第56章 祭り
日も暮れてくると普段より明るくなっている街は大勢の人で賑わっていた。
特訓が終わるとエレナ達は家に帰り早速出かける準備を始めた、今日は孤児院の皆で祭りに出かける事にしていたのだった。
セリアはエレナの部屋に行くと服を選んで少し化粧をすると更に綺麗になったエレナの顔を見て言った。
「うん! 凄く綺麗よエレナ」
『ありがとうセリア』
広間に行くと皆んなおめかしをしてわいわいと集まっていた。
教会のシスターも子供達の為に集まっていた。
エレナは大人達に金貨の入った袋を渡した。
『子供達に色々買ってあげて下さい。後自分の好きな物でも』
「こんなにいいんですか⁉︎」
皆金貨の量に驚いていた。
『ええ、使い切って下さい』
「こんなに使い切れるかしら……」
『じゃあ行こう。フェイも子供達の面倒みてよね? いっぱい食べさせてあげるからさ』
フェイは腰に手を当てて任せろ! というポーズをしていた。
「じゃあ私はユギルと楽しんでくるわ! エレナあれお願いね?」
『デッカイの打ちますね』
「ふふ、楽しみにしてるわね」
サラは嬉しそうに出て行った。
エレナは子供達と一緒に祭りに出掛けて行った。
街では多くの人が入り乱れており色々な露店がまさに祭りだった、エレナは子供の時に行った縁日のような感覚になり普段見られない光景に嬉しさと懐かしさが入り混じっていた。
エレナ達は皆んなで歩いて行くと周りの視線は常にエレナの方へ注がれていた。
「聖女様だ!」
「今日はいつもより更に美しい……」
「あ、あれが聖女様……何と綺麗な」
エレナの化粧といつもと違う服装に周囲は目が離せなかった。
サラは馬車にいるユギルの所に向かって歩いていた。
ユギルを見つけると嬉しそうに駆け寄る。
「お待たせ!」
「ああ、行こう」
サラはユギルに服を見せる為クルッと一回りすると感想を聞いた。
「どう?」
「綺麗だ」
ユギルに褒められると少し照れながら話す。
「ふふ、ありがとう! セリアとマイナが選んでくれたの」
「そうか、似合っているぞ」
サラはユギルの腕を取ると仲良く歩いて行った。
エレナ達は子供達と色々露店を回って祭りを楽しんでいた。
子供達は欲しいものを買ってもらえたり露店の食べ物を頬張り楽しそうな笑顔をみせていた。
「これは聖女殿‼︎」
声の方を向くとラバーツが手を上げエレナ達の所に来る。
『ラバーツさん』
ラバーツは家族と来ていたようだ。後ろに奥さんと5歳くらいの子供がエレナを見ていた。
「紹介します。妻のアニルと息子のシルトです」
「いつも夫がお世話になっています。妻のアニルです」
『ラバーツさんには色々とお願いを聞いて貰って感謝しています』
「本当に聖女様だぁ! 僕シルトです!」
『よろしくね、シルト君』
シルトと握手すると大喜びで母親の元に向かった。
「お母さん‼︎ 聖女様と握手しちゃった‼︎」
「ふふ、良かったわね」
「息子によくあなたの事を聞かれるんです。さっきまで私と知り合いだって言っても信じてもらえなくて」
『はは、まあこれで信じてもらえましたね』
「はい! ではこれで失礼します」
ラバーツは家族で楽しそうに歩いて行った。
皆んなで街の中心にある大きな広場に来ると人はさらに多く人だかりが出来ていた。
「あれは! 聖女様が来たぞ‼︎」
エレナの方にも人がやって来る。
普段は街の一部しか行かないのでエレナの知らない人も多かった。
すると聞いた事のある声がエレナの耳に入ると声のする方へ振り向く。
「これは聖女様‼︎ お久しぶりです!」
そこにいたのはリンドラ王国の王女ファルナレスだった。
後ろにはアトスと知らない中年の男がいた。
『王女様じゃないですか。お久しぶりです、それにアトスさんも』
「アシュレイ殿の屋敷に行ったと思ったら急に居なくなってしまうんですものビックリしましたわ」
『すいません』
「また時間がありましたら是非リンドラ王国に来てくださいね」
『はい! まだやり残した事もいっぱいありますし』
話が一区切りついたところでマイナが出て挨拶をした。
「ファルナレス王女ご機嫌麗しゅう。マイナと申します」
「あなたは! ハーデルト王国のマイア王女ではないですか!」
ファルナレスは驚いた様子でエレナとマイナを見た。
『今マイナ王女と一緒に旅をしていまして』
「そうですか、マイナ王女は凄腕のマナ使いと聞きますから」
『マイナ王女には助けられています』
「あら、お互い様でしょ?」
エレナはセリアをファルナレスに紹介した。
『後今一緒に旅をしているセリアです』
「あ、あのよろしくお願いします」
ファルナレスはアシュレイの件は報告されておりセリアの事も聞いていた。
「あなたはアシュレイ殿の……話は聞きました。良かったですね」
「はい、ありがとうございます」
「聖女様、初めましてこの街を治めていますガイザーと申します」
ファルナレスの後ろにいた男性が前に出てきて挨拶をした。
『初めましてエレナです』
「噂はよく聞いております。先日はこの街を救っていただきありがとうございます。本当ならばもっと早くお礼に伺う予定でしたが魔物による被害の対応に時間がかかりまして」
エレナは街の偉い人がいたら花火の許可を貰おうと思っていた為ガイザーに頼もうかと考えた。
(この人にマナの花火を打つ許可を貰っとこうかな)
『あの、この祭りの締めは何か行われているんですか?』
「最後はこの広場で音楽団による演奏で終わりますな」
『実は私の故郷で行うものを披露したいのですがダメですかね?』
「おお‼︎ それは面白いですな! では音楽の後お願いします」
「それではフィナーレの演奏を特等席で観てもらえるように席を用意しましょう」
『それは嬉しいですね』
「フィナーレが近い時にこちらへお越しください」
『ありがとうございます』
「私も楽しみだわ‼︎ 私はまだ挨拶に行かないといけないのでフィナーレの際にまた会いましょう」
『はい、ではまた』
「おい! 聞いたか‼︎」
「ああ! 聖女様が何やら凄い事をしてくれるみたいだ!」
「皆んなに知らせてこよう!」
そうして街中にエレナが凄いものを披露する事が広まっていったのだった。
夜も遅くなってきたので子供達はシスターとステラの家族と一緒に孤児院に帰って行った。
その際エレナは寝る前にバルコニーで空を見るようにと伝えた。
もうすぐフィナーレも近い時セリアとマイナの3人で広場の近くに移動した。
そうするとガイザーからの使用人が来て広場にある建物の中に案内された。
そこは豪華な内装に広場が一望出来る部屋だった。
コンコン
ドアが開くとメイドの格好をした女性が飲み物を出して部屋を出た。
『これで一息つけるね』
「ええ、良かったわ。あの人混みじゃあ流石にキツいわね」
「そうね、祭り楽しかったね!」
『うん、また来年も皆んなで来ようね』
フィナーレが始まったのか辺りは静かになって音楽が始まった。
エレナは大きな椅子に座るとセリアとマイナは誰もいないのでくっついてくる。
「やっとこう出来るわね!」
「そうね!」
ふたりは今までの分を取り戻すかのようにエレナに抱きついて甘え幸せを感じていた。
『ふたりとも……まあ嬉しいけど』
ゆっくりしていると音楽も盛り上がってきたところでドアがノックされる。
「聖女様、ガイザー様の所まで案内します」
(さてやるか!)
広場にいたガイザーの所へ案内される。
「おお、お待ちしていました」
『では始めますので少し離れて下さい』
エレナは広場から夜空が見やすい方向に向かって次々とマナを飛ばしていった。
ドォーン!! ドォーン!!
夜空には花火のようにカラフルで大きな光の球体がついては消えていく。
周りではそれをうっとり見る者や子供のようにはしゃぐ者、恋人と一緒に感動して見ている者様々で30分くらいかけて50発を打った。
サラはユギルと寄り添いながら座って黒い空に咲く花火を見ていた。
「綺麗ね」
「俺はお前が打つのを一人で見ていたからなそれをこうしてふたりで見られるなんて不思議だ」
「エレナには頭が上がらないわ、あの子にはどれだけのものを貰ったか……」
「そうだな俺もだ」
「へぇ〜それなのに平気で訓練の時蹴って吹っ飛ばしたりするなんて、あなたも鬼畜ね」
「う‼︎ そ、それはだな」
「あはは! でも何でかな、その時あの子がやんちゃな男の子みたいに見えるのが不思議で可笑しいの!」
「はは! 確かにな」
ふたりは笑い合いながらも続く花火を見ていた。
エレナは特大の1発を最後に夜空に咲かせ盛大に祭りの幕が下りたのだった。




