表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/175

第12章 バルト村の生き残り

『クルトの街にはどのくらいに着く予定ですか?』


 馬車の御者をヒースが、中に他のふたりが乗っていたので質問するとキリィが答えた。


「そうですね……日が暮れる頃には着くかと」


 エレナは男ふたりがエレナをチラチラと見ているのが視線で分かった。


 キリィと目が合うと申し訳なさそうな顔をしてエレナに話しかける。


「すいません、あまりに美しくて……この依頼なんと冒険者全員が応募したんですよ」


 キリィは笑いながらこの依頼の裏話を始めると隣のアレンも腕を組んで話に加わった。


「それを勝ち取った俺たちはもう夢のようだよ! こんなチャンスはそうそう無いからな、皆んなの羨望の眼差しはそれはもう気持ちよかったな」


 しばらくすると馬の御者をヒースからキリィに代わる。


 『お疲れ様です』とヒースに声を掛ける。


「ああ、嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだ」


 ヒースは涙を浮かべて体を震わせていたのを見てエレナはどん引きしていた。


(大丈夫かな? ステラが心配そうな目で見てるぞ)


 エレナはそろそろ昼時かなと思いバスケットを取り出して言った。


『そろそろお昼にしませんか? 良かったらこれをみんなで食べましょう』


 ヒースとアレンはその言葉を聞いて驚いた表情でエレナを見た。


「も、もしかしてエレナさんの手作りですか?」


 ヒースは身を乗り出して真剣な顔で迫る。


『そ、そうですけど』


(ふたりとも顔怖いよ)


 するとアレンは大きな声で御者をしているキリィに声を掛けた。


「おいキリィ!エレナさんの手作り料理が食えるぞ! 早くどっかに馬車を停めろ!」


「なんだってぇ‼︎」


 外からキリィの叫ぶような声が返ってくる。


 やがて馬車は見晴らしのいい場所に停められた。


 周辺は色とりどりの花が咲き、川の流れる音が心地いい場所だった。


 男3人は座るとピクリとも動かず待っている。


 目はエレナの手にあるバスケットに向いていた。


 エレナは料理を次々と出してシートの上に並べた。


『あ、ど、どうぞ食べて下さい』


 すると男達は凄い勢いで食べ始めた。


「うおお、美味え! 何だこれは!」


「エレナさんの料理を食べれるなんて俺はもう死んでも悔いはない!」


「今日という日を俺は絶対忘れないぞ、一生の自慢にする!」


(だいぶ大袈裟な事をいってるけど美味しいみたいで良かった)


 エレナは3人が幸せそうに食べる姿を見て自分の料理がこの世界でも通じると思って孤児院の皆の反応も良く更に自信がついていた。



 それからクルトの街に着いたのは予定通り日が暮れる頃だった。


 街に着いたエレナは宿屋に行き部屋をとった。


 バルト村の生存者についてはヒースらが「調べてくるから宿屋で待っていて下さい」と押し切られたので夕食を食べた後部屋に戻り情報を待っていた。


 ステラはベッドで気持ちよさそうに寝息を立てていた。


 コンコン


 しばらくベッドの上でウトウトしているとドアをノックする音が聞こえてドアを開けるとアレンが報告をしたいと言うので下の食堂で話を聞くことにした。


 食堂には他のふたりも集まっていた。


「どうやらバルト村から逃げ延びて来た人達は今病院に全員いるみたいだ」


「軽傷から重傷人までいるとか」


「面会は今日はできないそうなので明日来てくれとの事です」


『ありがとうございます』


 3人は得た情報をエレナにそれぞれ報告して帰っていった。




 次の日の朝エレナとステラは朝食を食べると病院へと向かった。


 病院に着くとエレナは受付の看護婦に声を掛けた。


『すいませんバルト村から来た人達に会いたいのですが』


「分かりました、こちらです」


 看護婦に病室まで案内されたエレナはステラの両親がいることを願ってドアを開けた。


 ステラと病室に入ると部屋は広く幾つもベッドが置かれていた。


「ステラ!!」


 エレナより少し年下くらいの女の子が驚いた声で叫ぶと周りにいた人も驚いた声を上げていた。


「ステラじゃないか」


「生きてたのか!良かった」


 中にいた人達は10人くらいで年寄りや中年の夫婦が殆どだった。


 女の子は泣きながらステラの元へ来て力強く抱きしめた。


「良かった……」


「メアお姉ちゃん」


 エレナはステラの知り合いに会えた事にホッとしたが一番合わせたい両親が出てこない事に胸がざわついた。


(両親はここにいないのだろうか?)


 メアは今までで見た事もないほど綺麗な顔をした少女を見て緊張した表情で話しかけた。


「あの、あなたは?」


 エレナはメアにステラの出会いからここに来るまでの話をした。


「そうですか……ステラを助けてくれて本当にありがとうございます。私、メアっていいます、ステラの従姉妹なんです」


『ステラのご両親はここにはいないのですか?』


 エレナの言葉はその場をシーンと静まり返らせた、そしてメアは俯いてしまった。


 エレナはそれを見て嫌な予感がしてくる。


(いないのか? それともまさか……)


 俯いたメアが辛そうな顔で話し始めた。


「ステラの両親は違う部屋にいますが重傷を負ってしまって……」


 メアは涙を流しながら話を続ける。


「村が襲われた時ステラがいないのでおじ様とおば様が探しに行ってしまい魔物に襲われたんです。幸いその時いた冒険者に助けられたのですが」


(何て事だ……)


『……その病室に行けませんか?』


 エレナの頼みにメアは頷くと医師に事情を話して許可をもらいステラを連れてステラの両親がいる病室に入った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ