第四十話
「ですね。なにせあのような小柄な者でさえ、ああして大の男数人を引きずって歩ける腕力を持っているのですから。
……ところで、どうしてあの粗野五人衆は、あの者を……っと、」
お、かなり近くまで、……寄ったな、よく寄ってこれたな。わりと元いたとこから距離あるのに……
「だからぁ! そうやって引っ張るの、やめてって言ってるでしょお! わたちはただ、おかいものをしにきただけなんだからぁ!」
「いや……もう……どっちかってと、こっちが……んぐ、いいや、そうじゃねえ!
いいからさっさと来い! てめえを、とある物好きなご貴族様がご所望なんだよ、もう前払いの報酬受け取ってるから引くに引けねえんだよ、おとなしくしろ、この──」
──おい。少年、店やってる二人に声かけろ。
多分だが。大通り、もうすぐまずいことにな「出来損ないの絵画がぁ!」……ああ、遅かったか。
「──────………、
へぇ……?」
べきん。と。それはまるでよく乾いた木の枝をへし折るかのような、そんな軽く、しかしよく響く大きな音。
「あ……?」
しかし当然。こんな町中にそんな薪になりそうな木材など落ちているはずもなく。ならばこの音が起きた源はといえば──
「……ああ、ごめん、ごめんねぇ。
つい、力を、こめすぎちゃった」
──当然。人体における、文字通りの骨子以外にあり得ない。
「あ、ぎゃあ、ぎぃ……!」
「でもさ、でもさあ。おじちゃんも、悪いんだよお。
だって、いま……わたしのこと、ばかに、したでしょおぉ?」
小さな子供が話すような、ちょっと舌ったらずでつたない、いかにも幼いその口調。それは先程までとなんら変わりない。
けれど、……怒気。あるいは、もはや殺気と呼んで差し支えない濃密な威圧が、口調と合わせたような、ぐずぐずに甘ったるくて幼稚な音調に乗せられていて……ああ、こりゃダメだ。
もう、あいつらは、──どうあがこうと、ここで終わる。
「おかあさんからさぁあ? 言われてるの、いわれてたの。その、間人たちを、おもいっきり……ぶじょく? だっけ、する、それを、わかってていったやつはぁ……
殺しても、いいんだ、って……!」
ぶん。未だ握りしめていた哀れな男の手首を、そのまま、それこそ子どもがおもちゃを振り回すような粗雑で、身体ごと思い切り振り上げ、
「あ"っ……」
「えい」
びぢゃん。叩きつけられる、と、同時に、とても嫌な、けれど個人的にはとても慣れている水音と、あと肉と骨が、それこそ肉団子みてーにぐちゃぐちゃに砕ける、やけにやわらかい音が辺り一面に、聞こえた通りの結果を伴って、広がる。
──それが、この場における、局地的戮殺。その始まりの合図だった。
もっとも、それはひどく盛大なくせに、これ以上無いほどに醜怪なそれであったが。
「ああ、あああああああああ"あ"!?」
「ぐぎゃ、あああああああ"あ"あ"!?」
「ぎゃ、があ"あ"あ"あああああぶ!?」
死ぬ。死ぬ。死んでいく。けなした男のみならず、その仲間と思われる彼らも、また、同じような目に逢わされて。
ああ、いや、だが、同じような目、とはいったが、それはやりかたが似たり寄ったりってことで、つまり大抵は、その怪腕で首だの頭だの胸だの、そういった人体の急所をぐしゃっ、と握り潰している。
あの幼い印象からは信じられないほど、的確に、まるで慣れているとでもいった流連で、一撃のもとにひとをころしている。
やっばい。なにあれ。なにあの力。いや、俺も同じこと出来なくはないけど、それでもあんな一つなぎの動作みたいにさらっとはやれねえよ。こっわ……




