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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第二十六話

 そして、なにより──ライトさま。あのかたも人間。で、あるはず……肌の色や、その目のかたち、特徴。(おも)だった人間のそれとほとんど一致している。まず間違いない。


 異常であるのは、その戦闘の総合力。確か自分では、雇われ兵を長年続けていたゆえの経験と知識だと(おっしゃ)っておられたが、しかしたったそれだけで、果たしてあの、いくら戦闘要員が壊滅していたとはいえ、まず魔族(我ら)ても、その討伐は不可能であろうあの大蛇を、いともたやすく仕留めきれるだろうか……?


 自分自身、そう人間を見てきたわけではない。いや、まったくと言っていいほど、というかじっくり見たのはあのかたが初めてだ。


 だが、それでも、その実力が、やけに英雄じみていることだけはわかる……魔族の中にも、あれほどまでの実力者は、はたしてそうそう見たことが無い。


 加えて、本人は魔を一切使えない、と言うではないか。それであの力。あの技。あの耐久。正直言って、どれほどの才覚と環境と、そして努力を噛み合わせたのか。想像するだに、その過酷な過程に震えてくる。


 思わず、別の種族の血でも入っているのか、と疑ってしまうくらいだ。あの巨大な体躯、鋼よりも硬い筋肉、そしてそのくせ、ひどく優しげな、ともすれば少年にも見えがちな(いや、まあ、髭や髪はあまりよく整えられておらず、ほとんど伸びっばなしであるから、ぎりぎり青年に見えなくもないが)、年若く、線が細い顔立ち。まあそのせいで身体との差異が少しばかり不気味に映るのだが。


 はっきり言って、全てが人間離れしている。そう人間に詳しくない自分にだって、それは明らかだ。


 だが……別にどうでもいい(・・・・・・・・)。ここまでつらつらと疑っておいてなんだが、どうせ彼は自分のような若輩を、面倒な態度を被りながら、それでもなにくれと目をかけてくれている……そんな、優しく、面倒見のいい彼だ。そしてそれ以上は、今はまったく必要ない。


 無いから、これ以上の推論を止める。それだけでいい。そうであるだけでいい。思考をあえて停止させて、彼の腹を、無意識にだって、自分は無闇に探りたくない。


 さて、それじゃあ、そんな彼が、拙い自分のために考えてくれた段取りを、一つ前に進めよう。なに、心配はいらない──なにせ。


「ぬ、っ……ぐ、はぁ、ふ……っ!」


 ……もう。この、無能の、意欲はともかく、体力そのものは、こちらの顔に、生ぬるく酒くさい息を幾度も浴びせるほどに、削れてしまっているからだ。


 では──この茶番に、さっさと幕を、引くとしようか。





 一際、大きな、木を裏の拳で叩く音が、酒場の端から端まで響き渡る──ああ、そうか、そうだな、確かにそろそろちょうどいいだろう。


 正直、こうして、大柄な大男に囲まれて、じろじろなめ回すように監視されるのは、ああ、飽きてきたところだ。まあ、俺のほうが頭ひとつかふたつ大きいがね。


 くく。いやぁおかしいおかしい。あれだけこっちに注目していたそいつらが、まるで雑魚の群れのように、一斉に発生源へと向き直って、そんでどたどた、なんて焦った足音を立てて、額に冷や汗かきながら、自身の雇い主のところにまで走っていったんだから。

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