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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第二十四話

「なんだ? ほら、今いいところなんだから、このまま観戦に集中させてくれないか?」


肩をすくめ、わざとらしく眉を寄せ、二人の名勝負(偽)を指差し、あとついでにくく、なんて薄く笑みをこぼしてみせる。


 端から見れば、俺は自身の命が(おび)かされそうになっているにも関わらず、にやにやと軽薄に笑うやべーやつに映るだろう。俺も見たら絶対関係を避ける。


 さらに深読みしたがる誰かがいれば、なぜこうも余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)なのか、なにか裏でもあるのでは、と、無闇に、ありもしない思慮を巡らせていることだろう。


 まあ、裏があることは否定しない。そもそもこの場面も、ある程度狙って起こした状況だし。


 とはいえ、別段こいつらに用事があって、それでいちいちこんな回りくどい集合をかけたわけではない──狙っていたのは、こちらへの傾注。


 おそらくこいつら、そこの貴族が負けそうになったら、なにかしら、それこそあからさまな妨害行為を、様々なかたちで仕掛けてくる腹づもりだったはず。でなければ勝負が始まったあとあんな近くには寄らないだろうし。


 だが、景品──本来自身の首に迫る処刑の刃(ギロチン)に怯え、今ごろ必死で少年の勝利を願っているであろう俺が、そりゃあ薄ら笑いを浮かべ、目の前の勝負を楽しむさまを見たら、そりゃあこいつらはなにかあると(いぶか)しみ、その様子を確かめるために、さらにはあわよくばを狙うため、近付かざるを得なくなる。


 そう。それこそが俺の狙い。


 こうして注目を集めることで少年から意識を逸らし、そしてその過保護な敵意を、その一心に受け持つ……なに、慣れたもんさ、こういうのは。


 さあ、あとは、どれだけ引き付けておけるか……


「貴様、どうしてそのような態度を取れる。いいか、若が勝てばそちらの首を、我々の手で掻き切ることとなるのだぞ。


そのような結末が訪れると、もう決まっているのに──」


「簡単なことさ。正直、俺にとっちゃどっちでもいいんだ。


例えここであいつが負けて、それで命を落とすとしても、それは俺の運と信頼が足りなかったってだけの話。別段惜しむような命でもない、だったら楽しむことに使わなくっちゃあ、な?」


 軽く、薄く、しかし立てた板に水を滑り落とすように、てきとうな、相手の気を引けそうな言葉をべらべらと口から垂れ流す。当然笑みは崩さずに。


「狂っている──「ああ、よく言われるよ。それで、あんたらは、わざわざ俺の正気を確かめに来たのか?」……っ、」


「だったらさっさとここから離れてくれ。俺は楽しいことは大好きだが、こうして無粋を差されるのは、はっきり言って気にくわないんだ──それとも、なにかい。


あんたらが、俺を楽しませてくれるのか?」


 顔を変えず。しかし口調と声色には、愉悦と殺気をたっぷりと孕ませて。


 たったそれだけ。それだけで、おそらくは腕にいくらも覚えがあるだろう護衛たちは、その口を、閉じた貝のように次々つぐんだ。


 はは、おもしろ。むくつけき男どもが、先ほどまで向けていた敵意を、目ごと俺からあらぬ方向に逸らしていやがる。これならこっちに手を出す、なんてばかなまねはしねーだろ。もししても軽く追いはたくけど。


 というか下手に手を出されていたら、脇に控える女性二人の、一度は収まった激情が、炎というかたちで彼らに噴き出すところだった。今だってちりちり(・・・・)と、その手のひらに幾つもの欠片が花弁(はなびら)のように舞っているというのに。

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