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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第六話

 とはいえ、子どもには少し刺激が強い話だから、要点だけまとめて……えっと、


「まずな、俺、昔傭兵……てもあんまわかんねえか、とりあえず戦争だの戦闘だの、そういった人手と戦力が要るときにだけ、どっかの幕下(ばっか)に入る契約兵士のようなことをしていたんだが、その時分によ、人を率いるようなこともあったんだよ。でも……それでちょっとやらかしちまってな(・・・・・・・・・)、それ以来やらないようにしてんだ、隊長とかそういうの」


 本当のことだ。昔、腕を買われて、少しだけ大きい戦争のときに守護隊の長を任されて、そこで、……従ってくれた部下、その全員の命を散らせちまった。


 あの事態ほど自分の……なんだろうな、別に無力は感じなかったな、一人でも、というか人を率いなきゃ相応の成果は上げてたし、事実そのときだって、一人で全部守りきった。


 だから感じたことと言えば、そうだな……絶望的なまでの指揮能力の低さ、だ。あれ以来俺は人を率いることに極力関わらないようにした。なるべく指示に従うだけの一兵士、一傭兵として徹するようにした。


 だから、受けられない。まあ広告塔(マスコット)ぐらいにはなってもいいが、隊長はな……他の人に任せたほうが賢明だよ。いや、ほんとほんと。


 だが、と、食い下がろうとした少年に、しかしそこで、それまで黙って経緯を見守っていた彼女が、こら、と叱るような声で制止。


「教えたでしょう? 無理強いはいけません、無理やりはいけません、無理押しはいけません、それらは騎士のやることではありません、と。

きっとライトさまにも深い事情がおありなのでしょう、そこをねじ曲げ、無理往生に無理無体しては、それこそ我が家の名折れです……」


 眉を寄せ、垂れがちだった目尻をぴっと上げ、とつとつとした調子で、血が昇りかけた彼の頭を冷やすように、お説教、そうだなこれお説教だな。


 なるほど、確かに彼女は母代わり(乳  母)なんだな。あんなに突っかかる気満々だった彼を、ほれ、こんなしおしおになるまでこってりと(しぼ)ってるんだから。


「まったく、態度を改めて大人になったな、と思えばすぐこれです、まだまだ子供なんですから……あら、」


 これはお恥ずかしいところを、と、わずか赤らんだほほを隠すように手を当て、照れを誤魔化すように笑う彼女は、自分のようなおっさんから見ればまるで十代、いやかろうじて二十代の女性にしか見えない。さっきまでの母っぷりとは大違いだ。


 いや、これはこれで母親っぽくはあるのだが、そこはそれ。


「とにかく、そういうわけだ。盾をもらう代わりに、ある程度のこと……人員集めとか、人員そのものとかはやってもいい。

けど。悪いな。どうしてもこれは譲れねえんだ」


 ともあれ、譲歩できるのはそこまでだ。これ以上は、たとえ装備一式積まれたってどうするつもりもない。ここだけははっきりとさせておかなきゃな。じゃないと下手に希望を持たせちまうし……


「……。はい、分かりました。でも……」


 まあ。そうか。そりゃ迷うか。確かに端から見れば、今、この村の戦力の一番上に鎮座してんのは、まず間違いなく俺だ。


 その俺から、直々に、言ってしまえば自警団の長を断られたんだ、他に候補が無いってのが現状だよな。


 けど、だからって自分がなるわけにもいかない。確かにきちんとした訓練を受けていて、実力もその年にしてはまあまあ(・・・・)といった少年だが、それでも、貫禄、というのか、それとも威厳、というのか。ともかく人をまとめるだけの風格とやら、まだどうにも獲得できていない。


 もう少し色んなことを経験すれば、この子ならじきにまとえるだろうが、今はまだまだ、年月が足りない。残念ながらな。


 そうなると……これは、まだ当分先の話になりそうだな、守備隊の発足とやらは。


 まあまだこの村も安定しているとは言いがたいし、それが賢明だと思う。ここはいずれの目標に定めておいて、まずは地固めに徹すべき段階なんじゃないか? あくまで素人考えだが。

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