第15章 魔物の襲撃
エレナ達はクルトの街を出るとランスが馬車をポーラトールへ向け走らせた。
馬車の中では女性陣がたわいのない話をしていた。
「エレナさんて本当に綺麗ですよね……」
メアはウットリした目でエレナを見ていた。
『え⁉︎ 何? 急にどうしたの?』
急な褒め言葉にどう答えたらいいか困っているとシェリーも賛同する。
「そうね、街の人の反応が凄いもの。まるで女神様が地上に降りてきたかのような騒ぎになっていたわ」
シェリーもエレナの顔をじっと見ていた。
「その上料理も上手だし、マナも使えて性格もいい!」
『ありがとメア』
「知ってます? おばさま達を助けた事が広まって聖女エレナと言われてるんですよ!」
『そういえばそう街の人が呼んでたね』
「そのうち貴族とか王族から求婚されるんじゃないですか?」
『え〜やだよ! そんなの興味ないもん』
エレナは貴族にはなりたくなかった。
束縛されて自由に料理ができないのは耐えられないからだ。
「へぇ〜そうなんですか」
『そうそう皆んなで仲良くゆっくり暮らしたいからね』
やがて馬車はポーラトールの街に着こうとした時ランスの叫ぶ声がエレナの耳に入った。
「大変だ! ポーラトールの街から煙が上がっている‼︎」
『みんなはここで待ってて!』
エレナは素早く馬車から飛び降りると身体強化を使い街へ向かった。
街に着くと多くの人が街を出ようとエレナと逆の方向に走っていた、入り口は人が溢れ混乱状態に陥っていた。
中に入れなそうなのでエレナは思いっきりジャンプして塀を登り街の中に侵入した。
『逃げ遅れた人を探さないと……』
エレナは音のする方へ走っていくと戦闘音や悲鳴や怒号が街中に鳴り響いていて物陰に隠れていた人に声をかけると震えながら魔物が何体か街に侵入したと言った。
ガン‼︎
「よし! 連携を崩すな‼︎」
大きな音と声が聞こえたのでそこに向かうと2メートル位のトカゲの様な魔物2体と冒険者達が戦っているのを発見した。
そこでは以前PTに誘ってきたアステシアとユーリアも戦っていた。
エレナに気付いたアステシアが大きな声で叫んだ。
「エレナ! 奥にも魔物が入っていったんだ! ここは大丈夫だから行ってくれ!」
『分かりました!』
(あの人数なら大丈夫だろう……)
「キャアー‼︎」
女性の甲高い悲鳴を聞くとエレナの中に激しい焦りと動揺が広がった、それはセリアの声だった。
『セリア‼︎』
セリアが魔物が街に侵入したと言う声を聞いたのは洗濯をしている時だった。
急いで教会に入り神父とシスターの元へ向かい子供達を避難させる為、皆で外に向かった。
「早く教会の地下に行くのよ!」
大きい子供にそう言ってから小さい子供達の元へ行きシスター達が抱き上げ教会に入っていく。
セリアは残っている子供がいないか確認していた。
最後の子供が走って教会に入るのを確認すると自分も教会に向かった。
ドン‼︎
「きゃあ!」
何者かに後ろから衝撃を受け倒れた。
振り返ると自分の体の3倍はある頭にツノが生え大きな牙を持つ巨人が立っていた。
セリアは恐怖のあまり体が動かず声も上手く出ずに魔物が近づくのを見ていた。
(エレナ助けて‼︎)
今クルトの街にいるだろうエレナの名を心の中で叫んだ。
エレナは教会の前でセリアがで魔物に襲われそうになっていたのを見ると無我夢中で走っていた。
『セリアー‼︎』
マナを溜めながら魔物に突っ込み氷漬けにするとセリアの元に駆け寄り抱き起こした。
『大丈夫か! セリア!』
恐怖に震えるセリアはエレナの言葉に頷いた。
(無事で良かった……もしセリアに何かあったらどうにかなってしまいそうだ……)
エレナはセリアのことが好きだったが女の子の体になった時から恋愛は諦めていた。
女性を好きになっても辛いだけだと扉を閉めていたのだったがこの瞬間その気持ちが再び湧き上がりエレナはどうしようもなく複雑な気持ちになっていた。
「エレナ……」
セリアの震えが止まらずエレナは抱き寄せて落ち着かせた。
『間に合って良かった』
「怖かった……」
セリアはエレナに抱きつきしばらくその状態でいた。
『ここは危険だ、早く教会へ行くんだ』
セリアが動けそうなのをみてエレナは悲鳴が上がる方へ行こうと立ち上がった。
「気をつけてね……エレナ」
『すぐ終わらせて美味しいご飯作んなきゃね」
その後エレナは街にいた魔物達をいかずちを降らせ撃退していった。
その戦いぶりを見ていた住民はエレナを救世主と呼び称えた。
魔物が片付けられた頃ランス達も街に着いていた。
エレナはランス達と合流すると宿屋に部屋をとり中で休んでもらう事にした。
ちょうどその頃冒険者ギルドの職員が来てギルドへ来て欲しいと言われたので向かうことにした。
ギルドに着くと奥の部屋に通された。
「魔物を何匹か倒してくれたそうだな! 助かった!」
ギルド長のゼンはエレナを見るなりお礼を言った。
『こういう事はよくあるんですか?』
「いや聞いた事がない」
(どういう事? 何か異変があったのかな)
「だが最近魔物を普段見ない所で見たと言う報告が幾つか来ていたんだ、何か不穏な動きがあるのかもしれん、さっき警備に監視を強化するように頼んだところだ」
『それがいいでしょうね』
「それよりだ、バルト村の重傷者を治療したというのは本当か? こちらにも噂が流れていてな」
『まあ必死だったのでまた出来るかは分かりませんが』
(あの時、虹色の結晶石の中の人が治してくれたんだよな……)
「……本当にお前は何者なんだか」
エレナはその後馬車と護衛のお礼を言って宿屋に帰っていった。
ステラ達とエレナの部屋で夕食をとり各自部屋に戻って行った後、窓から夜の街並みを眺めながら考えていた。
(バルト村といい今回の件、何かおかしいな……)
エレナは何か後ろで気配がするのに気付くとバッと後ろに振り向いた。
「久しぶりだな」
『ユギル……』
前に洞窟で出会ったユギルがドアの前に少し微笑みを浮かべて立っていた。
『やる事があるって言ってたけどもう終わったの?』
「いやまだこれからだ、ちょっと調べものをしていたんだ」
『ユギルはあの洞窟で何をしていたの? 昔滅んだというマナ使いの一族の人なの?』
エレナはゼンから聞いた昔に滅んだマナ使いの一族の話からユギルが何者なのか気になっていた。
「そうだな……少し話が長くなるがいいか?」
ユギルはそう言って椅子に座る。
『うん』
エレナもベッドの上に座った。
「俺は100年前に生きていた冒険者だった」
いきなり非現実的な話にエレナは戸惑うがあの洞窟での事を思い出すと信じない訳にはいかなかった。
ユギルは100年前のことを話し始めた。
「ある日魔物と戦って深手を負った俺は森の中で意識を失い倒れた。
意識を取り戻すと俺はベットの上に寝かされていたんだ。
そこへサラという族長の娘がやって来た、マナで俺の傷を治してくれたそうだ。
俺は恩に報いたいともう村から出ないと約束してそこに住み着き働いていた。
その人達は皆マナを使っていて噂で聞いていた大きなマナの力を持つ[ラーガ]一族だと知った。
特に長とその親族の力は強大で色々な術を持っていた。
それから1年もした時か村人が何者かに襲われたのは……
村人が集まって会議が開かれた。
「カダル王国だ!あいつらまだ俺達を滅ぼそうと企んでるんだ!」
カダル王国は何度か一族に仲間になるよう接触して来たがこれを拒み人里離れたこの地に逃れてきたそうだ。
「他の国に取られると脅威になると思い滅ぼしにきたんだ」
結局最後は族長の一言で違う場所に移動すると決まった。
その準備をしている時だった魔物の集団が里を襲撃してきたのは。
逃げる途中でカダル王国の人間が待ち伏せしていて襲ってきた。
その時俺は気付いたんだ奴らは何か特殊な方法で魔物を操ったか誘導して里を襲わせたと。
俺はサラと村人3人でこの地に逃げ延びた。
追手も何百人といて森の中に入ったが囲まれて逃げ場のない状況に追い込まれていた。
サラは一族の力が滅ばないように事前に家族で約束をしていたようだ、それは自らを結晶化し力を守る事。
一緒にいた者も志願して結晶化し魔物に姿を変え洞窟の守護者として守り続けた。
俺はサラに術を施してもらった。
肉体を封印していつか誰かに復活させてもらえるのを願ってな」




