表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
68/88

第二十五話

 はは、まあ、命拾いしたこいつらのことは、もはやどうでもいいとして、あとは時間を掛けるだけ、という状況。


 さて、少年は、その時間とやら、過ぎるまで我慢できるかな……?





 正直。正直状況は芳しくない──と、いうのも、


「ふんぬあ、あああぁ……!!」


 この、迫真の表情で、手に筋が浮かぶまでに力をこめ……込めて? こちらを押し倒そうとしているこの人間。人間の力が、はっきり言って弱すぎる(・・・・)


 予想はしていた。予測も立てていた。けれどそれでも、まるで綿でも押し付けられているかのように軽く、……今だってこちらが少し押されたふりをしてやらねば、そもそも自分の腕は微動だにしなかった。


 なんだこいつは。ほんとうにこんな筋力程度で、こちらの条件を丸呑みし、あまつさえあんな挑発を吐いてきたのか……伝わってくる全てがあまりに軽薄すぎる。


 こんなありさまで、むしろ今までどうやって生きてきたんだ? いや、待て、確かライトさまが、こいつは、もしかすれば貴族であるかもしれないと言っていたな……うぅむ、だが、こんな非力で、どうやって領地の民たちを守っているのだ? 知謀か? 


 しかし、さっきの所業を見るに、酒が入っているとはいえ、あれだけの恥をさらしているのだ、決してそのようには……ああ、もしやそう振る舞っているだけかいや違うな、この先ほどから必死で力押すことしか考えていない顔と頭で、まさかそんなことはあり得ない。


 え、では、この者はどうして生きているのだ? いや、そもそもどうして貴族であるのだ? 存在する理由がわからん。よもや親の温情で在り続けるというわけではあるまい。そんなことをしてまで、この無能を、高貴なる家に置いておく理由が無い。


 大体この、明らかに青年、という年まで育っておいて、親の金だけでこんな、それこそ家に泥をひっかぶらせるまねをするなど、そんな……そんな貴族(やつ)があり得ていいのか?


 ……わからん。なにもかもがわからん。人間の貴族は、こんなまぬけを許容して、いったいなにがしたいのだ? さっさとこんな(やから)、家のためにも放逐するか、もしくは不慮の事故(・・・・・)で排除するべきだろうに……


 いや、いいか。それは自分が考えることではない。どうせこんなありさまだ、いちいち自分が手を下さずとも、いずれ存在を許容できなくなった誰かが、あるいはこいつ自身の天運が、その命を奪うことになるだろう。


 さて、こうつらつらとこの貴族のような無駄について論じてきたが、勝負の展開自体はうまく誤魔化せている、と、思う。目の前の本人や、周りの反応に不自然なところは無いし、ここまではどうにか、この羽毛のような無駄と互角を演出できている。


 見れば、相手の(ひたい)に、うっすらと汗が滲んでいて、それは手のひらも同様……いや、気持ち悪いな。なんでこいつの体液に触れなくてはならないのだ、はっきり言って今にも腹から拒絶の言葉が込み上げてきそうだ、気分が悪い。


 しかしこれもお役目、しかもライトさまからいただいたもの、しっかり果たさねば、自分で自分に納得できなくなる。ここは心をなるべく(なら)してぐっとこらえねば。


 だが……うん……弱いな……ほんとうに力入れてる? と疑いたくなるほどの、無。互角にするのが大変なくらい。


 人間とはこのように弱いものばかりなのか……いや、そんなわけは無いか。なぜならその中には少なくとも我らが魔族の長を打倒せしめた勇者とその一行がいる。おそらくはピンキリ、といったところなんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ