第79章 武闘大会 2日目
武闘大会2日目
ホテルの部屋から朝焼けをじっと見つめるエレナはセリア達の事を考えていた。
(カダル王国での戦いの最後に俺は暗い闇に飲み込まれて空高く飛ばされてしまった。セリアはあの時悲鳴のような声で俺の名前を叫んでいた、もしかしたら俺は死んだと思っているかも知れない……もし逆の立場だったら俺は物凄く悲しんで泣き叫んでるはず)
エレナはエレナが生きている確証がないセリア達の事を思うと胸が痛かった。
(早く帰らなきゃ……武闘大会が終わったら街で聞いたコーデリー港町に行こうそこで何としても船を出してもらうんだ)
武闘大会の本戦が始まる前にトーナメント表が貼り出された。
エレナは控え室に貼ってあった表をアルトと見ていた。
『ふたりとも1回戦からだね。4回勝てば優勝か……』
「本戦は予選の様にはいかない。もしかすると俺は明日の団体戦は無理かもしれないな」
『大丈夫だよ怪我をしても幾らでも治してあげるからね』
エレナがそう言うとアルトはエレナを見てフッと笑った。
「頼もしいな」
そして本戦の開始が告げられると会場では大きな歓声が巻き起こった。
『じゃあ行ってくるね』
「ああ」
エレナが闘技場に出てくると歓声は更に大きくなっていた。
「待ってました‼︎ 優勝候補筆頭のエレナちゃん‼︎」
「俺は君を見にきたんだ! 1回戦で負けないでくれよ!」
リングに上がると相手が先に待っていた。
(えーと名前はノーチェ学園のランカさんだっけ)
「宜しくお願いしますわ!」
『宜しくお願いします』
ランカはロッドを出すとロッドを出さないエレナに声をかける。
「何故ロッドを使わないの?」
(やば! 忘れてたよ)
『えっと、普段は剣士なんで持ってなくて』
ランカは少しムっとしてロッドを構えた。
「そう、私も舐められたものね。後悔しても知らないわよ‼︎」
ランカはロッドにマナを流すと間合いを取り攻撃を始めた。
火球が幾つも飛んでくるとエレナは素早い動きで避けていく。
またマナ切れを狙うつもりでいた。
「避けてばかりで攻撃しないとポイントで負けるわよ!」
『え? ポイント制なの⁉︎』
エレナは全く聞いていなかった、本戦では10分で決まらない場合は攻撃回数で勝敗が決まると言う事を。
『くー! しょうがないか……』
エレナは一瞬でランカの後ろに移動するとマナで作り出した岩で衝撃を与えた。
「キャー‼︎」
ランカはそのまま立てずに降参した。
「「「「おおお‼︎」」」
観衆はエレナの動きにどよめく。
「見えなかった……」
「なんてスピードだ‼︎ 消えたかと思ったぞ!」
エレナはランカの所に行くと手を出した。
ランカは手を取ると自分との差に愕然としながらも負けを受け入れた。
「完敗ね、この世界にはあなたみたいな化け物がいるのね……」
『ランカさんもその歳でいい線行っていると思うよ』
「同い年くらいのくせによく言うわよ全く」
エレナは手からマナを流すとランカの擦り傷や打撲跡を綺麗に治した。
ランカは心地いいマナを感じ治った体を動かしエレナを見る。
「反則よ……」
『ランカさん対戦ありがとう』
「あなたと戦った事が将来自慢になりそうね」
そうして1回戦を難なく突破した。
2回戦はホールノ学園のフォルランとの対決だったが相手が1回戦で深手を負い棄権していた。
準決勝はアーツ学園のロンサントとの試合が始まる。
エレナは闘技場に出ると大きな歓声が起こる。
「1回戦見てたよ、多分君には勝てないと思うけど俺も1年間頑張ってきたんだ。最初から全力で行くよ!」
『宜しくお願いします』
ロンサントはロッドを持ち溜め始めた。
「これが効かなかったら俺の負けだ‼︎」
ロンサントはロッドの先から無数の光を出して空に飛ばした。
「行けぇぇー‼︎」
光は勢いよくエレナに向かって落ちていく。
エレナはそれを避けていたが不意に下からマナを感じた。
(なるほど空のは囮か……)
突然地面から大きな光がエレナの足元から出現すると光が火となって襲う。
「ど、どうだ⁉︎」
しかし煙が消えエレナが平然と立っているのを見るとロンサントは項垂れた。
「さすがに無理か……参ったよ」
ロンサントはほとんどマナを使い立っているのもやっとの状態だった。
エレナはロンサントに近づくと手を出した。
『対戦ありがとうございました』
ロンサントは握手をすると体に僅かにマナが流れてくるのを感じた。
体が動くようになり驚いてエレナを見るとエレナは微笑んでいた。
「なるほどね……ありがとう」
こうしてエレナは決勝戦を残すのみとなった
控え室ではアルトが座っていたので近づくと声を掛けた。
『疲れてそうだね大丈夫?』
「大丈夫だ……」
アルトも後決勝を残すのみとなっていたが連戦で疲れが溜まっていた。
『じゃあ決勝行ってくるかな。まあゆっくり休んでてよ』
「お前は緊張とかしないのか?」
アルトは軽い感じで決勝戦に行こうとするエレナに拍子抜けしていた。
『まあ別に生死をかけた戦いじゃないからね』
そう言ってエレナは部屋を出て行った。
アルトはエレナを見送ると一言呟いた。
「今までどんな過酷な戦いをしてきたんだ……」
決勝戦のコールがされると会場は歓声がヒートアップした。
今までの大会よりも次元の違うエレナやアルトの戦いを見て観客は大いに盛り上がっていた。
エレナは相手とリングに上がると向き合う。
『ガゼル学園のコリアさん宜しくお願いします』
「随分と余裕ね、言っとくけど私は別に実力で団体戦から漏れたわけじゃないわ。どうせ団体戦は優勝するからつまらないじゃない? だから個人戦に来ただけよ」
コリアはロッドを出して勝ち誇った顔をする。
「私はまだ全然元気よ。あなたは大丈夫かしら? いいのよ無理しなくても」
エレナは静かに合図を待っていた。
(煽る相手は嫌いだなぁ早く始まらないかな)
「せっかく無様な姿を晒さない様に配慮してあげたのに、もう手遅れね」
「では決勝戦始め!」
ドン‼︎
「キャー‼︎」
始まった直後だった。
エレナはちょっと怒っていたので始まった瞬間にマナで衝撃を発生させてコリアは遠くへ転がっていった。
コリアは衝撃を受けて吹っ飛ばされてしまいそのまま目を回して気絶していた。
観衆は何が起こったのか分からずシーンとしていたが審判がエレナの勝ちを宣言するとどよめきが起こった。
「何が起こったんだ⁉︎」
「いきなり吹っ飛ばされてたけどあれもマナだよな?」
「次元が違いすぎて驚くのも忘れたぞ!」
そしてアルトも決勝戦を何とか勝ちふたりで優勝を果たしたのだった。
学園長達は驚きに包まれている。
「おいおい! まさかふたりとも優勝とはな‼︎」
「あのふたり明日も出るんだろ? 団体戦も優勝しちゃうんじゃないか?」
「これは明日が楽しみだわ!」
学園長の3人はガゼル学園長のジーズを見て嬉しそうに話していたがジーズ学園長はそれでも笑みを浮かべていた。
「これは凄いですなぁ! 明日が楽しみだ! ははは!」
ジーズはそう言って部屋を出て行く。
「ふん! あの余裕も明日には崩れるだろうさ!」
「そうね!」
こうして個人戦は終わりフィナーレである団体戦へ……




