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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第五話

「急な話ですまない。だが、必要なことだと思ったんだ。この村の一切の守護、それを一身に背負ってくれているこのかたが、いつまでも手ぶら(・・・)というのは、色々と示しがつかないからな」


 示しってなんだろう。別に俺、そんな御大層な任に就いた覚えは無いのだが。ただ門の前で棒立ちしてるだけだし。むしろこれで食料とかもらってることにちょっと罪悪感覚えてるくらい。


「それに、これはぼくの一意見だが、いずれこの村に守備隊を編成したいと思っている。

……正直なところ、調査に行くのも採取に向かうのも、基本的には少人数の女性や子どもだ。男性は狩猟や力仕事で引っ張りだこだから、どうしてもそうなってしまう。

けれど、それでは、いずれ大変なことになる──この前だって、あの災害じみた大蛇が村の付近をうろついていた。

それはたまたまライトさまが打ち倒してくれたからどうにかなったものの、しかしこんな幸運が二度も三度も続くはずがない。

必ず、護衛は、必要になってくる──」


 ああ、そりゃ、確かにそうだな。いくら魔族って言っても、先天的に魔に長けてるっても、そう戦えるやつらばかりじゃない。だからって隠れたり逃げたりするにも限界がある。


 特にお年寄りや、まだ小さな子どもは、そういったときにとっさには動きづらい。悪い言いかたになるが、もし全員でどうこう、となった場合に、まず間違いなく足手まといになってしまう。


 だから、そうだな……その際に、そんな彼らの助け()となれるやつらがいれば……そいつらのみならず、全体の生還確率がけっこう高まるだろうな。


 あと、単純に人手が増えるのがありがたい。何せ今の門番でさえ、あれだ、俺とあと一人だけで回してるし……いや、そりゃあ採取だ調査だ行商だ、他のことに人員割いたほうがいいのはわかっけど、それでも……二人だけってのは……けっこう辛い。いや肉体的に、ではなく拘束時間がね……半日以上突っ立ってなきゃだから。


「そのためにはわかりやすい象徴が必要なんだ。人、人員、それらを集めるための、そして従わせるだけの、目映(まばゆ)い輝き。

確かにライトさまはそこにいるだけで数多(あまた)衆目しゅうもくを集める素晴らしきかただが、しかしそれはあくまで彼だけのもの。決して守備隊などに興味は抱いてくれないだろう。

故に、我が家の盾を持ってもらう。あの守護の逸話が残されているあの盾を。そうすれば……」


 ああ、なるほど、視線とか興味とか集まったところで、その逸話とやらを話せば、まあ、少しはそういったことに関心覚えるやつも出てくるだろうな、それこそ老若男女(ろうにゃくなんにょ)問わず……あれ、なんかおかしいな。


 いつの間にか俺、守備隊の長やらされそうになってる? 盾もらいに来ただけなのに?


 え、待って待って、ちょっと待って、いや警備の人員を増やすってこと自体は大賛成だし、別に隊員ぐらいにはなってもいいかな、とは思ってるけど、さすがに一番上は……ちょっと……俺そういうの苦手だし。


「だが、ううむ、しかしそうなると、盾だけではいささか集まりづらいやも、だな。

こうなればひとそろい(・・・・・)用意したほうが、より受け入れられやすくなるかもしれん。

であれば……!」


 あ、まずい、おっさん経験から知ってる、これなしくずし的にずるずるうやむやになって引き返せなくなるやつだ、断れない状況にまで引きずられるやつだ。


 こういうときはさっさと自分の意見と用件を言ってしまうに限る。幸い少年は頭が固いが素直で良い子だ、その全てを聞き入れることは無くても、多少はこっちの話を聞いてくれるだろう。


 俺は熱弁を振るう彼に向け、ぴん、と手を伸ばし、話したい、という意思を表示する。


 それを見た彼は、口角から泡を飛ばすのをやめ、なぜか期待した満面の笑みをこちらに向けながら、目線で話の手番を譲ってくれた。


「あー、まず言っときたいんだが、俺はその象徴には……まあ、なってやってもいいが、出来れば隊長はまた別に選任してもらいたい。

ちょいとな、向かないんだ、そういう上ってのは」


 あ、少年の目がめっちゃ見開いてる、めっちゃ驚いてんな……あと疑問(どうして)か、うーん、そうだな、断るんならわけ話さないとな。


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