第80章 武闘大会 3日目
グランタルの街は最終日とあってメインの団体戦を楽しみに会場には満員の観衆がその始まりを今か今かと談笑をしながら待っていた。
控え室ではトーナメント表をエレナは不満そうな顔で見ていた。
「俺達は1回戦でホールノ学園と当たり、決勝まで行くとガゼル学園と戦うことになるな」
『でもさーこれって不公平じゃない?』
ガゼル学園以外は3回戦まであるがガゼル学園は決勝でしか戦わない事にエレナは不服だった。
「俺もそう思ってさっき学園長に聞いたんだがガゼル学園以外の学園はこれを変えようと訴えているみたいなんだが運営側が頑として変えないらしい」
『何でかな?』
「ガゼル学園から運営に金でも流れてるんじゃないか? と言っていたな」
(全くどこまで汚い手を使うのか……)
『順番はどうしよっか? 僕は何番でもいいけど』
「そうだな、俺も特に希望はないが……」
「1番やる」
ナナはエレナの膝の上でお菓子を食べながら一言喋った。
更にナナの膝の上にはフェイが一緒にガツガツとお菓子を食べていた。
『じゃあ1回戦はナナが1番でアルトは2番でいいかな』
「ああ、分かった」
ガゼル学園のハラント達は試合を前に黒い宝石を渡された。
「何だこれ?」
ハラント達は宝石を受け取るとじっと見ていた。
「学園長から御守りだそうです。必ず身につけておく様にと言われています」
3人はそれぞれ渡された宝石を服にしまうと試合を観戦しようと部屋を出ていった。
会場の誰もいない片隅で1人ローブを深くかぶる男が立っていた。
(魔王様がこの世界から人間を排除する事を宣言した。俺達はこの大陸の人間を始末するように派遣されたがそんな時にこの大会が開催されると聞いて俺は大いに喜んだ。各国の首脳陣がこぞって来ている、強い奴も集まるならこの大会でまとめて葬り去ってやる。そうすればもうこの大陸に邪魔な奴はいない)
いつの間にか同じ格好をした者が近くに立っており男に跪いた。
「準備完了しました」
「こちらの合図と共に実行に移せ」
「は!」
跪いたまま消えていくと男は不気味な笑みを浮かべた。
「後数時間でここは地獄だ、せいぜい今のうちに楽しんでおけよ、ククク」
闘技場に出ると歓声が大きくなりエレナの名前がありこちでコールされていた。
「お前も一躍有名になったな」
アルトは歩きながらエレナに話しかけた。
『アルトも女の子からキャーキャー言われてるくせに!』
アルトは顔を赤くしていたがリングに上がると表情は真剣になっていった。
お互い挨拶をするとナナが1番手としてリングに残った。
相手は大きな体をした武闘家の男で手にガントレットを装着していた。
「おいおい子供が相手かよ! 悪いがこの試合負けられないんだ、すぐに終わらせてやる」
試合の開始と同時にナナの間合いに入ろうとダッシュをするがナナはマナで遠くから攻撃して間合いをコントロールしていた。
「くそ! 意外と侮れないな!」
男ははナナのマナが切れる瞬間を狙っていた。
そしてナナがマナを撃つのをやめた瞬間一気に間合いを詰めた。
「これで終わりだ‼︎」
男は渾身の一撃を叩き込もうと振りかぶった。
「ガァ‼︎」
男は後ろから衝撃を受けた。
「何だ⁉︎」
背中が焼けるように熱くなるとグラっと体勢を崩し地面に手を着くと目の前にはナナがマナを溜めて待っていた。
「ちょ、待っ」
ドォーン!
男はナナのマナをまともに受けて倒れた。
「おお‼︎ 凄い! 女の子が倒したぞ!」
観客はまさかの結果に湧き上がった。
審判はナナに次を戦うか聞いたがナナは首を振ってエレナ達の元に帰って行った。
『やったね! ナナ』
エレナは帰ってきたナナに拳を突き出すとナナは恥ずかしそうにちょこんと拳を合わせた。
それをアルトは微笑ましく見るとリングに上がって行った。
次の相手は槍使いだった、試合が始まるとアルトは接近戦に持ち込み相手の間合いを取らせず徐々に追い詰めていき相手の槍使いはなす術なく敗れた。
団体戦の3人目はどの学園も最強の生徒を置いておりホールノ学園もまた最強の剣士である生徒を配置していた、それを知っているアルトの目は真剣なものになっていた。
ガギィ‼︎
キン‼︎
両者は剣を打ち合い相手の手を探っていた、相手の男は戦いながらアルトに話しかけた。
「流石個人戦を優勝しただけあるな、だが団体戦はそう簡単にはいかない!」
「は!」
アルトは相手の懐に潜り込むと剣を振る。
ザン‼︎
「グゥ……」
相手の胸当てに一撃を与えると男はグラっと体勢を崩す、アルトはそのまま相手の首に剣を突きつけた。
「参った……まさかリチーナ学園に負けるとはな」
ワァー‼︎
「うおお! まさかあのリチーナ学園が勝ったぞ!」
「今年は面白くなりそうだ‼︎」
番狂わせに観客の歓声が大きくなるとエレナ達は控え室に戻っていった。
次の対戦はノーチェ学園を破ったアーツ学園に決まった。
1番手はナナで相手は同じ女性のマナ使いだった。
「おチビちゃん行くわよ‼︎」
相手は試合開始と同時に攻撃を仕掛ける! マナによる突風でナナを吹き飛ばそうと発動させた。
ゴォー‼︎
ナナは素早く氷で盾を作って突風をやり過ごした。
「やるわね! これはどう?」
今度は幾つもの火球で攻撃を仕掛けたがナナはものともせず相手に突っ込んで行った。
相手に近づくと足元に氷を張り巡らせると足を氷で動けなくした。
「く‼︎ こんなもの!」
相手は火で氷を溶かそうとしたがなかなか溶けずに動揺しているところをナナにマナを打たれて防御しきれずに攻撃を受けて勝負がついた。
「すげー‼︎ あの子また勝ったぞ‼︎」
「なかなか面白い戦いだったよ!」
ナナと入れ替わりでアルトはリングに上がると次は大きな剣を持つ巨漢な青年だった。
アルトは素早さで相手を翻弄すると最終的には相手がスタミナ切れを起こして決着がついた。
3人目は2本の剣を持つ青年がリングに上がった。
試合が始まるとアルトは真っ向勝負を仕掛けた。
キン‼︎ キン‼︎
アルトは剣を弾き隙を作ろうとするが相手は2本の剣を上手く使い隙を与えないでいた。
「仕方ない……出来れば力を残しておきたかったが」
アルトは体を屈めると一気に相手の懐に潜り込んだ。
「は、速い!」
相手は慌てて剣を振るがアルトに弾かれるともう片方の剣で攻撃を繰り出した。
キン‼︎
アルトは高速で1回転するともう片方の剣も弾きそのままガラ空きの胸当てに一撃を放った。
ドゴォ‼︎
「グアァー!」
相手は吹っ飛ばされてそのまま気絶した。
観客席からは大きな歓声が起こるとアルトは無表情でエレナ達の元へ戻っていった。
アルトはかなり疲れていた、エレナが顔を見ると表情は変わらないが顔色は悪かった。
『大丈夫?』
「正直キツイが後1戦だ、この体が動かなくなるまでやってやるさ」
(ナナもアルトも連戦でかなり疲れが見える……)
残すは決勝戦となり観客はもしかしてガゼル学園を倒すのではないかと期待する声が大きくなりエレナ達を応援する人が続出したのであった。




