第17話 キチキチマシン猛レース(本戦後半)
余ったお菓子を袋詰めにしたリリアンは、立体交差から見えるオーロラビジョンでレースの状況が色々と中継されていた。
ちなみにリリアンは自分のパンツ丸見え雄姿はお菓子に気を取られていた為に気付いていない。
「さて、そろそろコースに戻ろうかな。」
アシスト自転車に戻ろうと後ろを振り向いた時、再びオーロラビジョンのカメラがリリアンのバックショットを映した。
風にはためくミニスカートに見え隠れする青と白の横縞のパンツがオーロラビジョンにデカデカと...
そのオーロラビジョンを目にしたドルトンは両手を合わせて拝んだ後に気絶してしまいマリーに引きずられながら病室へと戻されていた。
ドルトンの顔はやり遂げた漢の顔をしていたのは言うまでもない。
お菓子のばら蒔きでローションも乾いて来たのでブラが透けるのは無くなったので片手運転の心配は無いようだ。
「あはは、もう見せ馴れてきたわ。」
パンツのちら見え問題に関してはリリアンは諦める事にした。
女としての何かを諦めてる気がしないでもないが。
リリアンが立体交差を下る途中でリリアンを追い抜く四輪車がいた。
「...二人乗りなのか。」
ゴツゴツしたウレタンの車体に二人ともこん棒を振り回しながら周囲を蹴散らしながら走る。
リリアンを追い抜いた時は下り坂とカーブの遠心力で、こん棒攻撃どころじゃなかったのでこん棒攻撃は無かった。
「あらまぁ、これはラッキー。」
リリアンの前方で勝手に露払いしてくれる。
ちなみにこの二人は後々リリアンファン倶楽部の会員No.2と3に認定される事となる。
レース開始から一時間が経過した。
レースはだいたい2時間で終了する予定で、規定時間終了後に予定以上の距離を走った者の上位から順位付けされるのだが、リリアンは数えるのも面倒な程周回遅れとなっており上位入賞から程遠い立場となっている。
リリアンの目標はリタイアしない事なので変な攻撃さえ喰らわなければ大丈夫かと思われた。
ただ妨害・攻撃何でもありのバトルなので油断が出来ない。
特に厄介なのが転がって来る火の付いたスポンジ。
前方が火で塞がれた場合は全身に水をかぶり突入するしかなく、リリアンが水をかぶる度に遠方の観客席がどよめくのだが、まさかずぶ濡れで胸やお尻がズームカメラに写されてなんて夢にも思っていない。
早い話、女だらけの水泳大会とかで、どこぞとも知れない女優がポロリ担当なのと同様に、リリアンは獣人レースにおいては、お色気担当の立ち位置なのだ。
「おっ!ミーシャ発見。」
リリアンの前方200メートル先でバイクから降りて誰かと戦っている様子だ。
相手は犬人ではなさそうな感じだ。
そもそも犬人達はロードバイクを四人集団を維持しているのを先ほどスタート地点のビジョンで判っているからだ。
一見ミーシャの攻撃相手は、人間を相手にしている様に見えたが多分猿だ。
「何であんたがこの世界に来ているか教えて貰えるかしら?」
「はん!オカマ猫に教える訳無いじゃん!」
『最初の飼い主の趣味だもん!』
猿人は手持ちの長い棒を地面に突き立てて、その先端の細い場所に器用に座っており、ふてぶてしい態度でミーシャを小馬鹿にしている様子だ。
『ミーシャ何があったの?』
リリアンが二人のいがみ合いの場所に到着した。
「気をつけてリリアン、こいつは斉天大聖。私と同じ妖怪だよ!」
そのセリフを聞いた斉天大聖と呼ばれた猿人が鼻で笑う。
「そりゃおとぎ話の名前じゃん?車 泰朝ってちゃんとした名前があるよ。」
車 泰朝は西遊記の孫悟空のモデルになった実在した僧兵。
実際は一人旅で天竺へ行ったのが、その設定が三蔵と同じと言う事で、西遊記では孫従者と設定されているが本来はそれぞれ違う物語だ。
「それにミーシャ...あんたオカマ猫だったの?」
斉天大聖に気を取られていたミーシャがコケた。
『今はそんな事どうでもいいわよ!!』
「そこ重要じゃん?だって幼女に見える少女趣味の少年妖怪って要素多すぎてツッコミきれないじゃん?」
「...それは説得力ありすぎて納得だわ。」
「そういうお姉さんも薄着って言うか下着で走って何のアピールじゃん?」
「私もそんなアピールしたくなかったわよ!」
リリアンの最後の砦であるミニスカートもコゲてるので、角度次第では隠れてもいない有り様だ。
「あはは、オイラ正直だから思った事をつい言っちゃうんじゃん。」
「気を付けなさいリリアン、そいつこの世界で言うところの白魔法を使うわよ。」
それを聞いてリリアンはちょっと納得した。
術者のテンションで威力が変化する白魔法は術者は相手を少し舐めた態度でいる事が多いからだ。
「おいおい!オイラの仙道と訳の解らない魔法と一緒にするのは失礼じゃん。仙道は己の修行の境地じゃん。」
「じゃあ聞くけど、あんたの気持ちで威力や成功率が変化する?」
「そりゃそうじゃん。」
「仙道って相手を直接攻撃したり命を奪ったり出来る?」
「無いな。」
「少なくとも仙道は白魔法系の一派っと...」
リリアンは仙道に関するレポートをノートにまとめていた。
「お前何をしてるじゃん?」
「いや...地上に帰ったら卒業論文に使えそうだな~と思ったの。」
『ちょっと!斉天大聖。私を無視しないでよ!早く元の世界に帰る方法を教えなさい!』
ミーシャが斉天大聖に詰め寄る。
「教えても無理じゃん?お前さんこの世界に呼ばれて来たじゃん?なら目的が達成されるまで帰れないじゃん?妖怪ってそういう存在だし。」
「...じゃあ、あんたの目的って何よ。」
「言っても理解出来ないじゃん。少なくともオカマ猫の目的とは被らないから大丈夫じゃん。」
一方その頃観客席のオーロラビジョンにリリアンとミーシャと斉天大聖の三人が映っているが、
まるで格闘ゲームの試合前みたいな斉天大聖&ミーシャVSリリアンといった感じに見える映像になっていた。
「オラは行くだよ!!!」
それを見たドルトンはスーパーサイヤ人のようなオーラを出しながら現場へと爆走し始めた。
一方、現場では...
リリアンが斉天大聖とミーシャに妖怪について質問していた。
「妖怪の本流は神と同じで人々の思いや信じる心から生じるじゃん。」
「...うーん、いまいちイメージ出来ないなぁ。」
そして、程なくして現場にドルトンが登場する事になるのだが...
『うるぁ!貴様ら!リリアン様に何をするだ!!!』
すっ飛んで来たドルトンの槍が斉天大聖の頭上に降り下ろされた。
ガキッ!!!!!
間一髪、斉天大聖の棒がドルトンの槍を受け止める。
『お!お前!八戒じゃん!!!』
『オラはそんな名前じゃねぇだ!!!』
ドルトンの槍が斉天大聖の腰の高さで横に薙いだ。
だがそれも斉天大聖の棒が地面に刺さり受け止めた。
「いやいや、その豚はアビスでメジャーな生き物のオークだし。って言うかドルトンお座り!」
リリアンの冷静な突っ込みが入る。
そしてドルトンがリリアンにお座りと言われて即座に正座してしまう。
「うーん...それにしても似てるじゃん。」
斉天大聖が顎に手を当ててマジマジとドルトンを見ている。
「私の世界ではその猿妖怪とドルトンそっくりな豚妖怪は超が付く程の有名妖怪なのよ。」
「...へぇ~そうなんだ。」
ってミーシャに説明されたところでリリアンとドルトンにはさっぱり理解不能である。
「そんな事よりさ、レース終わってるぽくない?」
リリアンが街頭ビジョンを指すと表彰台に立ってるウェアウルフが映っていた。
『ああ!あの犬いつの間に抜け駆けしてんのよ!』
ミーシャがオーマイガって感じで頭をかきむしる。
「やっと恥ずかしい格好から解放され...ん?恥ずかしい格好?」
自分の姿を見た後でドルトンを見ると...
まさに至福!圧倒的至福!といった目でリリアンを凝視していた。
『何を見てんのよ!このスケベ豚!!』
ゲシゲシとドルトンの顔を踏みつけるリリアンだが、踏みつけられる時のリリアンの下半身のアングルがドルトンにとって超ご褒美なのを気付いていない。
桃源郷にいるかの表情で踏まれるドルトンを見て斉天大聖がこう呟いた。
「...やっぱりこいつ八戒じゃん...」




