第9話 敏捷値の上げ方
僕のプランはこうだ。
まず町にいる名馬についての情報を集める。自分で憑依してステータスとスキルを調べるのでもいい。
名馬とはつまり他より速くまた持久力もある馬のことだ。
他より優れているということは才能かもしくはスキルの恩恵を受けているか。
人間以外の種族でもスキルを使うというのは僕を見たら明らかだ。年を重ねた動物は人間と一緒に暮らすことで知性が芽生えると聞いたこともあるしスキルが使える馬がいても不思議じゃない。
そういう馬から【言語理解】を駆使して悩みを聞き出し【代理執行者】を発動させ、[能力取得]で馬の持っているスキルをゲットしようという作戦だ。
よし、さっそく行動開始だ。
僕は森から抜けて街へと戻ってきた。日はもう傾き空が夕焼け色に染まっている。
町は夕飯時で屋台などが出ていた。
僕は住宅街や商店街を抜けて宿泊施設の多いところまでやってきた。
宿泊施設までやってきたのは、旅人や冒険者たちが使役している馬を調べるためだ。決して泊まるためではない。思わず一文無しだし今日はどこで寝ようか、上空で浮遊して寝るか。などと無意味なことを考えてしまった。睡眠の必要がないというのに、まだこの体に慣れていないようだ。
まぁ、無駄な思考の話は置いといて、早速馬に憑依して調べていく。
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種族:馬(Lv1〜5)
生命力:800〜2500
魔力:30〜70 SP:100
攻撃力:150〜300 防御力:80〜120
敏捷値:200〜300 魔法力:0
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調べてみた結果、これが馬たちのステータスのようだ。
Lv5の馬は数匹しかいなかった。なかなかの駿馬で年齢もかなりで経験豊富そうだった。
Lv1の馬はかなり若い部類だった。ほとんどがLv2や3だ。
スキルも調べてみたがLv5の馬でも持ってる者はいなかった。
(うーん。そう上手くは行かないか…)
今見て回ったのは旅人達の馬だ。特別な馬という訳ではないからまぁ、予想はしていた。
もっと優れた馬なら特別な飼育や訓練を受けていたり保護されていたり位の高い者に使役されていたりするだろう。
(ステータスもコピー出来たりしたらいいんだけどなぁ…)
(はぁ、これで粗方調べ終わったな。さて、これからどうするか。)
ここにいる馬達はステータスは高いもののスキル持ちはいなかった。だが城にいる馬達ならもしかしたらよく訓練されていてスキル持ちがいるかもしれない。
城の方へ向かおう。
僕は既に日も暮れ夜の闇に覆われている街道を1人歩いた。
この世界の移動手段と言ったらやはり馬が多いらしく宿屋の馬小屋にいる馬達を調べるだけで結構の時間をかけてしまったのだ。
民家からも光が消えていく。
街灯という設備もないため辺りは真っ暗だ。
やはり異世界だからか文明が遅れているようだ。街灯がないのは電気が普及していないという証拠だろうな。
再び城へとやってきた。
流石にこんな夜では城門も閉まっている。
(忍び込むか…)
少々不本意ではあるがこっそりと行動することにした。
城主などが使う馬は城内でしっかり管理されている。
レナードの記憶から考えるに城門から入って城の中庭を抜けると1番早く行けるようだ。
早速城内に潜入した。
立派な馬小屋が見えてくる。
十数匹は余裕で飼育できそうだ。
人はいないようで馬達も寝ているようだ。
(それでは調べさせてもらいましょうかね)
一際立派な白馬へと近づき憑依を試みる。
([憑依]!)
『バチッ!』
僕が心の中で唱えるといきなり鮮やかな紫色の光が馬のつけているアクセサリーから迸った。
(な、何が起こった?憑依、出来なかったぞ?)
光はしばらく発せられていたが時間が経つと宝石に吸収されるように収束していった。
どうやらこのアクセサリーによって憑依が弾かれたようだ。
(厄介だな…これじゃあスキルを調べるどころかステータスも分からない。どうしたものか…)
僕は戸惑いその場で立ち止まり考える。
すると僕が憑依しようとした馬が目覚めた。
『お主、何者だ』
馬が僕に語りかけてきた。
(え、え?馬が話しかけてきた…)
とりあえず名乗ることにする。
『ぼ、僕はトオルです』
『ふむ。見たとこ人間ではないようだか?私に何をしようとした?しかもここは城内だぞ。こんな夜中に何の用だ。ことによっては兵士を呼ぶぞ』
『え、えーっと、僕はですね霊魂族、です。強い馬がいないか探してここまで来ました。』
『ほう、霊魂族か。珍しい。そんなやつが未だに居るとは』
『え、霊魂族について知ってるんですか?』
『あぁ、知っているさ。と言っても実際に遭遇するのは初めてだがな。で、強い馬を探しているって?』
『え、あ、はい』
『なんのために探しているんだ?』
『え、えーっと。それは…』
(や、やばいー考えてなかった…な、なんて答えよう…)
『なんだ?なにかやましいことでもあるのか?』
『いえいえ、そんなことは…』
僕は冷汗がでる思いだった。
『やましくないなら答えてみよ』
『え、あのですね。ちょっと馬さんの悩み事とか聞いて解決してあげようかと、そんな感じで参ったわけです。はい』
『ふむ。全くの嘘という訳ではないようだが…なにか隠しているだろ?ただの善意か?』
『か、隠し事なんてしてませんよ〜ハハハ』
『それは嘘だな』
(な、なんで分かるの??)
『まぁ良い。害を加えるつもりはないようだしな。私も協力してやろう』
『え、本当ですか?』
『あぁ。で、私も悩みがあるんだが?』
『え?』
『む?聞いてくれんのか?』
『いえいえ!き、聞きますともー!』
(うー…スキルを持ってる馬の悩み事を解決するつもりだったのに…)
『で、悩みというのはなんでございますか?』
『あぁ、最近走りすぎて腰が痛くてのぉ』
『え…』
『冗談!冗談じゃよ!』
『…』
『そう冷ややかな対応をするでない!』
『あ、あの冗談とか要らないんですけど。もう少し僕に解決できるような話にしてくださいよ』
『む、すまぬ。ちょっと茶目っ気が出てしまったのう(キャピ)』
僕はその場を後にしようとした。
『ちょ、ちょいまち!この馬のおじさんやべーみたいな感じでどこかに行こうとしないでおくれ〜』
『え、事実じゃないですか。なんですか、馬がキャピって。どこにも需要ないですよ?ドラゴンのツンデレすら需要なんてないんですから!』
『最近の若者は冷たいのぉ』
『あなたが悪いんじゃないんですかねぇ?』
『うぅ、すまん。真面目に話すから聞いておくれ』
馬のおじさんは今度こそ反省したようだった。
『はぁ、分かりましたよ…』
『ちなみに私はこの地域では特に優秀な馬だと言われておった』
『ふーん…』
『な、なんじゃ。その絶対嘘だろみたいな反応は!』
『え、嘘じゃないんですか?』
『こんな嘘はつかんじゃろ?』
『え…』
『コホン。まぁ良い。私の悩みをぜひ解決して頂きたい』
そうしておじさんはやっと悩み事について話し始めた。
ツンデレドラゴン…誰のことでしょう。
スライムに叱られてるあの方です。




