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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第十話

「あら、天幕、ちゃんと出来たのね」


 おっと、マラヤか。そっちの仕事は終わったのか?


「ええ、まあね。とりあえず、焚き火するところはきちんと作って、一応魔法で試運転して……あとは……えっと、トルマくんが拾ってきた枝木を、そのとき近くに置いておいたわ。

これで、よかったのよね?」


 ああ、問題ない。それで少しは薪の水分が飛んでいく、はず。つってもそんな長いこと置いたわけじゃないから、そんなに効果は無いかもだが。


「そう。でも、わざわざ魔法じゃなくて、いちいち木とか使って火を保つなんて、なんか遠回りっていうか……原始的っていうか……」


 いいんだよ、こういうのは雰囲気が大事なんだ。あと、燃料用意しとかないと、見張るときに困るだろ、一晩中なんだし。


「見張る? ああ、確かにここらへん、まだ魔物とか出るものね……え、いや、でも、それって交代しながらなんだから、あたしの番に点け直せば結局……」


 ああ、それなんだがな──見張りは、俺一人でやらせてくれないか?


「……え?」


 いや、考えたんだがな。ほら、この中で一番そういうのに向いてんのって、やっぱ俺だろ? で、他は……その、正直に言ってしまうが、お前含めた他の三人は、いざというとき、恐らくぼろが出る(・・・・・)。もうちょっと言うと、事態に対応しきれずに負傷、ないし危険を延焼させかねない。


 何せ、交代とはいえ十全ではない、それも眠気なんていう、一番行動が遅れる異常が身体に常駐するんだ。戦闘慣れしてないお前らだと、確実に後手に回る。


 危機の前でそうなっちまえば……あとは、わかるよな?


「……。ええ。自分が殺される、だけじゃない。近くで無防備になっちゃってる仲間も、その道連れにしてしまう……」


 そうだ。俺としては、下手にお前らに無理させて、そうなっちまうのが一番怖い。


 だったら、そういったのに無駄に慣れてる俺が、見張りを一手に引き受けるべきだし、それが最上だ。


 わかってはもらえんだろうし、不服だって不満だって多量にあるだろうが、ここはこらえてくれ。あとついでにお前が他の二人に話してくれ。多分俺から言ったら、ちょっとだけど角が立つ。本人たちの知らん、心のどっかでな。


「……ええ、わからないけど(・・・・・・・)わかったわ(・・・・・)。二人にもきちんと伝えておく。


…………」


 おいおい、そんなふてくされた子どもみてーな顔すんなって。まだお前は、まあ少年もだが、お前なりに若いんだ。弱くて当然、頼って自然、守ってもらって当たり前なんだよ。


 いいからここは、いい大人の俺に任せとけって。


「……うん。ありがとう……」


 おう。なぁに、どうせこの天幕、俺まで入ったらあふれちまうんだ、だったら外で一晩見張りやってんのが一番ってもんよ。


 そんじゃ、言伝(ことづ)てよろしくな。


「……ええ。それじゃ、またあとでね」


 ひらり、と手を振り、そのまま踵を返して二人の元へと向かう彼女を、ほんの少しだけ見送り、それから、これから長丁場になる後々を思いながら、けれどこんな面倒も、大人としてなら悪くないな、なんて、柄にもないことを、噛み締めるように味わった。


 ……多分、きっと、口の端をわずかに上げながら。





 ぱち。ばち。たった少し前に入れた枝木が、断末魔のように火の粉と音を舞い上げる。


 そんな光景を幾度見送りながら、俺は天幕の前にどっかりと座り込み、辺りを、首を回さず目のみを動かして警戒していた。


 未だ、危険は無い。忍び寄ってもいない。俺という存在が功を奏しているのか、それとも他の知らないなにかが原因か、とかく今のところ、なにも起きてはいなかった。

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