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第32章 親子の絆

「私は昔に滅んだとされたラーガ一族の血を引いています」


 アシュレイは皆が部屋に集まると開口一番にそう言った。


(驚いた! まさかラーガ一族が生き延びていたなんて……)


 隣のユギルも珍しく驚いた顔をしていた。


 アシュレイは話を続ける。


「私の祖父から聞いたのです。祖父のお母様の名はクレイ、亡きラーガ一族の族長の娘だったそうです」


 ユギルは信じられないといった顔をして呟いた。


「サラの妹か……」


(サラさんの……そうかボードル遺跡に向かってたのは妹さんだっのか)


「クレイ様は遺跡に向かう途中で崖から落ち記憶を無くされていたそうです。その時ここの領主だった夫婦に助けられ幸せに暮らしていたと聞いています」


『ボードル遺跡に何も無かったのはそもそも行っていなくて生きていたから……』


「祖父とそのお父様はクレイ様に言われたそうです。ある日突然記憶が戻ったと、そこでラーガ一族の生き残りであると知ったそうです。そしてクレイ様は死ぬ前に結晶石となり祖父に託したのです」


 話しが終わるとユギルは口を開く。


「クレイは自分の結晶石を代々守らせていたのか……」


『じゃあ、家宝ってまさか』


 アシュレイは手に持っていた木箱を開けるとそこには虹色の結晶石が光っていた。




 エレナはアシュレイにここまでの事を話した。


「そうですか……祖父から虹色の結晶石を集める者が現れた時には家宝を渡し力を貸すように言われています」


 アシュレイは箱をエレナに渡した。


 エレナは結晶石を手に取るとマナを流した。


 ブァっと結晶石から光が溢れサラの結晶石に流れていく。


 白銀の結晶石は黄金になりクレイの結晶石は粉々に砕けていった。


「姉さん……ありがとう」


 少女の声が聞こえてくる。


『これで後1つ……』


「私達はあなたの力になります。何なりとお申し付けください」


 エレナは笑顔で答える。


『じゃあとりあえずポーラトールへ行きましょうか』





 私はクレイ、虹色の結晶石になって何年経っただろう。


 しかしその時は来た。


 誰のか分からないが優しいマナが流れてくると私は解放された。


 ここはどこだろう?


 白い世界に私は14歳の頃の姿をして立っていた。


「クレイ……」


 昔よく聞いた声……見ると懐かしい人がそこに立っていた。


「姉さん……」


 何年振りだろうか私は涙を流していた。


「サラ姉さん……ごめんなさい私」


 サラ姉さんは嬉しそうな顔をしていた。


「話は聞いていたわ、よかった……あなたはいつも諦めたような顔をしていたから……」


「姉さんだって幸せになる事が出来たのに! あの男の人と幸せに暮らせたのに……何で」


「私は自分の幸せよりも使命を取ったのは決めた事なの」


「本当に強情な人ね、姉さんは……私は一人の女性として幸せな人生を歩む事が出来た。もう未練はないわ、姉さんこの力をお願いね」


「うん」


「じゃあ行くね。最後に会えてよかった」


「さよならクレイ……」


「姉さん……ありがとう」





「もっと弓を真っ直ぐに!」


「はい!」


 ポーラトールの教会の裏手の広場ではユーリアがセリアに弓を教えていた。


 20日前の事だった。


 2人の女性冒険者が教会に現れるとエレナから孤児院の子供達に教育をして欲しいと頼まれたと言った。


 その頃セリアはエレナの旅について行きたいと思っていた。


 待つのはもう嫌だったのだ。


 セリアは神父に話をしてその日からユーリアに弓を教わっていた。


 子供達はステラの家族が面倒を見てくれ余裕ができたので時間はありその時間はずっと弓を練習していた。


 訓練が終わるとユーリアがセリアに近づくとセリアを褒める。


「セリアちゃん凄いよ! センスあるある」


「ありがとうございます」


 その夜セリアはまた寂しいと思う様になってしまった。


(だめだ、強くならないと……私にはエレナがいる……)


 エレナの顔を思い浮かべるとスッと涙が頬をつたう。





 朝起きても暗い表情のセリアはそのままいつも通り教会の前を掃除していた。


 すると背後から誰かが歩いてこちらに来る足音がした。


 足音はしだいに大きくなりセリアの近くで止まった。


「セリア……」


 その声を聞いた瞬間セリアの目に涙が溢れ出る。


 懐かしい声そして大好きな声……セリアは振り向いた。


「お、お父さん……お母さん」


「セリア……ごめんなさい」


 セリアは涙が止まらない顔でふたりに飛びついていた。


 そしてただひたすら泣いていた……。


 アシュレイはセリアが泣き止むとペンダントをセリアに掛けた。


「これは!」


「そうだ聖女様が私達を助けてくれたんだ」


 そう言って後ろを見た。


 アシュレイが見た先にはエレナが微笑んでセリア達を見ていた。


「ありがとうエレナ……」


『約束……守ったよ』




 教会の一室ではエレナとセリアの家族が集まっていた。


 事の顛末を話し終えアシュレイとメアリナはセリアに謝った。


「すまなかった、お前に寂しく辛い思いをさせてしまった」


「ごめんなさいセリア……」


 セリアは俯いていた顔をあげた。


「もういいの、事情は分かったし私を変わらず愛してくれているから」


「ありがとセリア、また一緒に暮らそう」


 アシュレイはそう言ったがセリアは頷かなかった。


「……お父さん、私をエレナの旅に行かせて下さい」


 セリアはそう言って頭を下げた。


 エレナは一緒に行きたかったが危険な旅に連れて行く事に頷くことができなかった。


『セリア、僕はカダル王国に命を狙われているんだ危険な旅になる。出来れば安全な場所にいて欲しい』


「エレナお願い」


 アシュレイはセリアの所に行くとマナを流し始めた。


 セリアの周りに透明な膜みたいなものが浮かび上がるが徐々に消えていった。


 それを見たエレナはアシュレイがマナ使いだと分かった。


「私とセリアはラーガ一族クレイ様の血が流れているのでマナを使えるんです」


「え? お父さん私がマナを使えないって知っているでしょ?」


 アシュレイは首を振り話を続ける。


「クレイ様は記憶を取り戻した後ラーガの術を自分の子供と孫に伝えたそうです。私も父親から術を受け継いでいます」


 そう話すアシュレイはセリアが生まれた時の事を思い出した。


「セリアが産まれた時大きなマナを感じました。それは私をも超える程でした。その時私は危険だと思いました、まだ何もわからない小さな子が持つには大きすぎる力はまだ早い、そうしてセリアが15歳になるまで術でマナを封印する事にしたのです」


 衝撃の事実に驚くセリアはアシュレイの話をじっと聞いていた。


「聖女様、遅くなりましたが今セリアにかけた術を解きました。少しマナの訓練は必要ですが足手纏いにはならないでしょう……セリアを宜しくお願いします」


 アシュレイは頭を下げた。


『分かりました。セリアは僕が守ります』


「ありがとうエレナ、ありがとうお父さん」




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