↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時根の手記  作者: 時根脱才 


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/14

第6話 ボツ

第6話 ボツ


 昨日。


 俺は最後に、こう書いた。


 今回は。


 結構。


 自信がある。


 ……あるんだけど。


 なぜだろう。


 最後にそう書いた途端。


 ものすごく。


 嫌な予感がしてきた。


 結論から書こう。


 嫌な予感というものは。


 たまに。


 恐ろしく正確に当たる。


     ◇


「ボツ」


 ミドリは言った。


「…………」


 俺は黙った。


「聞こえた?」


「聞こえた」


「じゃあ、その顔やめて」


「どういう顔だよ」


「ものすごく納得してない顔」


「納得してないからな」


 昨日。


 あれだけ苦労して考えた話だ。


 朝から机に向かって。


 何時間考えても出てこなくて。


 図書館まで行った。


 動物の本を読んだ。


 昆虫も。


 昔話も。


 民話も。


 機械も。


 関係ありそうなものから。


 関係なさそうなものまで。


 散々見て。


 それでも出なくて。


 最後。


 風呂に入って。


 ようやく出てきた。


 それを。


「ボツ」


 たった二文字。


 ひどくないか。


     ◇


「どこが駄目なんだよ」


「全部が駄目とは言ってない」


「じゃあ使えるだろ」


「そういう意味でもない」


「どっちだよ」


「だから説明するから聞いて」


 ミドリが原稿を机に置いた。


 正確には。


 まだ原稿ではない。


 プロット。


 怪人の設定。


 大まかな展開。


 それをまとめたものだ。


 ミドリは。


 俺が描いた怪人の絵を指さした。


「まず、この怪人」


「格好いいだろ」


「うん」


「じゃあいいじゃん」


「話を聞いて」


「はい」


 怒られた。


     ◇


「怪人そのものは面白いと思う」


「だろ?」


「能力も分かりやすい」


「だろ?」


「見た目も悪くない」


「だろ?」


「だから黙って聞いて」


「…………はい」


 褒められているのに。


 なぜ。


 ボツになる。


 意味が分からない。


「問題は、こっち」


 ミドリが。


 プロットの後半を指した。


「この展開だと、怪人の能力と主人公が戦う理由が、最後までうまくつながってない」


「つながってるだろ」


「時根の中ではね」


「俺が描いてるんだから、それでいいだろ」


「読者にも伝わらないと駄目でしょ」


「…………」


 それを言われると。


 弱い。


     ◇


 説明された。


 最初は。


 反論した。


「いや、ここで分かるだろ」


「分からない」


「この台詞がある」


「その台詞だけじゃ足りない」


「だったら一個足せばいい」


「そうすると今度は、この場面がおかしくなる」


「じゃあ、ここを変える」


「そこを変えたら前半の伏線がなくなる」


「だったら前半も――」


 そこで。


 止まった。


「…………」


「分かった?」


「…………ちょっと待て」


「うん」


「これ」


「うん」


「直すっていうか」


「うん」


「ほとんど作り直しじゃないか?」


「そうね」


「…………」


 ミドリ。


 今。


 ものすごく簡単に言ったな。


     ◇


「締め切り」


「知ってる」


「近いぞ」


「知ってる」


「昨日まで何日これに使ったと思ってるんだ」


「それも知ってる」


「だったら」


「だから今日言ってるんでしょ」


「もっと早く言えよ!」


「今日初めて見せられたのに、どうやって早く言うのよ!」


「…………」


「…………」


 正論だった。


 腹が立つ。


 正論というものは。


 なぜ。


 腹が立っているときほど。


 正確に飛んでくるんだろう。


     ◇


「でもさ」


 俺は。


 まだ粘った。


「これ、そんなに駄目か?」


「そんなにって?」


「全部やり直すほどか?」


「私は、やり直したほうがいいと思う」


「…………」


「部分的に直して出すことも、できなくはないと思う」


「じゃあ」


「でも」


 ミドリが。


 俺を見る。


「時根、それで納得する?」


「…………」


 ずるい。


 その聞き方は。


 俺が。


「する」


 と言えないことを。


 こいつは知っている。


     ◇


 漫画なんだから。


 締め切りはある。


 毎回。


 百点のものなんて描けない。


 時間がないなら。


 ある程度のところで。


 完成させなければならない。


 分かっている。


 プロなんだから。


 分かっている。


 でも。


 今。


 問題があると分かっているものを。


 そのまま描けるか。


 と言われたら。


「…………無理」


「でしょ?」


「お前、性格悪くなったな」


「高校のころから変わってません」


「そうだったか?」


「そうです」


「覚えてない」


「都合の悪いことは昔から覚えてないよね」


「…………」


 そんなことはない。


 たぶん。


     ◇


 ミドリが帰った。


 机の上には。


 昨日作ったプロットがある。


 怪人がいる。


 自分で描いた怪人。


 昨日は。


 結構いいと思った。


 今も。


 怪人自体は。


 悪くないと思っている。


 でも。


 話が駄目だ。


 いや。


 駄目という言い方は。


 少し違うかもしれない。


 このままでは。


 俺が描きたかったものにならない。


 そこまで。


 分かってしまった。


「…………」


 知らなければよかった。


 いや。


 駄目だ。


 それは。


 完全に駄目な漫画家の考え方だ。


     ◇


 腹が立つ。


 今日は。


 ものすごく。


 腹が立つ。


 だから。


 せっかく手記なんてものを書いているんだから。


 書いておく。


 ミドリの馬鹿。


 何日かかったと思ってる。


 締め切り近いんだぞ。


 図書館まで行ったんだぞ。


 風呂から飛び出して。


 忘れないように。


 急いで書いたんだぞ。


 かなり。


 いいと思ったんだぞ。


 それを。


「ボツ」


 だぞ。


 二文字。


 せめて。


 もう少し。


 こう。


 言い方というものが。


 あるんじゃないだろうか。


     ◇


 もう描かない。


 今日は。


 描かない。


 知らない。


 締め切りも。


 知らない。


 漫画家も。


 辞める。


「…………」


 いや。


 漫画家は辞めない。


 それは困る。


 俺が。


     ◇


 さっき。


 夕飯を食べた。


 今日は。


 ちゃんと食べた。


 ミドリに言われたからではない。


 たまたまだ。


 食べながら。


 またプロットを読んだ。


「…………」


 やっぱり。


 気になる。


 言われたところが。


 ものすごく。


 気になる。


 昨日まで。


 全然気にならなかったのに。


 一度。


「ここ、おかしくない?」


 と言われると。


 そこしか見えなくなる。


 怪人の能力。


 主人公の動機。


 前半の伏線。


 最後の戦い。


 確かに。


 少し。


 ずれている。


「…………くそ」


 腹が立つ。


 ミドリに。


 ではない。


 たぶん。


 気づかなかった。


 昨日の俺に。


     ◇


 結局。


 机に向かった。


 描かないと言ってから。


 そんなに時間は経っていない。


 自分でも。


 もう少しくらい。


 意地を張れと思う。


 新しい紙を出した。


 最初から。


 考える。


 怪人は。


 残したい。


 能力も。


 できれば残す。


 なら。


 問題は。


 話だ。


 主人公が。


 なぜ。


 こいつと戦うのか。


 そこから。


 もう一度。


「…………」


 白い紙を見る。


 昨日も見た。


 今日も見る。


 明日も。


 たぶん見る。


 漫画家って。


 白い紙を見る仕事なんじゃないだろうか。


     ◇


 そういえば。


 没になったプロットを。


 捨てようと思った。


 思っただけだ。


 結局。


 捨てていない。


 怪人の絵も。


 残してある。


 使わない。


 少なくとも。


 今のままでは。


 漫画には使えない。


 ミドリにも。


 そう言われた。


 でも。


 捨てるのは。


 なんとなく。


 嫌だった。


 何日も考えた。


 調べた。


 悩んだ。


 描いた。


 結果。


 使えなかった。


 だからといって。


 最初から何もなかったことになるわけじゃない。


 俺が。


 考えたものだ。


 だったら。


 残しておく。


 いつか使うかもしれない。


 使わないかもしれない。


 それでもいい。


     ◇


 さて。


 愚痴を書いていたら。


 結構な量になった。


 手記って。


 便利だな。


 誰にも見せる予定がないから。


 好きなことを書ける。


 ミドリにだけは。


 絶対。


 見せない。


 特に。


 最初のほう。


 見られたら。


 たぶん。


 次の打ち合わせが。


 ものすごく気まずい。


 だから。


 これは。


 俺だけのものにしておく。


 で。


 そろそろ。


 仕事に戻る。


 締め切りは。


 俺が怒っていても。


 待ってくれない。


 明日。


 この手記を読み返したとき。


「何をこんなに怒ってるんだ」


 と。


 笑えればいい。


 今は。


 まだ。


 ちょっと無理だけど。


※本作は、作者とChatGPT(AI)による合作作品です。物語の企画・原案・設定・構成など、作品の根幹となる部分は作者が制作し、それらの設定や展開、作者からの指示をもとに、ChatGPTが文章作成・文章化を担当しています。作者とAIが相談・調整を重ねながら、一つの作品として制作しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。