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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第三歴 勇者の盾、その服飾。
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第七話

「にげ、」


 ろ、と、彼女を押し出す寸前、それまで真っ青だった空に、まるでベールを剥がしたかのような一瞬で、巨大な……それこそ、聞いていた通りに、人をいくつもまとめて飲み込めてしまいそうな、白銀色の蛇が現れる──その体躯に見合った大口を、がっぱりと俺たちに向けて。


 そこでようやく、彼女にも事態が──身に振りかかりつつある危険が頭に浸透したのだろう、ひく、と、泣き出す寸前の恐怖(こえ)を漏らしかけ、けれどそれすら感情に奪われたのか、それきり喉から音は出さなかった。


 近くに来ているのはわかっていた。だが、くそ、これは……いや、考えんのはあとだ、まず、


「お腰を失礼!!」


 彼女を、肩に、担ぐ。それも腰に腕を回してガッチリと。


 彼女は色々起こる突然に、もう抵抗する気力すら起きないのか、意外にも拒否無く素直に俵持ちを受け入れ、……ってよく見たら気絶してんじゃん、どうりでぐねぐね揺れると思った──と、それどこじゃねえな、


「まずはこれでも食らっとけやぁ!!」


 地面を、半分の脚力で、抉りながら蹴り飛ばす。


 すると当然、そこにあった土やら花やら、その過半数が一気に正面、そう、つまりがばかばに開いた蛇のお口に強制的に突入していき。するとどうなるかってえと、まあ単純な話──ばくん(・・・)


 そう、入った何かを確かめるため、一時的に、俺たちにとっちゃ地獄の門だったお口ちゃんが思いっきり閉じる──よし、昔の知識その一、補食の際の対処法、完璧に決まった逃げるっ!


 ここで焦ってタテに逃げるのは三流、それができるのはおそらく勇者一行の斥候ちゃんだけだろう、だって全速で飛んでる飛竜に走って(・・・)追い付けるからな、なんなのあいつホントに人間?


 俺はしがないおっさんだから、横に逃げる、そして姿がぎりぎり見える範囲で立ち止まる……これも対処法。盾役のだけど。


 蛇は口と喉をもごもごと動かしたあと、再び口を、今度は少しだけ開けて、入ったものを……おや、土だけか、花は呑み込んでる。雑食だったっけ、確か肉しか食わなかったような……


 いや、今はそれどころじゃねえか、とりあえず、隠れる……のは、無理か、無理だな、流石に目立つ要素が多すぎる……あいつ目はそんな良くないから、それができればやり過ごせたかもなんだが。


 それが出来ない、と、なると……逃げる、しか、ないが……確か、あいつって、自身の姿が見られる範囲なら、ちっさい風使って、獲物が、いるか、いないか……ざっくりと、探せるはず……ん、担いでいる彼女の髪が……ゆれ……あ、


 やっべ。見つかった。


『ぶしゅ、るるる……』


 ゆったりと。それこそまさに鎌首をもたげながら、舌をちろちろ出して、こちらの詳しい位置を探り探り、ずる、ずる、ばきばき、と、確実に、近づいてくる。


 落ち着け。落ち着け。ゆっくり、ゆっくりだ。ゆっくりと、少しずつ、位置を、ずらしていくんだ。まだ、ばれていない。まだ、あいつの感覚器に、俺たちの姿は、詳しく捉えられていない。見失ったまま、の、はず。


 だから、慎重に。気を払って。音を……いや、音は立ててもいい。どうせあいつには、足音以外感じない。そこにさえ注意すればいい。だが、派手には動くな。周囲に張り巡らされた風を、揺らしてしまう。ばれてしまう……


 ふぅ、ふぅ、と。思わず感情で乱れた息が、口からわずかに細かく漏れる。だがこれぐらいならいい。構わない。あの図体はそれ相応に鈍い(・・)。だから風で探知の補助をしている、気づかない。気づかれない。


 だが……どうする。このままでは、見つかりはしないものの、それでも逃げられもしない。膠着している。固まっている。どうしようもない……いや、頭を固まらせるな、思考を停止させるな、死神の足音はまだ遠い、まだ絶望には、ほんの足の先ぐらいまでしか浸かっていない。


 考えろ。よく相手を見ろ。情報を獲れ、思い出せ、打開する道はあるはずだ、無ければ自分で拓いてみせる、つーか拓かないと、待っているのは死神の鎌が付いた行き止まり(デッド・エンド)だけだ。


 そうだ、よく、よく、観察しろ。あの忌々しい白銀の蛇を、余すところ無く……ん、あれ?


 あいつ。あれ、なんで表皮が白銀なんだ?


 いや、あれ、確か、あいつの皮って、確か鱗含めて全体が透けるような(あお)だったような、あれ俺の記憶違いかな、だとしてもこんなに違うってあるか、どういうことだいったい。


 もしかして、別人……いや別蛇かこの場合、別蛇なのか? けどあの能力の一致、さすがにそれはあり得ない。つーかあんなやべーの何頭もいてたまるか、しかし、うーん……

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