第三十六話
やはり大通りがいいか、いやでもあまり人気があると正体が、けれどこの量を売り切るには、やはり──なんて、けっこう建設的な意見が飛び交うなか、俺はぼぅっと、昨日の一連を思い出していた。
や、別にそんな、あの出来事とその対処に不満があったわけじゃない。むしろその逆──ああも見事、比較的遺恨も無くあの事態を納まった幸運と手管に、なんだろう、少しだけ高揚を感じてしまっていた。
つまるところ、自分達はうまくやったもんだ、と、わずか自慢すら抱きながら、噛み締めるように何度も思い出しては、自分でも気持ち悪いなぁと思えるくらいに顔を綻ばせていた。
それに。それにだ。昨日の夜の、あの先達らしい助言。指導。昔も似たようなことはしてきたが、どれも大体切羽詰まった、いわゆる必要に迫られてのものばかりだったし、ああしてきちんと、余裕をもってもったいぶれたのは、うん、初めてのことだった。
ので、ちょっとだけ。ちょっとだけ。おっさんはおっさんらしくなく、それこそ珍しく浮かれ気分だったんだ。
だから、普段なら絶対に揺すられない、万能感、なんて感情が、身体全体をふわふわと包み込んでいたし……まあ、要するに、今の自分ならなんでもできるんじゃないか、と、思い違ってしまっていたわけだ。
それが、どんな事態を招くかも知らないで……いや、薄々は気付いていたけど、それでももしかしたら、なんて根拠の無い、年不相応の自信と楽観で、無理に無謀へと、自らの身を向かわせてしまったんだ。
その結果──
「ほらぁ、だから言ったじゃない! あんたみたいなヤバイかっこした大男が店番なんて、だぁれも怖がって近寄ってきやしないわよ!
いくらあたしやアラゴさんがお客連れてきたって、あんたのその怪しい風貌見たら、みぃんな一目散に逃げてくんだもの……正直、それこそ商売上がったりだわ!」
はい……すいません……自分調子乗りました……もう二度とこんな、店番やりたいとか言いません……素直にはしっこに寄ってます……
「いや、別にそこまで言ってない……ていうかほら、あんたにはまた別の、面倒な客避けっていう役割があるでしょ。そんなとこにいないで、露店のとなりあたりでにらみ、利かせててよ」
ああ、うん……そうな、そうね。確かにこの風体じゃ、それが一番妥当か……よし、うん、よし、切り替えていこう。
「うん、頼むわね。店番と会計は、あたしとアラゴさんが交代してやってくから、あんたはそこでその不気味と威圧をそこで撒き散らしててちょうだい」
不気味、威圧……いや、うん、間違ってないし、そりゃ納得もできるけどさぁ……こう、もう少し柔らかく……
「あ、ライトさまもこちらに来たのてすか。
いやはや、ぼく、こういった商売とやら、あまり向いていないようで、先ほどマラヤさまに槍持って立ってなさい、と、はは、言われてしまいましたよ」
ああ……確かに……あの、一回金勘定任せたとき、こう……すごいまごついて、けっこう相手待たせちゃったしな……まあ、今まで槍振りしかしてこなかったから、しかたないっちゃしかたないが……




