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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第三歴 勇者の盾、その服飾。
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第十四話

 これはみんな寝ているだろうな、ならそっと家に戻らないと、なんて二人で相談しながらぴったりと閉じていた門を開け、……その先に待っていたのは、なんと村の住人、その大半であった。


 どうしたことだ。そう尋ねると、一番前に出ていた村長が、安堵の息を深く吐いて、この村人大集合の経緯を語ってくれた。


 なんでも、今日の昼から夕方にかけて、森のほうから大きな音が何度も響いてきたため、もしものことを考え、村の住民に脱出の準備を整えさせていた、そうで、集まっていたのはその一環らしい。


 だが、整えている途中で俺たちがいないことに気付き、事情を知り、よもやと思いながら、それでも俺たちが帰ってくるのを待っていてくれた、そうだ。まあたち(・・)ってか主にマラヤの心配だったろうけど。


 けど。それでも、例えついででも、待っててくれたってのは、うん……けっこうありがたい。昔も、そういうの、無くはなかったんだが……最近は、もう、まったく無かったからなぁ……


「それで、ライトどの。あの音の正体は……」


「え、ああ、うん、あれ、あれね……」


 どうしよう。素直に言っていいものか。いや、うん、言わなきゃだよな。うん。俺別に悪いことしたわけじゃ……ああ、えっと、心配かけたのは悪いことか、じゃあえっとそれ以外、あの蛇を退治たことは、むしろ良いこと、良いことだろう。


 よし、うん、言うぞ──


「あ、あぁあ、ああ、うん。あれは、あれはねぇ……


すっごいでかい蛇に襲われたから、その……やっつけ、ちゃいました……」


 しん。と。それまで和やかな談笑すら聞こえていた場が、まるで吹雪に見舞われたかのように、冷たく、静まり返る。返ってしまう。


 こいつは何を言っているんだ──場の空気そのものが、曖昧に笑むおっさん、つまり俺を糾弾しているかのようで、正直に言ってしまえばさっさとここから離れたい。今からでもいけるか……?


 ああ、でも、そうだ、あれだ、あれがあった、丁度服にしてもらおうとけっこう大きめに剥ぎ取った例のあれが、確か背中の籠ん中に入っていた、はず。


 俺は慌てて籠を下ろし、目的のものを見つけると、


「こ、これが証拠、でーす!」


 精一杯の笑顔を作り、村人たちの前に、例のあれ、つまり白大蛇の皮を、ばざぁ、と広げてみせた。


 よし。これで俺がおかしいやつなどと思われることは「す、すげぇ……」ない……え?


「やっぱり、やっぱりすげえよライトさん……いや、ライトさま(・・)は!

あの、近づくだけて吹き飛ばされそうだったあの白蛇を、こんな、こんなあっさりと……」


 え? いや、なに言ってんのそこの……あ、もしかしてあいつ、崇拝事件のときにもいた、あの小さめの少年……え、なにあいつが白大蛇の目撃者だったの? あいつがわざわざ再調査とかして骨持ち帰ったりしたの? 大分ガッツあるな……いや、そうじゃない。


 この流れ、覚えがある、あるぞぉ……


「ああ、俺たちはなんておかたを味方に付けたんだ……こんな化け物まであっさりと勝っちまう、まさに化け物を超える化け物、こんなひとに門番をやっていただけるなんて、ああ、ああ、ああ……!」


 やめて。そんな感極まった顔で、熱っぽい声で俺を称賛しないで、最近鳴りを潜めていた俺崇拝の方々が、がたがたと音を立てて続々とこっちに寄ってきてるじゃん、(ひざまず)いてこうべを垂れてんじゃん、本当にやめてくれよ……


「おお、おお! 我らが守護、我らが盾、これからもあなたさまの背で守られることをお許しください……!」


 待って。待てって、ちょっとほら、他の村人すっげぇ引いてんじゃん、俺がなんかさせてる感じになってんじゃん、ちょっと勘弁してくれよ、俺別にこんな、こんな崇拝(こと)求めてないからね、やれとか言ってないからね、俺こいつらとはなんの関係も無いから……まったく無いから!


「えっ……と、とりあえず、その……あー……


よ、よくやってくれたね?」


 村長うううぅ! 村長それダメな言いかた、わざわざこの連中の言い分認めたことになっちゃう、さらにこいつらの崇拝が過激になっちゃう、取り返しがつかなくなっちゃううううぅ!!


 あ、村長こら、言ってから『あっやべ……』みたいな顔すんな、被害に遭うのは俺なんだぞ、今や貴重な村の人手なんだぞ、てめえそれが心労で倒れてもいいのか、男手減らしてもいいのかぁ!


「おお、村長が、村長がお認めになったぞ! 我らが守護を、お認めになったぞ!


これで我らが盾は、名実共に我らが神となった! 皆のもの、神を称えよ!!」


 ほーらぁ、やっぱりこうなったじゃん、どうすんだよこれもう止められないやつだろ、だってここで取り消しても暴動が起きかねないぐらいの熱狂にゆだっちゃってるし、これ俺が直接なんかしたら逆に信仰篤くなるよ間違いない。


 あーもー、どうするかな……

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