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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第三歴 勇者の盾、その服飾。
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第三話

 子供はどんな世代のどんな種族だろうと、強い。いや強いってか元気。遊びになると体力底無しだよなあいつら、付き合ってみて改めて実感したわ。


 やー、何が大変かって、やたらとこの体に上ってきたり叩いてきたり、挙げ句にはあれよ、ぶら下がってきたり。はは、うん、でも結構楽しかったな……なんというか、久々に童心に帰ったというか。


 けどやたらとこのシーツ剥ごうとしてきたのは冷や汗もんだったな、危うく院長さん(女性。結構若い)や、従業員さんたち(女性。てか少女)の前でごっついだけの諸肌晒すところだった、危ない危ない。


 でも、なんだろう……最後のほうは、従業員さんたちが、そうけしかけていたような……いやいや、無闇に人を疑うのはよくないな、気のせい気のせい、きっと頬に紅が差しているように見えたのも気のせい気のせい。


 しっかし、明るくなってきたな……ま、子供たちが一眠りするまで遊んでいたんだから当たり前だが。もうお日さんも中天でぎらぎらと輝いている。今の季節は夏ではないはずだが、さっきまで体を動かしていたせいだろうか、けっこう暑くなってきた。


 もう少し日が暮れれば涼しくなってくれるだろうが、これからの予定を考えるとそうもいかない。俺はできるだけ早くこの彫刻のモデルみたいな格好から逃れたいんだ、さっさと材料集めにいきたい。出来れば日が落ちる前に。


 というわけで、壁際に預けていた背を離し、あらかじめ話を通していた院長さんの元へと向かう……と、そうだ、あいつも一緒じゃないとな。確か子供たちを寝かし付けるために子供部屋に行ったはずだが……にしても遅いな、ちょっと迎えにいくか。


 向かいながら、なんとはなしに、周りの、というよりここのひとたちの様子をぼうっと見る。


 なんというか、……こうして見ていると、本当に、人間と、変わらない。や、そりゃ肌とか目とかの色は違うし、ところどころ違和感を覚える習慣があったりするが、それでも、この、子供たちや、自分たちのために、細々(こまごま)と、あるいは甲斐甲斐(かいがい)しく働く彼女たちは、種族関係なしに、えらいなぁ、すげえなぁ、と思えてくるのだ。


 俺は、こういう、なんというか、子供が笑顔でわちゃわちゃしているところには、あんまりいなかったから、余計にそう感じる。歩いてきた道と言えば、魔王討伐の旅もそうだが、その前の、傭兵として食い繋いでいた時分も、はっきり言って、こんな平和はどこにもなかった。


 あるのは、血と、臓物と、ばらばらになった、沢山の、誰かだった(・・・)残骸。


 あったのは、正義なんていう大義名分(やすざけ)に酔っ払った、誰かの振り上げた武器。打ち下ろされた凶器。


 なんにしても……ろくなもんじゃ、なかった。


 だから、ここは、こんな場所は、俺にとって、とても新鮮で──とても、とてもとてもとても──


 眩しく。目が眩んでしまうくらい、眩しかった。


 思わず、眼を細めて、手をかざしてしまう……見ていられない。まだ、じかに見るには、自分の過去も心もくすみすぎている。


 ああ、さっさと、彼女の元に行ってしまおう。場違いだ、場違いなんだ、こんな、未来(あした)ってやつが、みんな、何も疑わずに、また自分たちに降り注ぐ、と信じているひとたちの中ってのは。


 俺には、とても、いられないんだ。


 はぁ、と。思わず、本当に思わず、ため息が口から漏れる。


 あのとき。あの、傭兵から魔王討伐の一行に加わったとき。もう、こんなことは思わない、と、思っても仕方無い、と割り切ったはずなのに、それでも、やっぱり、俺は……こんな、人々の平和の中で、なんて、暮らしては……過ごしては……いや。


 いや、やめておこう。そんなことは、今思ったってしかたのないことだ。だから切り替えよう、目の前のことに集中しよう。


 一つ、深く、呼吸。そうして頭の中を、意図的にカラにして、今すべきことだけを思い浮かべる。


 ……。……。よし、いけそうだ。とにかく、服の確保。正確には材料の確保。それに一点集中、といこうじゃないか。


 さて。いつの間にか着いていた子供部屋のドアを、優しくこんこん、と。


 するとはぁい、なんて、今までの彼女からはあまり想像できない優しく柔らかい声が返ってきた。


 そうか、今まで子供を寝かしつけていたのだもんな、そりゃその態度がまだ声に残るか……にしても、こんな声出せたのか、今まであまり聞いたことが無かったから少し驚いてしまった。


 一拍間を置き、名前と用件。


『ああ、なに、あんただったの。確かにそろそろ行かないと帰りが遅くなっちゃうか……でも……』


 少し、困ったような声。


 どうしたんだ、と、尋ねると、少しためらうような間を少し置いて、やがて意を決したように事情を(ドア越しに)語り始める。

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