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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第二十話

「──」


 がっ、だぁん! と、木製のボロ椅子を叩きつけるように立ち上がり、ついでたづ、たづ、と荒い足音を立て、薄ら笑いを頑張って浮かべている俺へと、肩を怒らせて距離を詰め。


「──ここまで。ここまでこの僕に舌鋒(ぜっぽう)を突き立てたのだ。貴様、相応の覚悟は出来ているのだろうな?」


 腰の剣を、慣れない仕草で鞘から引き抜き、そのままもたつきながら、俺の顔に突きつける。うーん、できればここはもっと鋭く差し向けてほしかった。


 だが、おおよそは狙い通りの展開だ。これでこいつは俺……というより俺たち(・・)に首ったけ、これからもう目が離せなくなった。


 よしよし、あとは……


「おおっとぉ? こいつはなにかな、そこの立場だけのおぼっちゃん? こんなオモチャまで振り上げて、くく、なにかな、急に遊びたくなったのかなぁ?


でもざぁんねん、あんたがいくらその気になっても、俺には子供、いじめるつもり無いんだわ。まあ、正直? 俺が相手するまでもないっていうか? むしろ相手したらこっちが恥かくだけっていうかぁあ?」


 かたかた、かたかた。顔の横に添えられた剣が、握った手に連動して、疲労とは違う理由で震え始める。


 見れば額にいくつもの青筋が、うわこんなに浮かんでんの初めて見た、それこそ埋め尽くさんばかりじゃん……どんだけ煽り耐性無いんだよ……ま、そう仕向けたのは俺だが。


「しぃかぁもぅ、こんな人前で? そんなわかりやすい暴力に頼るとか? もう、自分はこれでしか人に勝てない馬鹿ですって自白してるようなもんだぜぇえ?


それでさ、勝って嬉しいの? 例えばその剣で、俺をばっさり切り捨てたとして、それで負かした(・・・・)って胸を張って言えるのぉお?」


「ぬ、ぬぐぐぅう……!」


「どうせだったらさぁ、相手が提示した勝負と条件で、真っ向から打ち負かしたほうが、ほら、勝った(・・・)って優越に浸れるってもんじゃないかぁ? 例えばの、たーとーえーばー、の話だけどねぇ?」


 うわぁ、我ながらすっげえうざい、もし自分がこう言われてたら絶対途中で相手を吹っ飛ばしてる、もしくは気絶させてる。いやイラつくってのもそうだけど、拘束されてる時間がもったいない……と、


「ほぉ。ほおおおぉ……いいだろう、いいだろうともよ、その安い挑発、あえて乗ってやる。なにせ私は高貴なるもの、庶民の挑戦を、真正面から受けて立つのが、ああ、責務のようなものだからなぁあ……!!」


 ──かかった(ヒット)。こうなってしまえば、もうこちらのどうとでも出来る。いやはや、口を回したかいがあったというものだ。


「おうおう、高貴なる人は大変だねえ、いちいちこんな庶民の頼みを、くく、わざわざ聞かなきゃならないってんだから。


それなら、まず、勝負の方法を決めちまうとしよう。せっかく手元に白紙の契約書があるんだしなぁ……」


 少しだけ、悩む……フリ。だってもうとっくに決めてあるからな、こうして焦らして、さらに怒りを煽り立てておいたほうが、ふふ、相手の余裕を奪っておけるからな……


「そうだな、決まったよ。ここは、この場のお約束ってことで……


──腕相撲。で、どうだ?」






 腕相撲。俺も昔は、この単純かつ明快に決着がつくこの方法で、よく傭兵仲間に酒を奢らせたもんだ。やはり安全かつ快活に勝敗を決するなら、これが一番手っ取り早い。

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