第二十八話
「大体、情けないとは思わないのか? 大方、どうせ親、いや家のすねを食い潰してのらくらと怠惰を貪っているのだろうが、はっ──その年頃で、その図体で、のうのうと、自分の足ですら立っていない人生を送っている……くく、ぼくであれば、いいや、おまえが言うところの高貴なるものであれば、ああ、こんな人生まっぴらだと、手に持った自分の得物で、自分の首を掻き切っていることだろうよ!」
止めたほうがいい。いいのだが、しかし、こうして言葉の槍でめった刺しにしなければ晴れない彼の気も、まあわかる。なのでここはほどほどに吐き出させてやるとしよう。というかここで下手に止めて、中途半端にしこりを作られても、……いや、どうせ後々俺がどうにかすることになるだろうから、まあ結局自分のためなんだけどね。
「な、なん……っ」
「悔しいか? ああ悔しいだろうな、こうして一方的に、見ず知らずのぼくにこうまで自分をけなされているのだ、いらだたないわけが無い。
だが、そこでなにも、例え感情からのそれでも反論ができない、というのは、ああ、おまえも薄々は、自身の態度や待遇とやらに、“このままではいけない”、などという、反省に近い自虐を覚えていたのだろう?」
うぐ、と。お貴族様の震える喉が、そのまま震えた音をわずかに鳴らす。
それははたして、暴言を浴びたゆえの立腹からか、それとも──
目の前の少年からの、もはや殺気に近い、濃密な怒気を孕んだ威しを、間近で受け続けた恐怖からか。
どちらにしろ、彼は彼の、暴言じみた正論に、たった一言さえ返すことすらままならず。
「はん、今度はだんまりか? この程度の舌鋒で、ここまでたやすく怯んでしまうとは、一体貴様、どれだけ甘ったるい人生を送ってきたのだ? そんなことで、本当に、どこのそれかはわからんが、自身の家の格とやら、引き継げると、本当に思っているのか?
だとすればお笑い草だな、ああ、これ以上嘲笑える滑稽は、そうそう無いだろうよ──まったく、そうして家のかさに着るばかりでは、貴様という存在を抱え続けなければならないその家こそが、ああ、可哀想で仕方がない……」
……っと、そろそろかな。そろそろだろ。いくら威しと重圧で無理矢理反論を封じているとはいえ、さすがに家のことまで持ち上がったんじゃ、相手も黙ってはいられない。
さて、両隣に立って、少年の応援を繰り返している、というか煽り立てている二人は放っておいて、さっさと仲介に入るか……
「さあ、自分の無様をたっぷりと実感したところで、先ほどの見苦しい言いわけを手早く取り消し、今度こそは飲み下してもらおうか。
──貴様だって、これ以上、自身の不憫を、掘り下げられたくはないだろう?」
「、っこいつ、いい加減に「はいはい、お互いそこまでそこまでー」っ……!?」
「それ以上はただの暴力沙汰になっちまう。そうなったら、一体なんのために腕相撲なんて平和な勝負にしたのか、その意味が失われる……さすがにここまで来て、それはちょっと気が重いんでね……
ここからは。余計な口を挟ませてもらうとしよう」
間に挟まり、両手を二人の目の前に。それだけで意図を理解してくれたのか、そこから互いの声が漏れることは無かった。
よしよし、ひとまずは成功。あとは……




