第13章 虹色の結晶石
医師に連れられた病室に入るとベッドが2つ並んでいた。
ベッドにはまだ若そうな男性と女性が寝かされうめき声を上げていた。
(この2人がステラの……)
「お父さんお母さん!」
ステラは必死に呼びかけているが苦しそうな表情をするだけで返事がなかった。
エレナは泣いているステラを抱きしめて言った。
『大丈夫だよきっと元気になるから』
メアにステラを任せると医師に両親の事を聞きに向かった。
医師のいる部屋に重苦しい空気が流れているのが入った時から感じていたエレナは覚悟を決めると医師に話を聞いた。
『ステラのご両親はどうなってしまうんですか? 治るんですか?』
医師に問い掛けると苦渋の表情を浮かべた医師から残酷な事実がエレナに告げられた。
「すいません残念ながらもう打つ手がなく……」
『そんな!』
「あの2人は魔物に襲われ多くの血を流し内臓も損傷しています……もって数日かもしれません」
『何か方法はないんですか?』
「ハーデルト王国にマナを使い重傷者を治せる人物がいると聞いたことがあります。しかしできたとしても間に合いません」
エレナは重い足取りで医師の部屋を出るとバルト村の人達がいる部屋に戻った。
部屋に戻るとステラは泣き疲れたのか目を赤くしてソファーで寝ていた。
メアがエレナに気付くと近づいて話しかけた。
「そういえば聞いてなかったわ、お名前は?」
『ああ、言ってなかったですね、エレナです』
「エレナさんこれからどうするんですか?」
『ステラのご両親を治す方法を探します』
「でも……」
『諦めたくないんです絶対に』
「そうですねごめんなさい私……」
メアは俯いて涙を堪えていた。
『ステラをしばらく預かって貰えませんか?』
「はい、エレナさん……どうかおじさまとおばさまを助けてください」
メアは涙を堪えきれず泣きながらエレナにすがりついた。
しかしエレナは治す方法が分からず首を縦に振ることは出来なかった。
エレナは病院から宿屋に戻ると椅子に座りどうマナで治療できるのか考える事にした。
エレナはご飯を食べるのも忘れ部屋に籠り自分の手に付けた傷をマナで治す方法を模索していた。
その結果マナで血を作り傷を塞ぐ事は出来る様になった。
(後は内蔵の修復……)
エレナはハッと目が覚めて顔を上げた。
夜通しマナを使っていたせいでいつの間にか眠ってしまったのだった。
(まだ内蔵の修復方法が分からない……医者だったら分かるのかな……)
何も医療の知識がないエレナに大きな壁が立ちはだかっていた。
次の日も一日中治療方法を考えていたが解決策を持つに至らなかった。
そしてとうとうその時が来てしまう、夜も更けてきた時だった。
ドアが大きく叩かれメアの声が響いた。
「エレナさん!おじさまとおばさまの容態が……」
寝不足でやつれた顔を叩きエレナは急いで病室に向かうと医師とステラがいた。
ステラは泣きながら母親の手を握っていた。
(もう時間がない! やるしか……)
『皆さんこの部屋から出て貰えませんか? マナでの治療をやってみたいんです』
エレナはそう言って皆を部屋の外に出すとドアを閉めた。
ベットに苦しい表情で唸る二人に呼びかける。
『ステラにはあなた達が必要なんです! 頑張って下さい!』
(まずは血を……)
二人のベッドを近づけ両手で触れる様にすると両手からマナをふたりの体に流していく。
そしてマナを血に変え切り傷や噛まれた跡を塞いでいった。
かなりマナを使ってしまい体が重くなる。
(く! 昨日からマナを使いっぱなしだったのが効いているかもしれない……)
そして内蔵を修復する所まで来てしまうとエレナは意を決して治療を試みようと二人のお腹に手を乗せてマナを送り込もうとするが一瞬意識を失いそうになりガクっと崩れ落ちる。
(もうマナが……)
ふとネックレスの先にあるキラリと光る虹色の結晶石が視界に入った。
すがる思いでネックレスにマナを流しながら祈った。
『結晶石に眠るマナ使いさん……お願いだ俺に力を貸してくれ』
すると結晶石からマナが噴き出しエレナの体に流れ込んでくる。
「力を貸してあげるわ」
何処からかそう声が聞こえた。
溢れ出るマナが2人に流れて行くとしばらくして二人の息づかいが安らかなものになっていた。
(治してくれたのか?)
バタン!
エレナは気を失いその場に倒れた。
部屋の外では医師、メア、ステラが扉の前でじっと座り祈るようにして待っていた。
やがて扉の隙間から虹色の綺麗な光が漏れてくるとメアはその綺麗な光に見入っていた。
するとバタンと音がしたのでメアは驚き中に入って行った。
するとベットの間でエレナが倒れていた。
「エレナさん‼︎」
メアは急いで駆けつけるとエレナを抱き起こした。
その美しい顔が死人のように青白く見える。
(こんなになるまで……やつれてまで頑張ってくれたんだ)
そう思うとメアは涙が止まらなかった。
医師はふたりの呼吸が安定しているのを見て体の状態を観ると完治していた。
「まさか……何て事だ、二人とも傷が治って容態も安定している。看護婦を呼んでこなければ!」
医師は急いで部屋を出て行った。
涼しい風が顔を撫でる。
ゆっくり目を開けると白い天井が見えた。
『……ここは病院かな』
(体も少しだるいな)
そう思っているとガチャっと扉が開く。
エレナは体を起こすとステラとメアが視界に入った。
「エレナお姉ちゃん!」
「エレナさん!」
ふたりとも満面の笑顔に瞳を潤ませエレナに駆け寄りガバッと抱きついた。
「お父さんとお母さん元気になったよ! ありがとう」
「本当に……ありがとうございます」
(そうか助かったのか……ありがとう)
エレナは泣いている二人を見ながら首にかかる結晶石にお礼を言った。




