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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第二歴 勇者の盾、その転職。
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第十一話

 そして目を閉じ……そこで、ふと、疑問が湧く。


 そういえば。どうして彼女は不可能の蒼、などと呼ばれていたのか、と。


 いや、正直に言えば、あれだ、このまま眠るまで目ぇ閉じたまんまだと、また余計な事までぶり返してきそうで、だから無理矢理思考題材を見つけた、というのが正しく、けれど一度気になったからにはまるで息を吹きいれた袋のように、どんどんと興味が膨らみ、しかし、これは当人にとってはデリケートな問題だろうから、直接問いただす、というのは、ちょっと……気が引けてしまう。誰だって心の柔いところを土足で踏みにじられたくないだろうしなぁ……


 じゃあ、どうするか……なんてらそんなの、決まっている。どうせ元々そのつもりだったんだ、とりあえず、今まで与えられた情報を元にして、眠気が訪れるまでは考えてみる。これしかない。


 じゃあ、まず、あだ名の由来から考えていこうか……まあ本人は髪の色から因まれた、などと言っていたが、けど、別に……そんな、彼女、あれだよな、別に不可能、なんて呼ばれるほど無能ではないよな、普通に魔だって使えるし、いやそりゃ昔相対した魔族よりはちょいと幼いし拙いが、それはその対したやつらが大したやつらだっただけで、きっと真っ当な平均的魔族ってんなら十分能力を満たしている。


 じゃあ、何が“不可能”なのか。多分だが、これは彼女が元(俺がそうしちまったんだけど)王族、つまり高貴な血統であるところに関係しているんじゃないだろうか。


 彼女は言っていた。自分は妾、つまり魔王が正式に娶っていた以外の女性から生まれた娘だと。つまり真っ当な生まれではない、と。だから魔法も下手で、いざというときの予備でしかないのだと。


 魔王。魔の王。俺はわずかしか相対していないが、確かにその実力は高かった。それだけではない、あの身体から滲み出ていた圧力を伴った威容、声に乗せられていた絶対的自信……それらは確かに魔の種族を束ねるほどの圧倒的威信を感じさせた。


 確かにそこから鑑みれば、彼女はあまりにも、その姿とは似ても似つかない。血を引いてるなどと、当人の口から言われなければ気づかぬほどだ。到底次代の魔王などには成ればしないだろう。


 加えて、王位継承権。彼女は一番下だと言っていた……ああ、なるほど。ここまで思い至れれば、例え間違いであっても、それなりの予想はつく。


 つまるところ、彼女は間違いなく、魔王の座など受け継げない──継承権(手にする権利)はあるくせに、けれどその力と生まれの低さから、絶対に掴み取ることが“不可能”な……


王族としての(・・・・・・)


出来損ない(・・・・・)なのだ、と。


 つまり、彼女のきょうだいたちは、このことを揶揄して、彼女にこの名前を与えたのだろう……《不可能の蒼》と。


 ……。むなくそ悪い話だ、だが的を射ている。そして彼女はそうであるからこそ、弱くて戦えなかった(無能だ)からこそ、こうして生き残り、強くて戦えた(有能だ)からこそ、ほかの血族は死に絶えた。


 ……皮肉な話だ。有能ゆえに滅亡し、無能ゆえに生存する。弱肉強食の真逆を辿った結末(おわりかた)


 だが、その終わりは……ある意味では、生き残った彼女を救ったのかもしれない。残酷なことだが。


 だって、そんな排他や差別を受けながら、これからの長い一生を送っていくよりは。こうして、ただの村娘になってしまった今のほうが、よっぽど、よっぽど……いや。


 いや、それは俺が思うことじゃない、考えることじゃない。それ以上は……乗り越えた彼女への、失礼にあたる。やめよう。そして寝よう。ちょうどいい感じに眠くなってきたし。


 よし、それじゃおやす






 さて、その後の顛末はといえば、誰もが予想しうる想像通りに、俺はきちんと村の一員として認められた。


 とはいえ、そこまでに、また一悶着あった……と、いうのもだ。あのあと、朝に目覚めた俺たちは、きっちり村に帰って例の牙を納品(運ぶのほんと大変だった。途中の木々に引っ掛かりまくったし)し、見事村長から直々に村の一員として認められたのだが、当然、それで納得しないやつらも出てくるわけで。そいつらへの対応が、これまた大変だった。


 何せそいつら、わざわざ村の、よりにもよって俺を村人として公言するための会合の真っ最中に割り込んで文句付けてきやがったのである。まあ、そこまではこっちも、なんとなく来るかなぁ、とは予想していたから、その時はちょっと面倒だなぁ、ぐらいにしか思っていなくて、だから村長が反骨者たちを説得している様をぼーっとその隣で見ていたんだが……そこで、いきなり、最前列で見ていたマラヤが、肩を怒らせてその連中に食って掛かっていったのだ。


 いわく、自分がこの目で見た俺の実力を否定することは、自身への侮辱にも繋がる。お前たちはこの脅威を取り除いてくれた新たな村人ならず、王族(自分)まで汚すつもりなのか、と。ここで驚いたことは、彼女、公的な場だときちんとした王族っぽい口調に整うって事実だ。顔に出さないのが大変だった。


 これにはたまらず、その連中も口を閉じるしかない……何せ彼女は、失墜したとはいえ、今じゃ唯一残っている王の血筋だ、特に魔族はそういう格式ってのを重視する種族で、だからその時はすごすごと壇上から引き下がっていった。

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