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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第三歴 勇者の盾、その服飾。
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第九話

 そうなってくるとあれだな、むしろこうなってくれて助かったわ。じゃないと、言い方は悪いが、ぶっちゃけどう足掻いても足手まといになってた……けど、この持ち方だと、今からやる作戦に支障が……あ、いや、大丈夫だな、片手で充分だ。


 だと、やっぱり、問題は……時間(・・)だ。どこをどうしても時間が掛かる。そこをどうするかだ。


 さっきの目潰しは、まあ偶然上手くいったが、あれが何度も続くとは思えない。また別の方法を考えないと……あーくそ、やっぱりちょっとわくわくしてきた、年甲斐も無いってのはわかってるんだが、それどころじゃない危機ってのもわかってるんだが、どうしても大物食い(ジャイアントキリング)ってのは、男の子の夢(ロマン)ってやつを刺激する。ちくしょう、怖いのに怖くなくなってきやがった。


 よし、こうなったらこの衝動わくわくのままに、身体を動かしていこう。もう出たとこ勝負だ、とにかくなんでもぶん投げて気を逸らしていこう……!


 さぁて……英雄譚に、挑むとしようか……!





 そこからは、ああ、もうぐっちゃぐちゃのしっちゃかめっちゃかのてんやわんやだった。俺一人が、だが。


 もー手当たり次第にもの投げて逃げてもの投げて逃げてときたま挑発して逃げて、時々避け損ねて吹っ飛ばされて、なんとあげくの果てには上に乗って駆け回ったりした。まあすぐに振り落とされたが。


 いやー、でも、楽しかった楽しかった、久々に少年の心を取り戻せた気がする、それぐらい危機と危険と危急と危惧を味わって味わって味わい尽くした。


 ああ、もちろん状況を忘れたわけではない、むしろそれを楽しんでいたぐらいだが、それはそれとして、きちんと作戦の準備を進めていた。


 そして、幾度目かの騎乗からの墜落のあと──抱えた彼女に衝撃をなるべく与えないよう着地しながら、つーか主に俺が先に地面に叩き落ちて大半を受けながら周りの環境を確認……よし。


 もう、いいか(・・ ・・・)


 すくっと立ち上がり、彼女の位置を丁寧に直したあと、……これも幾度目になるかわからないが、また森の中に飛び込む……いや、正確に言うなら──


 倒木にあふれた、森であった(・・・・)──不自然な自然に。


 気付かない。あいつは、今も、俺ごとき矮小にこだわっているせいで、自分が地べたを這いずっていることにも気付かないあいつには、俺がどれだけ有利な状況にあるか、気付けない。


 あるいは、ああして無駄にでかい頭に血なんぞ上らせず、ゆっくりそらから探知の風を吹かしていれば、まだこちらの意図に、もしくはその一端を理解できていたかも、だが……ああ、けど、そうなったとしても。


 この環境になった時点で、俺の勝利は、確定している。


 さあ、逆転劇を始めよう。さしあたって、開幕のベルは、そうだな……


 そこらにある、ここらのくそでっかい木で叩いた──大蛇(てめえ)の悲鳴で、今は勘弁してやるよ。


「よっ、と」


 まずは一本。足元に転がっていた、俺の何倍もある倒木を、片手で掴んで肩に抱える。そのとき、ちょいとだけ激しく揺れたが、幸いにも、それでもう片方の彼女が起きることはまったく無かった。やれやれ、存外たくましいお姫さまだ……おっと、“元”を付けなくちゃだったな。


 あとは、間抜けにも、こちらの意図にまだ気付いていない、大口を開けてまっすぐに向かってくる大蛇(馬鹿)に、大木の先を合わせ、


「っそら!」


 投擲。そして──被弾。


 投げた大木は、当然こちらが意図した通りに大蛇の鼻っ柱に命中。ついでに、勘当までは至らなかったが、……当てた箇所から、白いさらさら(・・・・)とした液体……恐らくこいつの血が大量に吹き出していた。


『?……』


 ああ、そうだ、そうだよ、その面だ。俺が見たかったのは、その、どうして自分が傷付いているか分からないっていう、その間抜け面だ──さて、


『ぎ、ぎゃ、


ぎゃがじゃあがああああああぁ!?!?!?!?』


 お前は今、狩られる側(・・・・・)だってこと──理解、できたか?


『ぎぎ、がぁ……!』


 おおっと、せっかくここまで来たんだ、空なんて無粋に逃げずに、もう少し楽しんでけよ──大災害(隠れん坊)


「おっ、らぁ!」


 近場の大木を片手で掴み、肩に担ぎ、今度は翼に向けて、少し力を込めて、ぶん投げる、が……風。


 突如として、あるいは予想した通りに、大蛇の周囲に、恐らくは見境など無く強・弱、東・西・南・北関係無く、あらゆる方向からあらゆる風という風が巻き起こる。


 これでは当然、さきほど投げた大木の矢など、それこそまさに木っ端のごとく、その身をどこかに放り投げてしまい、……結果、あいつは、自らの領域である上空へと逃げ出した。

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