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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第三十五話

 俺も……まだ、それほど多くは気付けちゃいない。だから、きっと、まだまだ(・・・・)って、そういうことだよな。


「強さは、一つじゃ、なくていい……」


「ああ。あるいは、その複数の強みを束ね、たった一つの強さに変えられるやつを、きっと人は──英雄(・・)なんてご大層な肩書きで呼ぶのかもな」


 そうなってくると、結局、魔王を潰しただけの、俺を含めた勇者一行は、はは、結局ただの腕自慢ってことになんのか。それはそれで、ああ、なんとも肩が、軽くなるもんだ──


「そう、か……そういう、ものですか。


なるほど……なるほど……」


 噛み締めるように納得し、そして神妙な顔と声で、遠いなぁ、と、ぼやくように呟き、持った槍を、ぎゅっと強く握り締めた。


 こう、思ってはいけないのだろうが、思わず、微笑ましい、と、口の端がかすかに上向いてしまう。


 なんというのか。こう、少年って、騎士であろうあろうとするあまり、こうして感情っていうか、強い欲望ってやつ? をあまり表に出したがらないところがあって、俺はそこが大人びてるなぁ、きちんとしてるなぁ、でももう少しらしく(・・・)てもいいのになぁ、と老婆心ながら思っていた、のだが……うん。


 こうして、年頃(あくまで魔族基準で、だが)の少年らしく、こう、ただ無節操に強さを求める一面がある、とわかり……うん、うん、有り体に言えば安心した。


 そうだよな、やっぱこの世に生まれたからには、一回はそういう、なんだ、世界最強(・・・・)ってのに憧れるし、なんなら目指してみたい、とも思うよな……俺も昔はそう思って……あれ、思ってたかな……まあ思ってた事にしておこう、憧れは誰にでもあるものだからね。


 さあ、なら、きっかけは与えたし、そして彼も掴んでくれた……あとは彼しだい……ふふ、先達っぽいことができて、おっさんちょっと満足。


「存分に、けれど体に差し障りが出ない範疇で大いに悩めよ。おっさんは眠くなったから寝る、おやすみー」


 もぞもぞと、少しだけ足が突っかかるベッドに横たわり、ごろんと、未だ槍握って悩み続ける彼を、まさしく尻目に背を向けて、そのまま目を閉じゆっくりと眠りに






 それは、初めから、わかっていたこと、なのかもしれない。いや、かもしれない、なんて曖昧に濁して、自らの心を思わず守ろうとしてしまったが、結局のところ、どう言い繕っても、自分が、他ならぬ自分が、この最悪の事態を招いたことに変わりはなかった。


 けど、聞いてくれ。俺だってそんな、なにもこんな状況(こと)にしたくてしたわけじゃない、ないんだ。けど、でも、昨日の最悪をどうにか乗り切れたことで、心のどっかで、調子を乗り上げていた、のかもしれない。


 いや、そりゃ当初の予定では、俺は関わらないつもりだったさ、ああ、だったとも。でも、こっちだって、そうすることに、ちょっとばかしの罪悪を感じていて、だから少し、ほんの少しでもそれを拭うために、こんな……ううん、駄目だな、これ以上は、いやさとっくに言い分けがましくなってしまっている。もうこの際だ、はっきりと、何より自分に自覚させるためにも、ここでしっかりとこの最低最悪(できごと)を口にしよう。


 すなわち──


「商売の、店番は、こんな格好で、やるもんじゃないな──」





 それはほんの半刻ぐらい前のこと。施設も食事もそこそこの宿でそこそこの朝食を摂り終えた俺たちは、さて、どこで露店を始めようか、と、町をぶらぶらと歩いていた。

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