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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第二十一話

 だが、当然、普通に割り込んで唐突に提案したんじゃ、あの高貴なるもの(笑)は受けるどころかそもそも俺の存在を認識しないだろう。


 だからこそ、こうして判断が前後不覚になるまで煽って煽って煽りまくった。しかも三人に相手をさせた上で、三人を巻き込んで。


 とはいえ、三人を巻き込んだのは、これは、まあ、あのままでは危険、というのもあったが、そもそもそうしなければ、このあとの勝負、それが穏便に片付かない、と判断したからでもある。


 そう。忘れてはいけないのが、あくまでも相手方は、中身はともかく立場はかなり高貴な誰か。もしうっかり俺が圧勝なとしたら、最悪あいつの権限で投獄、なんてこともあり得る。


 だって話したかぎりなんかやたらとプライド高いし、こんな衆目の中でそんな無様さらしたら……うん、推して知るべし、というやつだ。


 だから、ここはある程度、いい勝負だったと相手に勘違わせるため、少なくとも実力が拮抗、もしくはその演技が出来るくらい武に長けているやつが、この場での適任となる。


 さて、こちらの面子の中で、そういったうまいこと(・・・・・)ができるやつっていえば──


「──頼んだぞ、トルマ」


「……はい。まだ少し、納得はいきませんが、これが最善だとあなたが言うのなら、ぼくはそれを全力で遂行するのみです」


 かっ、と。俺に背を押された少年は、わずか強く、音を立てて床を蹴りだし、あの貴族様が待ち受けている勝負の場へと、振り向きもせず歩いていく。



 その姿はまさに戦場に赴く騎士そのものであり、この勝負が八百長だということを忘れれば、それはさぞや勇敢な勇姿に見えたであろう。まあそうさせてんのは俺なんだが。


 さて、勝負をするにあたり、こちらにはその全てを、有利になりすぎない程度にいじくる権利を、こちらの話術(笑)で一方的に手にしたわけだが、当然その中には勝敗の景品、つまり勝ったら誰がなにを得るか。その自由も含まれている。


 その点、あらかじめ少年には、俺が吹き込んだそれを提示するよう頼み込んでいる。とはいえ、それほど難しいわけではない。ない、が……


「では、こちらが求める景品はたった一つ。“この決闘のあと、そちらがこちらを見かけても、一切の干渉を避ける”こと、です」


 加えて。席に着き、彼と対峙する彼が、立てる指を二本に増やし。


「この勝負の勝敗如何(いかん)に関わらず、ここで起こった全てを吹聴・口外しない──ああ、これはそちらにも適用される、まあ、追加の取り決めです。


だってほら、どちらがどうなろうと、負けた相手を殊更に(はずか)しめるのも、たかが勝てる相手に勝ったという事実を自慢するのも、名誉あるあなたが起こしていい行為ではない……」


 でしょう? と、相手の高慢と傲慢をほどよく刺激、当然そうされたおぼっちゃんは、少し不満げに鼻を鳴らした、が、特に依存なくその条件を受け入れた。


 よし。これで例えどうなろうと、この場でのらんちき騒ぎは外には漏れない。いや漏れることは漏れるが、それも終わったあとでの噂話。こちらが捕まる確率はほとんどろ過され、またぞろ新たな問題を起こさないかぎりは話題にすら上がらないだろう。


 これでこちらの安全は確保された。あとは穏便に勝敗をつけるだけ……こっからは少年のお手並み拝見、といったところか。いや俺なに様なんだろう、そもそもこうなったのはまず俺のせいなのにな。


 いや、本当に少年には申し訳ない。まさしくこちらの尻拭いを、不承不承させてしまっている。あとでなんでも言うこと、無理ない範囲でたくさん聞こう。

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