「まあ、一概に、男だけが一方的に暴力を振るうばっかりじゃないけどね。女も、振るうケースもあるし。ま、色々よ。・・・・・やってる事は、規模は小さいけど、ママと、一緒よ。」

矢板「・・・・。じゃ、うちで、面倒みてやればいいじゃないか?」

大貫「ママんところは、本当に、現代の、縁切り寺でしょう? 女の人しか、面倒みないじゃない?」

矢板「ママ。・・・・ここは、山鳩先生と瀬能お嬢さんの息がかかった会社だし、寿子の手前、大目に、見ましょう・・・・・」

久世「・・・・フン」

大貫「探しに来たって言って、左様ですか?って、簡単に、教えることは、出来ないけどね。」

矢板「そうでしょう。そんな事したらシェルターの意味がないものね」

大貫「そ。そゆこと。」

久世「・・・・女に、逃げられるようなタマなんじゃないのかい?」

大貫「ママ・・・。すぐ、そういう事、言う。事情も知らないんだから、簡単に、言わないでよ。」

矢板「・・・・・私も聞いていたけど、結婚を前提に、お付き合いしている人が、いなくなった、って。・・・・・結婚詐欺か、なにかじゃないの?」

大貫「・・・・・・。知江。あんたも、大概よ。ママと一緒で。」

矢板「・・・・。」

久世「取れるもんが取れなくなったから、いなくなった。ま、そう考えるのが、自然、だろうねぇ・・・・・」

大貫「・・・・・・・お金ってこと?」

久世「だからお前達は浅いんだ。・・・・・・少しは、瀬能の娘を見習いな。事件性がない、って事を前提に考えれば、・・・・なにも、金だけが、女が、欲しいものじゃぁないんだよ。」

大貫「? じゃ、なによ? 他に、なにが、あるの?」

久世「ここさ、ここ。」パンパン!

大貫「ここ?」

久世「・・・・・・子種だ」

大貫「子種? いやだぁママ、本気で言ってる?」

久世「お前達はまだ、子供を生んだことがないねぇ・・・・だから、分からないんだ。”女”にはねぇ、そういう、どおりが通じない女が、昔から、いるんだよぉ。」

大貫「・・・・はぁ。」

久世「今でこそ、男も女も関係なく、おまんまが食えるようになった。道義的責任、選挙、給料、平等だ、平等だ、って言われるようになった。ま、女一人で、生きていくには、だいぶ、楽になったもんさね。」

大貫「ママの時代に比べたら、ね?」

久世「だがねぇ、男と女。オスとメス。・・・・根本的に、生物として、役割が違うんだ。幾ら社会保障が同等になったからって言って、生物の、それを、超える事は出来ない。

いいかい? 子供を生めるのは女だけだ。血を残せるのは、私等、女だけ、なんだ。・・・・・だから、私は、女の自分に、誇りを持っているし、女達の自由を守るように、・・・・・ま、それは、まあいい。」

大貫「はいはい。ママには感謝してますよ」

久世「問題はそこじゃない。女の中には、社会なんかどうだっていい、国なんかどうだっていいって思っている奴が、それなりにいるんだ。生物としての、”女”としか、生きていくことを良しとしない、女が、一定数、いる。・・・・・女を、抱える、団体を組織した私が言うんだ。間違いはない。いくら、私等ががんばって、権利や保証だって、のたまわった所で、そんなものどうでもいい、女としての喜び、子供を生み育てる喜びしか、享受できない女もいるんだよ。」

矢板「・・・・。」

大貫「・・・・・それはぁ、人それぞれ、考え方の違いだから、なんとも、言えないけど・・・・」

久世「私も、そう、理解しようと、務めたさ。」

矢板「役割の違いってやつよ。女系社会では、顕著に見られるわ。蟻でも蜂でも。女ばっかりだから、余計、それが、目立つ。」

久世「これが、男も混じった、ふつうの、ふつうの社会で見たら、そういう女も、社会に溶け込んで、紛れていく。」

大貫「それが別に、悪いって話じゃないでしょ?」

久世「別に悪いって話はしていない。役割の違いって話さね。・・・・・知江やお前みたいに、男勝りに、やっていく女もいれば、子供が育てられりゃぁそれだけでいいって女もいる。

子供を生み、育てるのが、至福の喜びって、女がね。

そういう女はねぇ・・・・・男なんて、歯牙にもかけないのさ。男は、子種。子種が取れれば、それでいいのさ。」

大貫「・・・・・・それじゃぁ、本当に、蟻とか、蜂とかと、変わらないじゃない?」

久世「そういう事さ。・・・・・どうしたって、女一人じゃぁ、子供が作れない。どうしても、子種がいる。良質な子種がねぇ。」

矢板「金さえ出せば、精子だけ、売ってくれる、そういう商売も、あるみたいだけどね。」

久世「うちの子にも、そういう、子がいるけど、私は好きじゃないねぇ。」

矢板「どうして? 簡単に精子が手に入るんだから、いいじゃない。」

久世「いくら子供が欲しいって言っても、手順を省いちゃぁ、いけないよ? そりゃぁ将来的には、化学的に、受精を本格的にやらないといけなくなる時代が来る。それは仕方がない事さ。人間自体が劣化していくんだ、精子も卵子も劣化する。子孫を残すのに四の五の言っちゃいられない。・・・・でもねぇ、まだ、精子を絞り取れるうちは、自分の、力で、絞り取らなきゃぁダメなんだ。」

大貫「なにそれ? セックスしろ?ってこと?」

久世「バカだねぇお前は。そういう事を言っているんじゃないよ・・・・動物には、動物の、子供を生む、サイクルがある。もちろん、人間も動物だ。子供を生むには、その準備が必要だ。当然、骨格から始まって、ホルモンの周期、受胎、排卵の周期もある。」

大貫「ママ、そういう、自然分娩が望ましいって言っている人は、時代錯誤よ?」

久世「うちにも病院があるだろう?そこの医者には、なるべく、なるべく、自然に生まれるように、妊婦に教育をしている。・・・・当然、医療的に、科学的に管理した上で、だ。

・・・・何故だか分かるかい? お前達は、出産を、甘く、見過ぎだ。・・・・ま、そのうち、子供を生めば、分かると、思うが、ね。」

久世「だいたい、今の、子は、体力がない。子供を生むだけの、体力がない。妊婦だからって、いい子、いい子に甘やかすから、子供を生むのに十分な体力がないんだ。それで、いざとならやぁ切開だ。母親も子供も両方大事だからねぇ、切開するさぁ。」

矢板「当然の医療行為だからね。」

久世「私が若い頃はねぇ、生む、その瞬間まで、働いていたもんさね。」

大貫「ママの若い時の話、されてもぉ。・・・・百年前?」

久世「バカお言いでないよ!そんな歳じゃぁないよ、私は! 足腰、鍛えて、元気な子供を生む、土台をまず、作らないと、お前達、母親の体も、危なくなるんだ? いいかい?お前達が子供を生む時は、私が、しっかり面倒みてやるから、そのつもりでいるんだよ?いいかい?

まあ、寿子は、・・・・・・いいとして、知江、あんたは、もっと、体、作らなきゃダメだ。」

大貫「人を、ゴリラみたいに言わないでよ?」

久世「お前みたいなねぇ、男勝りの大女をもらってくれる、男に、感謝するんだねぇ。お前は、いい子を、生める。後は、その、男の、子種次第だ。・・・・・寿子。お前の男、お前より、でかい図体してるじゃないか? 丁度いいじゃないか」

大貫「はいはい、どうも。・・・・その時は、元気な子供を、生みますよ」

久世「世の中にはねぇ、いい子種、いい精子を、見分けられる、嗅覚を持っている女がいるんだ。」

大貫「あ、さっきの話?」

久世「そういう女は、頭じゃ理解できなくても、天性の才能っていうか、無意識に、無自覚に、良い精子を、見分ける事が出来る。

科学的に言って、ホルモンで、精査しているって論文が出ているが、私は、遺伝子、もっと深い、”血”で、精子を選んでいるんじゃないか?って思っているけどねぇ。」

矢板「・・・・・ママも、博識だからねぇ。」

大貫「ママ、妙に、頭いいから、困るのよ。」

久世「例えば、ここ。」

大貫「・・・・? なにか、くれるの?」

久世「バカだねぇ、お前は! 知江、あんたは、わかるかい?」

矢板「お手?」

久世「お前もバカだねぇ、せっかく学校だして、弁護士にしてやっても、その程度かい?いいかい?

この手には、なにがある?」

大貫「・・・・なんにもないじゃない? 空気?」

久世「菌だ。・・・・常在菌。・・・・・・人間、それぞれ、持っている、菌が違う。腸に飼っている菌も違えば、手のひらの菌も違う。この、菌の、違いで、人間の、生理的な、好き嫌いを、判断しているんだ。金も持っていて、顔も良くて、姑もいない。最高の条件の男だとしても、どうしても、好きになれない。その、タンマをかけているのが、この、菌さ。

人間の生存戦略として、なるべく、違う、種類の人間の血筋と、混ざり合う習性がある。そうでなければ、突発的な事象で、全滅してしまうからさ。流行り病とか、でね。」

矢板「ああ、そういうこと?」

大貫「わかったの?」

矢板「ああ、ええ。」

久世「人間のバリエーションを多く作る事で、人間自体の、生存数を、増やす目的さ。背が高い、低い、泳ぎが上手、下手。病気に強い、弱い。・・・・全部、同じ人間なら、一回の、事象で、全滅してしまうが、半分、違っていたら、半分、生き残る事ができるからね。自分の持っている菌の臭いを、無意識に嗅ぎ分けて、別の、菌の持ち主を探している。フェロモンとか言われているものも、その、類さ。」

大貫「でも、精子でも、分かるの?」

久世「だから言っているだろうが? 自分の求めている精子かどうかなんて、自分の、股に、入れてみれば分かるだろう? ひ弱な精子は、殺すだけだ。」

大貫「ま、ま、ま、そうだけど。そうだけど。」

久世「男の棒を入れれば、子供が出来るなんて、甘い、話じゃない。・・・・・女の股が、子宮が、子種を、選ぶんだよ。

だいたいねぇ、なんの為に、セックス、してると、思ってんだい? 肌と肌が、くっつけば、嫌か、どうかくらい、分かりそうなもんだろ?違うかい?」

大貫・矢板「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

久世「関心しているんじゃないよ! 体の菌同士が、触れるんだ。その時点で、こいつは、人間的に、必要かどうか、選別しているんだよ!」

大貫「じゃ、その、・・・・・さっきの、男の、女も、・・・・・・精子を手に入れたから、もう、男は、用済みって事?」

久世「そういう女がいるって、話さ。・・・・・別に、その消えた女が、そうだって、確証はないけどね。」

大貫「ま、ママを見てれば、分からなくもないけどね。・・・・・男がいなくても、子供を、育てる、気には、なるけどね。」

ウィィーン

瀬能「あ なんです、雁首揃えて・・・・」

大貫「あ、杏子さん。今、お茶、淹れます。」

瀬能「妖怪不死身ババアと、堅物弁護士が、なにか用ですか?」

久世「おい瀬能の娘ぇ。私ぁ客だよ? 客に対する礼儀がなってないんじゃないのかい?」

瀬能「・・・・口が減らないクソババアですねぇ・・・・・・ま、いいですけど、寿子、これ、お茶請けに、これ、出して下さい。」

久世「・・・・なんだい?」

瀬能「あなたにあげる、なんて、まだ言ってませんよ?」

久世「どうせ食うんだ。さっさと出しな! 赤福かい?」

瀬能「赤福じゃないんですけど、あんこ餅、もらったので。」

久世「いただくよ」

瀬能「・・・・主人より先に食うって、どういう訳ですか? あ、もう、喉につかえても、知りませんよ?ババアなんだから」

久世「相変わらず、まッずいねぇ、あんたが持ってくる菓子はぁ!」

瀬能「・・・・魯山人先生御用達のお店からの、お土産ですよ?それぇ・・・・」

久世「ロサンジンだかサミエル・クソ・ジャクソンだか知らないけどねぇ、私の口に合わなけりゃぁ、不味いんだよぉ! 精進しなぁ!精進!」

瀬能「魯山人とサミエルジャクソン、間違えるわけないでしょう! 耳、腐ってるんですか!」

矢板「・・・・・・・・・・プッ・・・・・・失礼しました」






「木崎さん。聞きました?」

「なぁにをだよ? お前は主語がねぇんだよ、主語が!」

「ああ、すいません。柏葉さんの、例の、消えた、奥さん。・・・・見つかったそうなんですよ。志穂美さんが、言ってました。」

「あいつ、・・・・・どこからそんな情報、入ってくるんだよ?スパイか?」

「それは知りませんけど・・・・・・」

「見つかったんなら、良かったじゃねぇか。事件性、なかったって事だろ?」

「まあ、そうらしいですけど。誘拐とか、拉致とか、そういう類の事件ではなかったみたいです。ただ、・・・・違う、事件に、なりそう、みたいで。」

「??? なんだよ、それぇ?」

「婦女暴行・・・?」

「はぁ?」

「僕も、よく、分からないんスけど、」

「婦女暴行って?お前、柏葉が、暴行したって事か?強姦?」

「・・・・・・んんん?ちょっと、違うんですけど・・・・・」

「なにがだよぉ・・・・? お前の言っている意味が分からねぇよ。」

「説明すると、難しいんですけど、僕も、聞きかじりなだけで・・・・・・」

「お前はいつもそうだよな」

「・・・・・婦女暴行で、捕まるの、柏葉さんの、奥さん、みたいなんです」

「ん・・・・・はぁぁぁぁぁぁああ?」

「ま、そうなりますよね、ふつう」


「あのぉ、僕が、志穂美さんに聞いた話だと、警察が、柏葉さんの、その消えた奥さん、保護した、らしいんですよ。」

「良かったじゃねぇか」

「そのいきさつが、産婦人科に、一人で来た、女の人が、怪しかったらしいんで、それで、産婦人科が、警察に、通報したらしいんですね。」

「・・・? ・・・・いや、そこが、よく、分からないんだけど」

「僕も最初、聞いた時、あのぉ、柏葉さんが、・・・・僕等、知らないじゃないですか、一方的に、柏葉さんが、奥さんだって言って、写真、見せてもらっただけで。」

「まぁ、まだ結婚はしてないけどな」

「あ、はい。だから、一方的な、偏愛で、実は、付き合ってないんじゃないか、って僕は、思っちゃったんです。・・・・・まぁ、強姦ですよ、レイプですよ。それで、悩んで、産婦人科に、逃げ込んだんじゃないかって、思っちゃったんですね。」

「・・・・・・そうだよな。俺も、そう、思うよ。柏葉には悪いけど・・・・」

「でもそれがちょっと違うらしくって。

父親を明かさなかった、らしいんです。その、女の人。ほら。・・・・・産婦人科って、それなりに訳ありの人も、来るじゃないですか。

でも、だいたいは、望まない妊娠をしてしまったから、堕胎したい、そういう相談が多いらしいんですぅ。・・・・あのぉ、普通の、一般的な、ご家庭の、妊婦さん以外の、人の場合。明らかに、中学生とか高校生とか、・・・・社会的に問題ありそうな人の場合。」

「いいか悪いかは、俺は、判断できないけど、でも、育てられもしないくせに、子供を妊娠しても、やっぱり、お互い、不幸になるだけだからな。子供も、親も、身内も。」

「それが一般論ですよ。木崎さん。まっとうな、感覚です。

ところが、・・・・・・その、女の人。逆で。・・・・・・・・生むって言うんですって。誰か、父親を明かさないし、でも、一人だし。

仮にね。そのぉ、女性一人で、子供を生み、育てる人だって、いますよ?ご主人が、急逝したり。でも、そういう場合って、その家族が代理で付き添いにきたりするんですって。・・・・まったく、誰も、いなくて、本人だけで、生むって聞かなくて、それで、反対に、怪しいと思われたみたいで。」

「それで・・・・警察、呼ばれたんだ。」

「ほら、柏葉さん。追い返されたけど、警察に、相談、してたじゃないですか。その、記録だけは、残っていたみたいで。事件としては取り扱ってもらえなかったけど、相談記録が残っていたから、それで、身元が割れたそうなんです。」

「・・・・婦女暴行って、どこから出て来た話だよ?」

「そこなんです。警察も、柏葉さんが、無理矢理、強姦して、妊娠させたんじゃないかって話だと、思ったらしいんですが、違うみたいで。どうも、逆、だったんです。」

「だから、その、逆ってなんなんだよ?」

「その、奥さんの方が、柏葉さんを、強姦していたんです。」

「ん?」


「僕は、まったく、イチミリも、理解できないんですが、その、女の人、柏葉さんの、精子が欲しくて、近づいたらしいです。・・・・だから、妊娠したら、お役御免で、柏葉さんも、用無しで、捨てられたっていうか、姿を消した、みたいです。・・・・・強姦と、結婚詐欺の、被害者だったんです、柏葉さんが・・・・・柏葉さんの方が。」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」

「僕に、言われても、困りますよ?」

「えぇぇぇえええ? はぁぁぁぁああ?」

「強姦とか、結婚詐欺って、男が、被疑者で、女が、被害者って、思いがちじゃないですか?逆だったんです。柏葉さんが、被害者だったんです。

最初から目的は、妊娠すること。柏葉さんの精子を手に入れること。」

「それで、妊娠したから、柏葉の前から、姿をくらましたのか?」

「当然、連絡なんて、取れるはずがありませんよね。だって、本人が、意図的に、姿を消したんだから。」

「なんでまた?」

「そこは知りませんよ?・・・・・妊娠したかったんじゃないんですか?しか、」

「だってお前、子供、できたら、金、かかるだろ? 一人で、女、一人で、育てる気だったのかよ?」

「まぁそこは、世の中、シングルの女性の方も沢山、いらっしゃいますし、男の方も、そうですけど。」

「まあ、・・・・・そうだよな。そこは、そうかも知れないけど。」

「・・・・・柏葉さん。大分、落ち込んじゃって。」

「そりゃそうだろ・・・・」

「お前、誰?くらいの勢いで、言われたらしいです。」

「え? でも、え?」

「見てなかったんですよ、それに、何にも、感情、無かったんですよ。あるのは、柏葉さんの、精子が欲しいって、だけで。」

「・・・・・・いやぁ俺、理解できねぇわ。無理だわ。」

「愛してもいないし、本当に、無感情で。・・・・・柏葉さん、立ち直れそうにないみたいです。部長が言ってましたけど。・・・・ずっと、休んでるみたいですし。」

「まぁ。・・・・・かける言葉、ないよな。・・・・・自分が、レイプされていた側だった、なんてな。

そんなに、・・・・・・・・・柏葉の精子が、魅力的、だったって事、なのか?」

「・・・・・彼女にとってみたら、そうなんじゃないんですか? 僕、分かりませんけど。

いやぁ、うちの奥さんに、話したんですよ。でも、僕も、・・・・・・うちの奥さん。たまに、僕、・・・・・・見てない時があるような気がして。・・・・・・・子供が欲しいとは、結婚する前から、言ってたんですね。僕も、子供は欲しいです。けど、・・・・・・女の人が言う、子供が欲しいと、僕が思う、子供が欲しいって、・・・・・微妙に、なにか、ズレている気がして。」

「お前の奥さんも、お前じゃなくて、お前の子種が、欲しいって、・・・・事か?」

「いやぁぁ・・・うちの、奥さんに限って、そういう事は、ないとは、思うんですけど。」

「ま、でも、お前がいなきゃ、誰が、金、稼ぐんだよ?」

「ですよね? ですよね? 僕も、そう、思うんですよ。僕は、奥さんと、子供の為に、一生懸命、働いているわけであって・・・・・・」

「玉守。・・・・・・お前、今日、早く帰って、奥さん孝行した方がいいんじゃないか?」

「・・・・・そうします。今日は、早く、帰ります。はははは。父親が、うざったいって、思われないように、・・・・・がんばらないと。」


「お前の精子だから、お前と結婚したって、思われたいよな?」


※全編会話劇

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