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第81章 決勝戦

 決勝戦を待っていた会場はいつもと違う雰囲気になっていた。


 毎年圧倒的な強さで優勝してきたガゼル学園に勝つ可能性を秘めた毎年最下位のリチーナ学園という組み合わせがかつてない盛り上がりを見せていた。


『ふたりとも後は任せてね』


 エレナは連戦でぐったりしている2人にそう声を掛けた。


「お前にそう言われると心配しないのが不思議だな」


 アルトはエレナの底知れない強さを感じていて彼女が負ける姿は想像できなかった。


 それに本気になった彼女を観てみたいという願望もありエレナに任せる事にした。


 リングには既に3人が待っており互いに挨拶をするとエレナはリングに残った。


 1番手はハラントだった。


「まさか最初からエレナさんが相手とは……」


 ハラントは剣を構えると顔つきが真剣なものに変わった。


「これは真剣勝負です! 本気で行きます!」


 エレナは微笑むと鉄の剣を構えラーガのマナを3つ解放した。


 体の周りには溢れんばかりのマナがエレナの体を覆っている、エレナはそれを全て身体強化に変えた。


 試合が始まるとハラントは先制攻撃を仕掛けようとダッシュで間合いを詰める。


 スッ‼︎


 エレナは残像を残す様に消えていった。


「な‼︎」


 ハラントは何が起こったのかその状況が理解できなかった。


 ズガン‼︎


「ガァ‼︎」


 背中に強い衝撃を受けるとハラントはリングの端まで吹っ飛んで行った。


 ハラントはそのまま動けずに試合が決まった。


 エレナはハラントのところに行くと手を差し出した。


「エレナさん……」


 ハラントはエレナの柔らかい手を取ると体にマナが流れて体を癒して行く。


『対戦ありがとうございました』


「あなたには敵いませんね」


 観客は一連のエレナの動きに驚きハラントが一撃で倒された衝撃が凄くどよめきが起こっていた。


「今の見たか?」


「見てたが見えなかった!」


「ハラント様もかなりの腕前のはずがあんなに簡単に倒されるなんて……」


 リングにはカイジスがハラントと入れ違いに入って来ると剣と盾を持ち緊張した面持ちでエレナを見た。


『宜しくお願いしますカイジスさん』


「あのハラントが圧倒されるとは、只者では無いと思っていましたがこれ程とは……ですが私も全力で行かせて頂きます」


 試合が始まるとカイジスは構えてエレナの動きを伺っていた。


 エレナは剣にマナを集めるとカイジスめがけて剣を振り真空の衝撃波が盾を粉砕した。


「グ‼︎ 何て威力だ‼︎」


 カイジスは盾を捨てるとエレナに向かって突撃をして行くがくるっとエレナが攻撃を躱すとそのまま背中に一撃を与えた。


「ガハァ‼︎」


 カイジスは何とか踏ん張るがそのままガクッと項垂れた。


「ま、参りました。どうやら俺達とは次元が違う様だ」


 ハラントと同様にカイジスに手を差し伸べるとマナを流して傷を癒した。


「ありがとうございました。エレナ殿」


『こちらこそ』


 そして最後にロイズがリングに上がってきたがその表情はワクワクしたものになっており今まで自分より強い者に飢えていたロイズは勝敗に関係なく自分の力を最大限に発揮できる事に喜びを感じていた。


「エレナさん宜しくお願いします!」


『ロイズさん嬉しそうですね』


「はい‼︎ 強い相手に会えたことが嬉しくて」


「俺も全力で行きます‼︎」


 ロイズは剣を構えるとマナを纏った。


 エレナはそれに気づくと彼が最後の順番だった事の理由が分かった。


(なるほどね、ロイズさんはマナが使えるのか)


 ロイズは試合開始と同時にエレナに向かって行った。


「はあ‼︎」


 ガキン‼︎


 ロイズの剣が振り下ろされエレナは剣で受け止めた。


 横から蹴りが飛んできたのでエレナは後ろにジャンプした。


 しばらく攻防を繰り返すうちにロイズはマナが切れはじめたのか動きが鈍ってくる。


「流石にこれ以上はキツイな……最後の攻撃まで持ってくれよ」


 ロイズは最後の力を振り絞りエレナに向かって行ったがエレナから無数の火球が放たれた。


 ドン!


「グ!」


 ロイズは火球に当たりながらもエレナに向かって行くが辿り着いた所で力尽きた。


 エレナはロイズに近づくとマナを流し傷を癒したがマナを使いきってしまったロイズは立ち上がることができなかった。


 勝負が決まると会場はまさかの結果に大会一の歓声が上がった。




 会場が一望できる王族達の部屋ではエレナの話題で持ちきりだった。



 ザザーラン国王のノーツは近くにいた将軍に話しかけた。


「バーンズよ‼︎ あの女剣士をうちに迎えようぞ‼︎」


「確かにあの実力ならカリスマ性もあり繁栄には欠かせない存在かと」


「何としても連れて帰るぞ! 何ならハラントの側室にしても構わん‼︎」



 ロックス国王のダリスは隣にいた側近に耳打ちした。


「ソノアよあの女性をロイズの側室にしたいと思うのだがどう思う?」


「はい、あの強さにあの美しさなら誰も文句は言わないでしょう」


「今日のパーティで猛アタックをかけるぞ! 何としてもうちの国に来て頂くのだ」




 バイシュ国王のワイズも将軍を呼んでいた。


「サンザよ見たか! あの美しい女性をうちの国に引き入れるぞ!」


「は! 美しく強い女性は人気が出るでしょう」


「それにカイジスの顔を見たか? あやつ惚れとる」


 ワイズは普段表情も変えないカイジスの将来に不安を抱いていたが先程の戦いの後、クールな表情は崩れて顔は赤くなっていた。


 それは父親でさえ初めて見た顔だった。


「これはカイジスの側室も考えんとな」


 ワイズは嬉しそうにサンザを見て笑った。



 学園長達がいる部屋では大騒ぎになっていた。


「おお‼︎ 勝った‼︎」


「歴史が動いたな」


 リッドは信じられない様子で放心していたが皆に祝福されると涙を流して喜んだ。


 その端では無表情のジーズ学園長がいた。


 皆はそれを見ると何か恐ろしい気分になり皆部屋から出ていったのであった。




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