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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第一話

 あの、孤児院での一件から数日。俺はすっかり、村の子供たちの人気者になっていた。


 いや、正確に言うなら、俺そのものではなく、作るオモチャたちが、だが……おかげでそいつらからはオモチャのおじさんとして、……まあ、親しまれるようにはなった。


 そして子供の評判が高まれば、自然、その親族、つまり大人たちの評価もつられて上がり、今では村で、俺に悪感情を向ける者はすっかりいなくなった。


 それに、あの蛇の皮。あれがまた村人たちにけっこうな恩恵をもたらした。具体的に言うと単純な服飾、それに……採取や狩猟の際の外套(がいとう)として、広く扱われるようになり、これがかなり評判を博していた。


 実は、なんとこの皮、魔を通すと辺りの景色を映し返す、言わば擬似的な透明に変じることができ、それを身を覆う服や外套に仕立てることによって、今までとは格段に、村外の行動、その安全性を飛躍的に高めた、のだそうだ。


 魔の使えない俺にとっちゃただの服で……まあ、正直、少し肌触りが悪い普通の上着って感じだが、それが村の貢献になったようで良かった良かった。


 さて、そんなちょっとざらざらした服を身に纏いつつ、俺は今現在、通常の業務……つまり門番としての仕事をこなしていた。


 いやこなすってかあれだ、ただ門の前で腕を組みながらじっと周囲を警戒しているだけ、なんだが……うーん、これがけっこうヒマで、気は抜いていないのだが、思わずぼーっとしてしまう。


……ぶっちゃけて言えば、こんな人など寄り付かぬ秘境の、さらに奥のそのまた奥になど、滅多に危険など来るわけもなく、はっきり言って手持ちぶさたになってい「ライトさま、ライトさま!」うん?


「どうも! 今日もよろしくお願いします!」


 おっと、もうそろそろそんな時間か……けっこう経ってたな……ったく、こうものんびりだと時間の感覚が鈍ってしかたねえや。


 俺は掛かった声のほうへと向き直り、おう、と手を軽く上げる。


 するとその声の主──魔族の少年が、喜色を全面に押し出した笑みを浮かべて、俺の近くに駆け寄ってきた。


 この子の名前はトルマ。あの蛇の調査を自ら(すす)んでこなしていた、中々行動的で献身的な少年であり、あの、俺崇拝事件でやたらとこちらを称賛していた、……まあ、純真な心の持ち主だよ、うん。


 で、なんでこんな昼日中から、俺なんぞの元に訪れているかと言えば、……うーん、一から話せば長くなるが、とりあえず一言で説明すると──俺に教えを乞うため、だな。


 なんでもこのトルマ少年、元々は……人間社会でいうところの騎士の家の出身らしく、それこそ幼い時分から厳しい訓練と教育を受け、将来は民草を守る盾となる事を夢見ていたのだが、しかし……まあ……あの人魔の決戦の折、まだ幼いから(といっても、体つきや顔つきから見て、人間でいうとこの十代前半、といったところだが。いや、でも平均よりは小さいか)、という理由でこの防護施設に預けられたらしく、彼もその事をとても悔やんでいた。


 元々お人好し、というか善行を果たして当然、という教育を受けてきたのだろう、根はとても素直で、真面目な子だった。


 いや、素直ってか、まっすぐすぎるのだろう。だって決戦が終わったあとしばらく、人憎し、勇者憎しになっていて、さらにこんな自分は騎士に相応しくない、と、口調や態度まで、わざと粗雑で乱暴にしていたらしいから。


 だが、それは……なんだっけな、まさに民を守る盾を体現している俺に出会い、その成した偉業(俺が言ったわけじゃないぞ、彼いわく、だ)を何度も見、感じたことで、ただ、自分は自らの未熟を受け入れられなかったからなのだ。と啓蒙を得た、ようで、それからは元の、騎士を目指していた自分に立ち返り、今では真面目に訓練を日々こなしている、とのこと。


 で、今、ここに来たのも、その訓練の一環。


 なんでも……『達人の技を間近で感じるのも、立派な訓練になるのです!』とか、なんとか。まあ、俺はヒマが潰せてちょうどいいから付き合ってやってるが、……しかし……


「なあ、何度も言うが、本当にこれ、訓練になってるのか?


俺、ただ、お前の攻撃を、ひたすら防いでるだけなんだが」


 そう。これから行われる、彼いわく特別訓練は、彼が今から手に持った槍や魔での攻撃を、ただ単にこちらの身一つで避けたり防いだりするだけ、という、打った銘のわりにはかなり単調なそれ。


 だが、少年にとってはとてもいい経験になるらしく、このときの彼もすっごい嬉しそうな笑みを満面に浮かべて、すっごい力強く肯定した。

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