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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第十三話

 姿を隠す方法は、古今東西数あれど、しかし一番有効なのは、もので覆い隠すことだと俺は思う。


 ので、道中、さんざ三人に三様の反応を取られながら作り上げたこいつ(・・・)を、俺は顔の上半分にしっかりとはめ込む。


 ……むむ、む。おお、けっこういい感じいい感じ。木製だからちょっとちくちくするけど、きちんとぴったりはまっているし、悪くない、むしろ……ふふ、かっこよくなっちゃうかな、これは。


 だって、何せ「ぶっ、あははははは……! なんっかい見ても、やっぱり似合ってないわね、その舞踏会に付けるみたいな仮面!」え。


「いや、いやだって、ねえ……こぉんな筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)なおっさんが、おっさんがよ? 蛇柄の上着羽織ってこんな、こんな……ぷっ、くくくくくく……!」


 え、いやそんな、そんなはずは……だってあれじゃん、本当なら全面仮面にしようと思ってたの、そっちが“恥ずかしい、完全に不審者、憲兵に質問される”、とか文句つけて変えさせたんじゃん……あと蛇柄なのは仕方ないだろこれが俺の一張羅だ、他に服を持ってないんだよ……


 ……。いや。いやね。俺もさ、うすうす思ってたよ、思ってたの。“あ、これくっそかっこわるい”って、“はっきり言って趣味が悪い”って。でもさ、こうしてかっこよくなったとか思い込んどかないとさ、できなかったんだよ、こんな、こんな……まるで変質者みたいな……


「いえ! ライトさま、ぼくは良いと思います!

なんと言いますか、こう、一目でその威厳が示せる……近寄ってはいけない、という雰囲気が! こう! なんとも! いい味を出してると!」


 やめて。そういう結局“変態”って言っちゃってるやつが一番傷付くから。下手に慰め入れなくていいから……


 いや、うん、でもね、例えなにがどうあれ、そっちみたいな偽装が使えない以上、もうこれ被っていくしかないわけよ、この変態変貌仮面を。


 俺だって、自覚した今となってはとても恥ずかしい……けど、ここまで怪しい格好してれば、逆に、逆にね? あれよ、どれだ、そうあれだ、正体自体は隠せる、と考えたのよ。たった今。


 だから、うん……理由があるなら、とりあえず耐えられる……これでも大人だからね、多少の恥でバレないってんなら、うん、うん……


 ……ええい、覚悟を決めろ、もうこれしか選べる道は無いんだ。例えどっかの歌劇の怪人じみた仮面だったとしても、そしてそれが壊滅的に似合っていなくても、これしか無いんだ、無いんだ……!



 さあ、それじゃあ恥の上塗りを始めよう。なに、もうこうなったら、あれだ、こう、もう性格とかそういうの切り変えて、割り切って、堂々と振る舞えば、心の衛生は保たれるはず……よし。


「──行くぞ、お前たち。まずは第一関門を突破しないと、な」


 言って、もはやちらほらと人が増えてきた街道の先をずんずんと。周りからくすくすひそひそとなにか、なにか聞こえてくるけど、ああ、そんなもの、全部気のせいだとも、きっとこれから入る町での展望を語り合っているに違いない、違いないとも!


 もうこれで押し通す。どうせ顔隠してんだ、思いっきりかき捨ててやるよ──これから味わう全ての恥をなぁ!





 町の門で塞き止められるかと思った恥の塊たる今の俺だったが、意外にも快い笑みを浮かべて、すんなりと町の中へと通してくれた。


 いや、怪しまれていたことは確かだ。だったが、アラゴさんが門番に取り出した板状のなにかを見せ付けると、その視線もすんなり引き、あとは簡単な荷物検査だけで問題なし、と判断してくれた。


 あとでアラゴさんに聞いてみたが、どうやら彼女が見せていたのは身分証明のようなもの、だったらしく、なんでも行商隊が予め備えていたうちの一つを、この遠出だけの間貸し受けていたらしい。


 つまるところ、俺のあの恥に対するすったもんだはまるっきりの無駄であり、そのことに対して正直思うところが無いわけではないが……まあ、町に入れたしな、水に流しておこう。

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