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第68章 学園の危機

 エレナとアルトは鍛冶屋を出て宿屋に向かっていた。


 レナとルトも疲れた様子だったので今日は休もうという事になった。


 外へ出るとさっきとは違い制服を着た学生らしき若者が多く見られた。


 グループで話しながら仲良く歩いている人達や一人で本を読みながら歩いている人、イチャイチャしながら歩くカップルなど。


(こっちの世界でも変わらないな)


 エレナは何か懐かしいというか日常が帰ってきたみたいな感覚になり笑みが溢れた。


 しかし学生はエレナを見るとしだいに騒ぎ始めた。


「おい、あれ見ろよ!」


「うわ! 可愛いすぎだろ‼︎」


「キャー!可愛い‼︎」


「誰あれ‼︎」


「隣にいるの恋人かな?」


「ちょっと話し掛けてみようよ‼︎」


 少しずつ学生がその声に釣られて集まっていく。


 エレナ達は宿に向かおうとしていたが人が集まりすぎて進めなくなるくらいに囲まれていた。


「あ、あの‼︎」


 その内一人のショートヘアの女の子がエレナに話しかけてきた。


『えっと僕?』


「おい、聞いたか? 僕だって」


「見た目とはギャップの男口調とは……逆にいい‼︎」


「この街の学校に入るんですか?」


『そうだね』


「それって何処の学校ですか?」


 違う女の子が聞いてくる。


『えっと、アルト何て言ってたっけ?』


「聞いてない、明日案内すると言っていたからな」


『ごめん、明日推薦された学校に急遽行くことになってまだ分からないんだ』


「何処かしら〜うちだったら最高‼︎」


「あのお名前は?」


『エレナっていうんだよろしくね』


「エレナ様……」


 ブラウンの髪をした女の子はウットリした表情でエレナをみている。


『ごめんそろそろ行かなきゃ行けないんだ』


 そう言うと学生が左右に分かれて前に道が出来た。


『じゃあね』


 エレナが手を振ると歓声が聞こえて来た。


 その日は街で絶級の美女が明日何処かの学校に転入するという話題があちこちで話され大いに学生の間で賑わっていた。




 グランタルの街のある会議室には5人の男女が集まっていた。


「という事で今年も大会の方よろしく頼みますぞ! ははは!」


 その内の太った中年の男は上機嫌で部屋を出て行った。


「ふん! あれは今年もうちが優勝しますよと言っている感じだな!」


 一人の男がチッと舌打ちをした。


「あそこは徹底的に強い子を裏で金と待遇を餌にスカウトしたり引き抜いているから当たり前でしょ、この前もうちの子を転校させたのよあの豚」


 女性も腹立たしくなり不満の声を上げた。


「はぁ〜」


 まだ若く見える弱々しそうな男はため息をついた。


「お前も大変だな」


 その隣にいたクールな男はため息をついた男に同情する様に言った。


「もううちはダメだな、経営が出来なくなってきた」


 ため息をついた男は諦めた顔をしていた。


「まあ毎年最下位の学校には誰も行きたがらないからな」


 先程舌打ちをした男がニヤっとした顔をする。


「あの豚のせいよ! アイツが悪どい事をするからリットの学校のようなのが生まれるんじゃない‼︎」


 女が叫ぶように大きな声を上げると男は黙ってしまった。


「だがアイツの学校には貴族や王族の子が通っているんだ。下手な事は出来ないし言えない」


 男の言葉に皆黙ってしまい、その場はしばらく沈黙に包まれたままお開きとなった。


 この街の一番人気がない学校として知られているリチーナ学園に会議に出ていたリットという男が帰ってくる。


 学園長室に入り椅子に座るとコンコンとノックする音が聞こえた。


 ガチャっと扉が開き女性が入ってくる。


「お帰りなさい、どうでした?」


「ダメだ、こちらの希望は全て却下された」


「……そうですか」


「エステ、もう手がない……終わりにしよう」


「代々受け継がれてきた学校をやめちゃうんですか?!まだ諦めるのは早いですよ‼︎」


「しかし……」


「そうだ‼︎ 聞いて下さい‼︎」


 女性は嬉しそうな顔をしていた。


「どうした? いい事でもあったのか?」


「はい! 今日うちの学校に2人の入学依頼がありまして!」


「……珍しいなこの時期に」


「明日来るそうなので一応入学の適正試験をしますね」


「そうか任せたよ」


 リットは椅子にもたれかかり頭を悩ませていた。


 この街では毎年の武闘大会の団体戦順位で街から運営資金が決められるのだ。


 毎年最下位のリチーナ学園は毎年の資金も少なく入って来る学生も少ない。


 稀に入ってくる優秀な子も引き抜かれてしまう悪循環でもう経営は破綻寸前の所まで来ていた。


「どうしたものか……」


 リットは椅子に寄りかかって窓からどんよりとする空をただ眺めていた。






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