第十四話
さて、町に入ってまずすべきことと言えば、そりゃ当然宿の確保だが、しかしそこでちょっとした問題が発生した。
いや、決してまともな宿が無い、とか、泊まる金が無い、とか、そういった致命的なそれではなく……数。
この町、いやもう都会と呼ぶべき繁栄を誇っているこの都市には、それはもう、目に映るだけでもとてもたくさんの宿があり、……正直なところ、どれを選ぶべきなのか判断がつかない。
しまったな……こんなことなら、行商隊の人たちから、もう少し詳しく話を聞き出しておくんだった……
が、今ここでそんな後の祭りをぼやいていても仕方ない。判断材料が乏しい以上、ここはまず共に泊まる道連れから意見を募ろう。
じゃあまず、マラヤからな。どこ泊まれば良いと思う?
「ここはやっぱり、とびきり豪華なところでしょ! だってそういうとこなら、きっとおかしもごはんもおいしいだろうし!」
なるほど、豪華。なるほど、食べ物。確かにそれは重要だよな、うまい飯はそれだけで価値がある。特に三食ともなればなおさらだ。
で、アラゴさん。そういったところに泊まるお金、あるんです?
「うーん……一日ぐらいなら……どうにか、というところ、ですが……けど、私たちは、この背嚢の中にある商品をすべて売り切らないと、ですから……多分一日では……終わらないかと……」
はい、わかりました。じゃあ却下だな。うまい飯は大切だけど、たった三食で終わっちまうなら、さすがにそこまで贅沢は出来ない。悪いがこらえてくれ。
じゃあ次、トルマ少年。
「はい! まずここで考慮すべきは、この町にどれだけ滞在するのか、だと思います!
そもそも先ほどアラゴが言ったように、僕たちには受け取った商品を、すべて売り切る義務があります! それが行商隊との交換条件でしたから!」
おお、そうだな。確かにそこは重要だ。少なくともそういった話で来ているんだから、きちんと果たさんと不義理になる。ちゃんと考えているようでなにより。
「おほめに預かり光栄です! それで、その日数がわからない以上、そしてそのあとに本題が控えている以上、なるべく節制を心がけるべきです!
ですので、この町で一番安い、最低限の寝床だけを提供する宿などがよろしいかと! 愚考いたします!」
うーん……確かにそれも正しいっちゃ正しいんだが……そこまで切り詰める必要も無いんじゃないか、と個人的には思う。
せっかくこういった華々しいところに来たんだ、ある程度観光を楽しんでも、そうバチは当たるまい。というかそれは最終手段に取っておきたい。俺だってそろそろ文明の利器であるふかふかのベッドで眠りたい。村だと編んだ草と地べたシーツっていう、ほとんど野宿と変わらん環境だし。
じゃあ最後、さっきから笑顔で二人を見守ってくれてるアラゴさん。
「ええ、はい、では、個人的な意見を。
とにかく二人とも、なんというか、合わせたように両極端です。どちらも悪いとは言いませんが、それでもまずは、その折衷を考えましょう」
あれ、なんか説教みたいになってる……でも、そりゃそうか。二人とも、一つの要素を突き詰めすぎて、結局極端になっちまってたし……確かに普通なら、こう、値段も待遇もそこそこのとこ選ぶもんだよな。
そうなると……次にすべきことは……
「はい。まずどうするにせよ、とりあえず情報収集ですね。
聞くべき要点は宿の評判、けれどそんな聞き込むように問うのではなく、あくまで観光客が自然に尋ねるように、さりげなく聞いていきましょう」
そうだな、そうしてから、また改めて判断しよう。




