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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第二歴 勇者の盾、その転職。
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第七話

 さあ、ここからは俺一人での行動となる。案内役はこの少し手前の安全……いや、本人は安全って言ってたけどどうなんだろう、いや、あれからあの猪以外の脅威には会わなかったし、一応は安全か、うん、とにかく安全な場所で待機している。ついでにこっちの監視も。


 まあ、元々俺個人に与えられた試練だしな、むしろ付いてこられると、これからやる作戦の邪魔になっていたから、むしろありがたい。


 じゃあ、早速開始といこう。まずは巣の中を覗いてみないと……なるべくゆっくり、音を立てんように、慎重に……と、あれ、うん? ちょっと暗くて見えんな……あとなんかやたらと獣臭いし、や、仕方の無いことだけれども。


 しっかし、まいったなぁ。俺、夜目が利く方では無いんだよな……斥候ちゃんなら、こんなもん無いも同然だったが……おっと、いきなり首がむず痒くなってきた、思い出すのやめよう。


 どっかに明かりにできるものでもあれば……いや、そんなことしたら格好の的か。やめとこ。目が慣れるの待つのが確実だな。


 しかし、意外……なんというか、この巣は、慌てていない。既に自分達の警邏(けいら)が戻ってこないということに、疑問を覚えていてもおかしくない頃合いだ。少なくともあれから十分以上は立っている。いくら獣同士の取り決めったって、そこを疑問に思わないのは、あからさまに不自然だ。


 いや、単純に、まだ、全員がこの警邏の喪失に気づいてない、という可能性も捨てきれないが、だとしても。この巣に自分達以外の何かが近寄ったことぐらいは分かるはずだ。何せこの原っぱの草、ほとんどが水気を含んでいない、要は踏むとがさがさと音が鳴ってしまう背の短い植物で、そんなんが洞穴の周りにびっしりと生えてしまっていて、というか俺さっきから結構な頻度で音を鳴らしまくっている。


 だから気付いて当然自然のはずなの、だが……やはり、しない(・・・)


 本来であれば何かしらの反応、例えばいきり立った巣の住民達が一斉にこの入り口に向けて走っているとか、そうでなくても警戒・威嚇の鳴き声をあげていてなくては、おかしい(・・・・)



 そして今、そのおかしいことが、目の前に広がっている……なんだ、この不自然は。違和感は。すげえむずむずする。首の後ろがちりちり(・・・・)と、なんかさっきからうるさい。


 この感覚は、もう、勇者一行との旅で幾度も味わった、もう味わいたくはないと思った、思い出したくもなかった、あの、俗に言う……嫌な予感。虫の知らせ。死神の足音……つまり、なんだ、


『ぶぐ、るるるるるぅう……』


 くぐもった、複数の、四方八方からのうなりごえ(・・・・・)。と、同時に、ずしん、ずずしん、と、大げさな足音を立てて、……のそり、と、猪の群れが、周囲から現れた。


 いや、周囲からってか、これ完全に囲まれてますね……しかもじりじりとその筋肉質なわっかを縮めてやがりますね……完全に嵌められましたね……


 うーん、これ、結構面倒かもだな……せでかくこっちが考えた、《出口に陣取って一頭ずつ仕留めよう大作戦》が、もう使えなくなってしまった。これなら俺が一回一回受け止めてからぶん殴るおえっぷだけだからまだ楽で済んだのに。こうも徒党が活かせる状態に持っていかれたんじゃ、こっちもこっちで対応を変えざるを得ない。ほんとめんど。


 ま、面倒がっていても仕方無い、こういう時はまず群れの長を、他の奴らに見せつけながら倒すのがげぶ手っ取り早い。動物って報復より生存だからな、そうすりゃそれこそ蜘蛛の子を散らすように逃げていくだろ。


 そういった意味では実におあつらえ向きな状況、とも言える。言ってないと面倒が先に立ってげんなりするからそう思うことにしよう。


 さって、それじゃあぐるりと威嚇三昧の猪リングを見回して……お、いたいた、あれだな、あの一……二……三……回りぐらいか。ぐらいだな。ぐらい身体も牙も大きいあいつが長だ。動物の序列ってでかいのがいっちゃん上ってのが多いからな、あれで合ってるだろう。


 よし、それなら、早速喧嘩ををっぷ売りたいところだが、でも大抵こういう知恵が回る獣って……あ、一歩下がりやがった、くそ、やっぱりまず手下で俺の実力を測ってから襲ってくる気だな、そりゃそう簡単にはいかないか。


 だが。まだ不可能になったわけではない。例えこうしておっと手下どもが俺の前に立ち塞がって、というか突撃してこようともっとととこっちが相手をしなけりゃいい、つまり避けるか受け流すかして巨体もろとも逸らし続けてどかし続ければいいだけの話だ、いや避けるのは身体重くて無理だから受け流し一択だけどいしょっと。


 あの斥候猪を受け降ろした時に、大体の重さは分かったし、衝撃を逃がしたり逸らしたりするのは、これでも一応元盾役だもの、やり方やそのコツぐらいなら習熟している。むしろ今までそうしてきた相手よりは軽い部類に入るな。はっきり言って楽勝楽勝。


 いや、それでも当たる際にちょっとは下がっちゃうから、進めているのは、足の遅さも相まってあんまり近づけてない。むしろちょっと遠くなってる。長も動かないわけじゃないし。

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