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時根の手記  作者: 時根脱才 


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3/12

第3話 原作と特撮

第3話 原作と特撮


 放送が始まってから。


 いろんな人に声をかけられるようになった。


「先生、見ましたよ」


「面白かったです」


「変身、格好いいですね」


「うちの子が毎週見てます」


 担当からも。


 編集部の人からも。


 知り合いからも。


 普段、それほど連絡を取らない人からまで。


『ビーストギア』の話をされた。


 ありがたい。


 本当に。


 漫画を描いていたときだって、感想をもらうことはあった。


 面白かった。


 続きが気になる。


 あのキャラクターが好きだ。


 そう言ってもらえるのは、何度経験しても嬉しい。


 でも。


 テレビは。


 やっぱり違う。


「子供が見てます」


 この言葉を聞くことが、思っていたより多かった。


 当たり前と言えば、当たり前なのかもしれない。


 特撮なんだから。


 決まった時間になれば。


 テレビをつければ。


 俺の描いたヒーローが出てくる。


 漫画を読んだことのない子供も見る。


『ビーストギア』という名前すら知らなかった人も見る。


 そう考えると。


 やっぱり。


 すごいことなんだと思う。


     ◇


 評判は。


 悪くないらしい。


 少なくとも、俺のところに届いてくる話だけを聞けば。


 面白い。


 格好いい。


 次も楽しみ。


 そんな言葉が多い。


 俺も。


 嬉しい。


 嬉しいんだけど。


「…………」


 最近。


 少しだけ。


 変な気持ちになることがある。


 いや。


 変というほどでもない。


 分かっていたことだ。


 最初から。


     ◇


『ビーストギア』は。


 最初に俺が考えたものと。


 漫画になったものとで。


 すでに違う。


 最初に描いた原稿。


 ノートに書き散らした設定。


 何度も描き直したキャラクター。


 使わなかった場面。


 消した台詞。


 ボツにした怪人。


 そういうものが。


 山ほどある。


 その中から。


 残すものを選んだ。


 変えるものを決めた。


 削ったものもある。


 漫画として連載するなら。


 そのままでは使いにくいものだってあった。


 自分では必要だと思っていた。


 でも。


 担当と話して。


 考えて。


 読み返して。


 結局。


 変えた。


 かなり変えたものもある。


 最初は。


 少し嫌だった。


「ここ、変えないと駄目ですか?」


 そんなことを言った覚えもある。


 今思えば。


 面倒くさい新人だったかもしれない。


 でも。


 自分では。


 理由があって描いていた。


 この人物が。


 ここでこうなるから。


 次の行動につながる。


 ここで傷つくから。


 この言葉が出る。


 ここで失うから。


 この人間は戦う。


 俺の中では。


 全部つながっていた。


 だから。


 一か所変えるだけでも。


「そこを変えたら、別の意味になりませんか」


 と思った。


 実際。


 何度も話した。


 それでも。


 漫画は。


 俺一人の頭の中だけに置いておくものじゃない。


 人に読んでもらうものだ。


 だから。


 変えた。


 削った。


 分かりやすくした。


 きつすぎるところは。


 少し抑えた。


 そうやって。


 漫画の『ビーストギア』ができた。


     ◇


 そして。


 今度は特撮だ。


 漫画になった時点で。


 すでに最初の俺の頭の中とは違っている。


 その漫画を。


 さらにテレビにする。


 しかも。


 子供たちも見る番組として。


 当然。


 そのままにはできない。


 分かっている。


 本当に。


 分かっている。


 漫画なら描けたものが。


 テレビでは難しいこともある。


 同じ場面でも。


 紙の上なら許される表現と。


 決まった時間に家庭へ流れる映像では。


 受け取られ方が違う。


 小さな子供も見る。


 家族で見る人もいる。


 だから。


 表現を変える。


 直接見せない。


 別の方法で伝える。


 怖すぎるところは抑える。


 痛すぎるところも。


 残酷すぎるところも。


 漫画より。


 さらに。


 柔らかくする。


 必要なことだ。


 俺だって。


 子供を怖がらせたいわけじゃない。


 むしろ。


 子供たちがビーストギアを見て。


 格好いいと思ってくれるなら。


 こんなに嬉しいことはない。


 だから。


 納得している。


 している。


 はずなんだけど。


     ◇


「…………違うな」


 この前。


 テレビを見ながら。


 思わず口にしてしまった。


 別に。


 悪い場面じゃなかった。


 むしろ。


 映像としては、よくできていたと思う。


 役者の芝居も良かった。


 演出も分かりやすい。


 音楽が入るタイミングも。


 怪人を映す角度も。


 よく考えられている。


 たぶん。


 初めて『ビーストギア』を見る人なら。


 何も引っかからない。


 でも。


 俺は。


 知っている。


 元々。


 そこに何があったのか。


 最初に。


 俺が何を描いたのか。


 漫画になるときに。


 何を変えたのか。


 そして。


 特撮になるときに。


 さらに何が変わったのか。


「…………」


 悪くない。


 むしろ。


 面白い。


 第1話を見たとき。


 俺自身が書いた。


 ちゃんと『ビーストギア』だった。


 あの気持ちは。


 嘘じゃない。


 今でも。


 そう思っている。


 ただ。


 時々。


 ほんの少しだけ。


 思う。


 これは。


 俺が描いた『ビーストギア』なんだろうか。


     ◇


 嫌な書き方だ。


 自分でも。


 そう思う。


 たくさんの人が。


 一生懸命作っている。


 俺が一人で紙に描いていたものを。


 脚本にして。


 セットを作って。


 衣装を作って。


 スーツを作って。


 演じて。


 撮って。


 編集して。


 音をつけて。


 一つの番組にしてくれている。


 それを。


 原作者だからといって。


「俺の考えたものと違う」


 なんて言うのは。


 たぶん。


 ものすごく簡単だ。


 そして。


 ものすごく失礼だ。


 分かっている。


 第一。


 漫画だって。


 最初の俺の頭の中そのままじゃない。


 担当と話した。


 編集部と話した。


 何度も直した。


 そのたびに。


「変えたくない」


 と思ったところもあった。


 でも。


 変えてみたら。


 前より良くなったところだってある。


 自分一人では気づけなかったこともあった。


 そうやって。


 漫画の『ビーストギア』はできた。


 だったら。


 特撮だけに。


「俺のものを変えた」


 なんて思うのは。


 おかしい。


 頭では。


 そう思う。


 でも。


 それでも。


 どこかに。


 残っている。


 最初に。


 俺が描いたもの。


 誰にも見せる前の。


『ビーストギア』。


     ◇


 あれは。


 たぶん。


 俺にしか分からない。


 ノートにしか残っていない設定もある。


 原稿にしたけど。


 使わなかった場面もある。


 名前すらつけずに。


 消したキャラクターもいる。


 怪人なんて。


 何体ボツにしたか分からない。


 描いて。


 違うと思って。


 消して。


 また描いた。


 そうやって。


 最後に残ったものが。


 漫画になった。


 だから。


 普通に考えれば。


 ボツになったものは。


 もう。


『ビーストギア』ではない。


「…………」


 そうなんだろうか。


 いや。


 そうなんだろう。


 使わなかったんだから。


 作品に出ていないんだから。


 読者も知らない。


 テレビを見ている子供たちなら。


 なおさら知らない。


 だったら。


 存在しないのと同じだ。


 たぶん。


 それなのに。


 俺の中では。


 まだ消えていない。


 完成した『ビーストギア』を見れば見るほど。


 その陰に。


 選ばなかったものまで思い出す。


 妙な話だ。


 完成させるために捨てたはずなのに。


 完成したからこそ。


 捨てたものが目につく。


     ◇


 最近。


 昔のノートを。


 少しだけ見返した。


 特撮が始まって。


 昔のことを思い出したからだと思う。


 ひどい。


 本当に。


 よくこれを人に見せようと思ったな。


 そう思うものが。


 いくらでも出てくる。


 今なら絶対に使わない設定。


 何が格好いいと思っていたのか。


 自分でも分からない名前。


 描いた本人なのに。


 何をさせたかったのか思い出せない怪人。


「……これ、何だっけ」


 そんなものまであった。


 笑った。


 でも。


 捨てなかった。


 昔も。


 今も。


 俺は。


 ボツになったものを。


 なかなか捨てられない。


 別に。


 使う予定なんてない。


 漫画にも出さない。


 特撮にも。


 もちろん出ない。


 それでも。


 捨てる気にはならなかった。


 そこに描かれているものは。


 今の『ビーストギア』にはいない。


 けれど。


 確かに一度は。


 俺の頭の中にいた。


     ◇


 たぶん。


 俺は。


 少し欲張りなんだと思う。


 漫画の『ビーストギア』も好きだ。


 特撮の『ビーストギア』も。


 毎週楽しみにしている。


 たくさんの人に見てもらえるのも。


 嬉しい。


 子供が見ていると言われると。


 やっぱり。


 ものすごく嬉しい。


 それなのに。


 自分しか知らない。


 最初の『ビーストギア』まで。


 捨てたくない。


 変わったことを認めながら。


 変わる前のものにも。


 こだわっている。


 面倒くさい。


 我ながら。


 本当に。


 面倒くさい原作者だと思う。


 でも。


 まあ。


 それくらいは。


 許してほしい。


 誰に許してほしいのか。


 分からないけど。


 テレビの『ビーストギア』は。


 面白い。


 それは。


 本当だ。


 俺の漫画とは違う。


 最初に俺が考えたものとは。


 もっと違う。


 でも。


 どれも。


 たぶん。


『ビーストギア』なんだと思う。


 今は。


 そう思うことにする。


     ◇


 それに。


 昔のノートを見ていたら。


 少し描きたくなった。


 漫画に使うわけじゃない。


 仕事でもない。


 ただ。


 昔ボツにしたものを。


 今の俺が描いたら。


 どうなるんだろう。


 少しだけ。


 気になった。


 昔の俺が。


 何を考えて。


 何を描こうとして。


 どうして捨てたのか。


 今なら。


 少しくらい。


 分かるかもしれない。


 まあ。


 その前に。


 締め切りがある。


 担当に知られたら。


 たぶん怒られる。


 だから。


 描くとしても。


 ほんの少しだけ。


 息抜き程度にしておこう。


 たぶん。


 そうする。


※本作は、作者とChatGPT(AI)による合作作品です。物語の企画・原案・設定・構成など、作品の根幹となる部分は作者が制作し、それらの設定や展開、作者からの指示をもとに、ChatGPTが文章作成・文章化を担当しています。作者とAIが相談・調整を重ねながら、一つの作品として制作しています。

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