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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第三歴 勇者の盾、その服飾。
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第十三話

 しかし、改めて見るとひどいもんだ。あのすらっとキレイだった白銀の皮膚も、鱗も、もはや見る影も無い。むしろその中身が晒されてしまっているせいで、ただの生命()にまみれたぐちゃぐちゃの赤黒に変貌してしまっている。いや、俺がやったんだが。


 それで生まれる感想が、なんだ中身はけっこう普通なんだな。血は白いのに。なのだから、結構薄情だよな。いや、魔物だし、別に同情とか無いけど。むしろ殺そうとしやがったから、あと服の材料めちゃくちゃにしやがったから未だ殺意しかない。早く殺っちまいたい。


 だから出来ればさっさと止めを刺したいところだが、……実は俺、ちょっと、いや大分疲れている。


 具体的に言うと、実は……もう……一歩も動けません。何とか息だけは整えたけど、それ以外は、けっこうきつい。これじゃこいつを殺しきるだけの一撃は繰り出せない。


 どうしたもんかな。少し休めばこの木の槍のケツみぃんなぶっ叩きまくって命に致る深度まで押し込んでやるんだが……その……この瀕死の状態でじゃーじゃー言うてるこいつの近くにいたくない。だからって遠くに行くのも、ちょっと……


 ……。……。……よし、こういうときは割りきりだ。自分の感情をある程度棚上げして、一番得をする選択肢を取る。傭兵時代に学んだことだ。


 なら、ここは、……うん、休も。別に今あいつが何かしてきても、俺はどうにでもなるし、抱えてるこいつは、この段階まで来れば遠くに置けるし、おし、そうと決まれば……こいつをゆっくり下ろして……


 あとは休むだけ、と、じゃあおやすみなさ





 目覚めたあと、まず俺の視界に飛び込んできたのは、……ぐずっぐすに涙と、ついでに鼻水を垂れ流していたマラヤだった。


 まあ、さもありなん。だって目覚めたら例の白大蛇がずたぼろの状態ではりつけになってて、ついでに殺気振り撒いてたんだ、そりゃあこんな顔面汁まみれになっちまうだろう。


 しかも彼女が目覚めたのは俺が眠った直後。丁度夕方で。辺りが宵闇に包まれつつある時間帯だった……うん、怖かったろうな。そんな何もなくても不安が掻き立てられる光景を見つめながら、あの蛇の殺意を、俺が起きるまで浴び続けたんだから。


 むしろよくそんな中で、俺にすがりつくだけで気を失わなかったもんだ。さすが元王族、心根が強い、よく保った。


 俺は彼女の頭を撫で、もう大丈夫と何度も告げると、一度立ち上がって具合を確認、問題ないと判断すると、きっちり白蛇に止めを刺した。


 その断末魔はその巨体に見合った、甲高くも野太いそれで、……その声量も、まるで大陸全土に響いたのでは。と思わせるほどに盛大なものだった。その際、また彼女が気絶したのはご愛嬌。


 さて、それからは、ここに来た本来の目的、つまり服の材料を改めて探すことにした、が、いかんせん、あの大蛇との激闘で、花畑などとっくに地面ごとなくなっていて、ならば木の皮でも、とも思ったが、それも大蛇の武器で使い果たしていて、じゃあどうするかと悩んだ末──


 目の前にある、蛇の皮を持って帰ることにした。


 マラヤには当然反対された。分からんでもない。自分を殺しかけたやつの一部を、例え必要だからって持ち帰るのは、なにか不吉なものも付いてくるようで、あまり賛成できなかったんだろう。


 しかし、なんというか、これを持って帰らないと、それはそれで俺はこれから上裸で過ごさなければなくなる。人間の尊厳を捨て去ることに比べたら、たかがほんの少しの不幸など、ああ、耐えられようというものだ。


 そのことを持ち出すと、彼女はひどく苦いしかめっ面を数秒浮かべ、自身を納得させるようにいくつか頷くと、まさに渋々といった感じで、この蛇皮の取得を許可してくれた。無理を通させてしまったな、彼女にまた迷惑をかけてしまった……いつか返せるといいのだが。


 そこからの帰路は、うん、ひどく安全なものだった。そりゃそうだろう。俺たちの通る道は、あの白大蛇が通った盛大な獣道で、そこには道中襲ってくるような存在しなかった。ところどころ潰れている何かは見えたが、そこはどうにか目を逸らすことで(心の)致命傷は避けられた。


 そうして夜の森だった(・・・)荒れ地をのんびり進み、星も見えぬ深夜には、どうにか村にたどり着くことができた。

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