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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第三十二話

「それならば……名残惜しいが致し方無い。確かにただの親切でものを買い。そのあと使わずにただ倉庫に放っておくのは、きみにも、そしてその商品にも失礼だ。


ならば、ここは大人しく見送って、きみたちの商売が繁盛することを祈るほか、出来ることは何一つ無い──」


 いや、言っていることは立派だし、大人しく見逃してくれそうだから口には出さないが……なんでこいつ、いちいちくるくる回りながら、しかも文節でびたっと止まって言葉吐き出すの、なんかもう笑いこらえるのに必死で、おちおち聞いてらんないんだけど。


「それでは……商売の無事を、祈っているよ。ぼくはこれから、すべきことがたくさん見つかったからね……こうしてはいられないんだ!」


 言って、くるりくるりと歌劇のように、そして襟巻きつけたとかげの威嚇のように、一歩進むごとに派手な姿勢をキメながら、ぞろぞろと護衛(取り巻き)を引き連れて、酒場から大仰な仕草と動作で出ていくジルなんとかさんの背中……いや、中々背中見せないけど、まあ背中を、安全面から見えなくなるまで見送り……ふぅ。


 これでようやく、一難去ったってところか……やれやれ、ここが一息のつきどころだな。


 さあて……


「おう、マスター。厄介払いをしてやったんだ、ここの一角、ちょっとの間貸してくんねーか?」


 あとは、楽しい楽しい宿決めの時間だな?





 あれから、厄介者が満足げに立ち去ってくれたおかげか、俺たちの宿決めは、終始楽しく、そして建設的に、あれよあれよという間に決定し。


 そうしてそこからさらに酒場からのおごりで、たっぷりと美味いものをごちそうになり。


 それから。たぶん夕暮れかな? それぐらいまで、時間を食い過ぎて倒れかけた少年少女の世話と介抱に費やし──そんで、


 そんで、今。あらかじめ取り決めていた宿の一室で、少年と二人きり、することも無くぼうっと部屋の天井を見つめていた。


 本来なら、ここで荷物の確認をしたり、あるいは自分の武器の手入れをしたり、とかくまあ、明日に向けての準備をするもんなのだが、しかしどうにも、それらはほとんど昼のうちに済ませたものばかりで、そもそも武器に至ってはまるで存在しないので、手入れとかできようもない。


 ので、横で自身の得物の手入れをしている少年を横目に見ながら、しかし邪魔だけはしないように、じっと天井の木目の数を、ベッドに寝転んで数えていた。


 あー……暇だな……やること無いな……段取りとかもう、宿決めのついでに取り決めたしな……あと気になるっていったら、隣の部屋の女性陣ぐらいだが、まあアラゴさん気遣い上手いし、少なくとも問題は起きないだろ。


 ふぅ、と、まくら代わりに頭に敷いていた手を組み直し、……思わず、ため息。


 なんというかな……一度大きな山場を越えたっていう実感が残っているせいか、こう……もう、すっかり夜だってのに、目が冴えて仕方がない。


 傭兵だったころは、こんなとき、適当な男どもを引き連れて、そこらの酒場で夜が明けるまで飲み明かしたもんだったが、この場にいる、というか今回の旅連れの男ったら隣で槍の穂先を研いで、満足げに笑む少年のみ。さすがにそんな、大人の完徹(ばか騒ぎ)には誘えない。俺にだってそれぐらいの分別はある。

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