ショート『美容院のモデル』
「〆谷さん、いるだろ?」
「ああ、はい。・・・・あの、お爺さん。」
「お前さぁ一応、仕事なんだからさぁ、高齢者とか、そういう言い方しろよ?」
「あ、はい、すいません。その、〆谷さんが、どうなさったんですか?」
「いやさぁ、この前、様子、見に行ったらさ、すげぇ怒ってんだよ、美容院に。」
「美容院に?」
「ああ、それで〆谷さんに理由、聞いたんだわ。そんなに怒る理由、ないでしょ?って、そうしたらな。」
「はい」
「なんか知らないけど、美容院って、カットのモデル、募集しているんだってな。美容院の入り口に、でかでかっと、書いてあるんだとよ。」
「ああ、書いてありますね?」
「お前、美容院、行くの?」
「ええ、まあ。妻と、同じところに・・・・、木崎さんは、行かないんですか?」
「俺は、もう、床屋だよ。美容院なんて、行ったこと、ねぇよ・・・・・・・なんで、頭、見るんだよ?」
「いや、まぁ、・・・・そうですね、木崎さん、いつも、同じ、髪型ですもんね」
「まあ、頭なんか、慣れてる人に、頼んじゃった方が、楽だろ?」
「それはそうかも知れませんけど」
「〆谷さんなぁ、カットのモデル、やるって言ったらしいんだ、店の人に。そうしたら、断られちゃったそうなんだよ。」
「・・・・・えぇ、はぁ、まぁ」
「そういうんじゃねぇって、言われたらしいんだ、そういうんじゃ、って。そういうって、なんなんだよなぁ? 俺も、美容院いかねぇから、〆谷さんが、怒っているのがよく、理解できなくてなぁ。
ハゲてんのが悪いのかぁ!ってキレちらかしたらしいんだけど、そういう訳でもない、らしいんだよな。
・・・・・・美容院の人に、なだめられて、帰ってきたそうなんだけど、二度と、行かねぇって言ってたな。
タダで、髪、切ってもらったって言ってたけど。」
「・・・・・ああ、そういう、」
「モデルやると、料金、半額だか、場合によっちゃぁタダになるって、書いてあったから、それで、〆谷さん、行ったみたいなんだけどな。失礼な話だよな。かわいそうだよ、〆谷さんが。」
「いや、あの、・・・・・・美容院の方が、なんとなく、・・・・かわいそう・・・・な気も・・・・」
「カリスマだか何だか知らねぇけど、お高く、とまってんじゃねぇの?美容院って、」
「いやぁ、そんな事は、ないと、思いますけど・・・・」
「俺もその話、聞いてさぁ、二度と行かねぇ方がいいですよ、って、言ってやったんだわ。」
「・・・・・木崎さんも、美容院、行かない方がいいと思います。・・・・・なにか、いろいろ、揉めそうな気がして・・・・」
「なんでだよ!」
※全編会話劇




