表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第三歴 勇者の盾、その服飾。
25/88

第二話

 そうして予定通り部屋までたどり着き、座って一つ息を吐き、そこでふと、ああ、そうだ、知識があるかはわからないが、相談する相手なら、ここの家主がどうにかいたか。と、彼女の存在に思い至った。


 だけど、えっと、あいつって今どこにいるんだ? 確か普段は村の外れにある孤児院みたいなところで働いてる、と言っていたが……ああ、じゃあ、ちょっと無理か。さすがにこんな格好でそんなとこに押し掛けるわけにもいくまい。そうでなくてもようやく打ち解けてきたんだ、それをこんなところで台無しにしたくは、ないなぁ……


 そうなると……相談無しで、材料集めに向かうことに、なるか。なっちゃうか。うーん、でも、俺ってまだこの辺りの地理に詳しくないんだよな、誰か……別に服に詳しくなくてもいいから……案内が、ほしい。


 けど、そうしようとすると……やっぱりこの格好が……ネックに……うん、うん、うーん……


 あ、そうだ、思い付いたぞ、この家の中で隠せる何かを探しちゃえばいいじゃん……っても、この部屋で使えそうなのは、俺が寝るときに使っているでっかいぼろぼろのシーツぐらいで……ええい、背に腹は変えられない、これを被って誤魔化すことにしよう。した。


 さあ、これでまだマシな格好にはなれたし……いくか、案内役探し……!





 結局、村の中で、素材集めに協力してくれる人はいなかった。


 いや、急なお誘いをしたこちらも、まあ悪かったんだが、それにしてもあまりにもそっけない対応だった。


 まあ、出会って数日の人間だし、それにこんな、ぼろシーツ被ったやつとお出掛けなんて誰でも断るだろう。俺だって知らないふりするわ。しかもここ例の談合があった広場だしな、今の俺と話したら注目度がヤバい。しかも負の方向に。


 となると……やはり……元から知っている、家主の元に、向かうしか、ない……引き受けてくれるかどうかは未知数だし、そもそもこんな格好でいったらドン引かれること間違いなしだし、子供たちにも同じような目で見られるだろうが……それでも……これからの生活を考えると……恥を忍ぶ、覚悟を、決めなければ……!


 ……よし。よし。よし! 腹ぁくくった、さっさと行って済ませてくっか! さあいくぞ、いざいくぞ、子供たちに恥を晒しに「あんた、ここでなにやってんの?」はうあ!?


「しかもそんな、……えっと、ぼろ布? なんか……着て……着て? うん着てるのよねそれ。


ちょっと家主として恥ずかしいから、お化けごっこは家の中だけにしてくれない?」


 救世主。救世主が現れた。現れてくれた──魔界に女神とはこのことだ、俺は今初めて存在すら信じていなかった女神様に感謝を捧げている。


 いや、今はそんなことより、事情を説明するほうが先だ。とにかくこの困難へと至った経緯を説明しなくては。


 俺はこれまでの苦労を情感たっぷりに語って聞かせ、そこから改めて、服の素材探しの手伝いを頼み込んだ。


 すると彼女は、同行自体は承諾してくれたものの(なんでも村でそんな格好され続けたら、自分がとびきり恥ずかしいから、だそうだ。……恥ずかしい存在ですまんな)、しかしまだ仕事が残っており、今こんな仕事場から離れた場所にいるのも、ここを通って子供たちの日用品を補充するための、この先にある商店通り……通称“自然の恵み通り”に出るためであるという。


 そりゃそうか。仕事終わったんなら素直に家に帰ってるもんな……さすがにそれほっぽって付き合ってくれとは、ちょっと言いづらい。


 でも、今、ここで彼女を逃してしまったら、ほかに付いてきてくれる人なんて、……今までの展開から出てきてくれるとは思えない、こいつをここで離してはいけない。


 そうなると……うん、こうするしかないか。


「なあ、ちょっと聞きたいんだが……


お前の仕事に、今、男手って、いる?」


 その問いを聞いて、意図を理解してくれたのだろう、彼女は顎先に手を当て、悩むように少し唸ると。


「まあ、……まあ、くれるって言うなら、要らないこともないわね。


ただ、そのシーツ、ちゃんと着直しなさい。いやシーツって元々身に付けるもんじゃないけど、せめてそのお化けスタイルはやめて。上半身隠すだけにして。顔もちゃんと出して。人前に出るんだから、面倒がらないで、きちんとしなさい」


 ……はい。ごめんなさい、ちょっと手間省いて上から羽織るだけにしてたのは、はい、反省してます、はい、完全にはしゃいだ子供か、ただの不審人物でした……すいません……


「ん、分かればよし。それじゃあさっさと付いてきなさい。まずは買い物して、それから……


子供たちの相手、たっくさんしてもらうから」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ