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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第七話

「です、か……ですね、はい……」


 うーん、あからさまに気落ちしている。そりゃ自分の、しかもとびきりよく思えた考えが、こういったかたちで頓挫したんだ、まして彼はまだ子供と言える精神年齢、失敗はことさら心に響く……これは声を掛けるべき、か……いや、


「大丈夫……大丈夫よ、トルマちゃん。あなたには、そしてこの村にはまだまだ時間がある。だって始まったばかりなんですもの、そんなすぐに、どうにかなることなんて、きっと無いわ」


 それに、と。彼女は俺を手で示し。


「このかたもいてくれる。この人は強い。それは他ならぬあなたがよくわかっているはずよね? だって家に帰ったとき、ご飯を食べるとき、ふふ、眠るちょっと前にだって、あんなわがことのようにほめるんだもの。

そんな人が村にいて、ちゃんと私たちを守ってくれている。だったら危険なんて、そう簡単には訪れないわよ」


 だから、と、彼女は席を立ち、彼の隣まで歩き、そっと、その頭に体を寄せ。


「ゆっくり。ゆっくりでいいの。焦らないで、まずは、自分のことを考えて、自分を大きくすることを考えなさい。

そうして、できることを増やしたら、またそこから、夢に向かって頑張るの。

あなたは、まだ、強くなれる。賢くなれる。そこからでも、まだ、ぜーんぜん遅くないわ……」


 (こわ)ばってっていた少年の体が、言葉にだろうか、声色だろうか、体温だろうか、それとも彼女そのものだろうか……ともかく、ゆるりとほぐれ、今にも泣き出しそうだったその顔から、いつの間にか浮かんでいた焦燥が抜け、まるで母親に抱かれている子供のような、いやちとそのまんまか、とにかくひどく安らかな笑みを浮かべた。


 やっぱり、子どもには母、だよな。誰だって母ちゃんにゃあ、色んなことで頭が上がらねえんだ。


 ……あー、うちのかーちゃん今なにしてんだろ、急に顔見て孝行したくなってきたわ。


 とりあえず生きてるとは思うんだが……でも、確か、なんだっけ、最後に見たのはけっこう前……ああ、そうだ、俺が実家の山から出たときだったっけな……あのときは、ちょっと、……いやなことがあって、ほとんど逃げるように出てったから、まだ少し気まずい。別に会うのがいやというほどじゃないんだが。


 まあ、でも、あの両親の事だ、きっとあの、世間から遠く離れた山里もどきでのんべんたらりと暮らしてんだろ。少なくとも、今の俺なんぞよりよっぽといい生活送ってらあな。


 さぁて、それじゃあ、お取り込みのところ野暮しちゃいけねえ、さっさとここからおいとまするか……盾はまた今度でも構わないし。


 俺はゆっくり、なるべく音を立てないよう椅子から起こり、そのまま抜き足差し足で、二人の邪魔をしないよう、家からそぅっと脱け出した。


 ……その際、何個か焼き菓子を腹の袋に入れちまったのは、……まあ、見逃してくれや。




「先日はどうもお見苦しいところを……ですが、アラゴに諭され、目が覚めました!」


 次の日。少しだけほほを、おそらくは羞恥に赤らめ、自身の得物を担いだ彼が、今日も今日とて門番(ひま)している俺の元を訪ね、そして頭を少し下げた。


 いいよいいよ、と、俺は流し、むしろ招いてくれたのにすまん、と頭を下げ返し、そこでお互い様だなぁ、なんて和やかな空気が流れ、


「と、いうわけで! ライトさま、装備を買いに行きましょう!」


 ──そこで、なにやら唐突な、まったく空気にそぐわない発言が、笑顔の彼から放たれた。


 え? 今なん……今なんて?


「ですから! 装備一式を! 買いにいきましょう! 大丈夫、対価ならこちらがお支払いしますから! 盾はあるので、胸当てとか小手とか、あと脚絆(きゃはん)とかですね!」


 あ、聞き間違いとかじゃなかった、いやあんなにはっきり言ってたから違うってのはわかってたが、それでもほら、逃避したいときって……あるだろ?


 や、そうじゃなくて、いかん、ちょっといきなりな発言に頭が困惑した、そうじゃなくて。


「え、なんで? 確かその、なんだ……その話は……」


「ああ、いえ、あの……昨日のアレとは、その、関係ありません……いや! 完全に無いとは言い切れないのですが! でも、今回は、その、そういうアレじゃないので、はい!」


 ああ、ちょっとはあるんだ……うん、正直でよろしい。そんで、正直ついでに詳しく話してくれるとありがたいのだが。


「えっと、あのう……その、なんというか……隊長とか。そういう云々(うんぬん)は置いときまして……

こう、門番、というからには、やはりきちんと武装を整えて、その威を周囲に示したほうが、その! よりその役目を果たせるかと、そう愚考いたしました次第で!」


 お、あ、そういやそうか。確かに厳つい見た目ってのは、人も獣も近付けなくするもんだからなぁ。いや、獣は……精々金属とかそういうのの臭い覚えてそうなるってだけの話だが。


 なるほど、それなら断る理由もない。むしろこちらからお願いしたいくらい、だが……ううん。でもあるか(・・・)


 だってあれだろ、この村にあるそういう装備らしきものって、ほとんどが普通の大人用に(あつら)えたもんだろ? だったら……規格が合わないと、思うが……

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