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問.俺は魔王を倒して世界を救った勇者なんだが、それでも税金って払わないとダメなの?  作者: 夢神 蒼茫


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第97話 王の願い (3)

 王の願いを聞き、興奮冷めやらない。


 この場の誰もが、王の夢、願いに酔いしれた。


 世界を破壊し、新たに想像しようなど、常人の発想ではない。


 特に、ペコニアにとっては最高に興味をそそられる内容であった。


 悪魔としての順法精神、“金欲”としての富の活用術、どれもこれもが自分の感性に一致するからだ。



「大したものです、ジャン王。人の身でありながら、すでに人の臨界を超越しようとしている。“狂人”リシャール王の息吹は正しく受け継がれているようですね」



「お爺様ほど突飛とは思っていないがな。手堅く、そして、着実に一歩ずつ進むのが自分のやり方であるし、性に合っていると思っている」



「その割には、派手な動きは勇者や聖女に任せて、ご自身はあまり表で活動していないように見えますが?」



「先程言っただろう? “分かりやすい英雄”が必要だと。デビィドは祖父が近衛騎士とは言え、庶民出身だ。スオーラに至っては孤児だぞ。それが今や押しも押されぬ英雄であり、あるいは王妃だ」



「なるほど。分かりやすい立身出世の物語。庶民もそこまで成り上がれるという実例というわけですか」



「今までは貴族が政治に幅を利かせていた。大学もほぼ貴族や富豪の子弟で占められ、庶民にとっては本当に狭き門だったが、今後は違う。門扉は開け放たれ、誰も彼もが“英雄”になれる夢を持てる」



「なるほどなるほど。議会開設もその流れを汲んでと言う話ですか」



「今までは納税、貢納の義務だけを負う一般庶民が、今度は政治に参加して、集めた税金の使い道を議論し合えるようになるのだ」



「まさに“王のいらない世界の創造”ですね」



「そう、王が主役の時代を終わらせる。一応、国家統合の象徴としてはしばらく残すが、せいぜい馬車の車軸くらいの役目になるだろう」



「車軸が無ければ、車輪は馬車を動かせませんよ?」



「そうだな。今、余がそうしているように、見えない位置に移る。“公平な税制”、“公正な司法”、“分かりやすい英雄”、“国民議会”、これらが離れてしまわぬよう、上手く調整するのが今後の国王の仕事になるだろうな」



「相互に監視し、相互に協力し合う。政治体制としては理想的ですね」



「だが、今はその準備段階。種を蒔く前に、畑を耕し、ならしている段階だ。貴族の力を弱め、庶民の力を蓄えていくその時期だ」



「そう上手くいくでしょうか?」



「いくさ。真っ当に得た稼ぎでなければ、その富を永続させる事はできない。それが余の信念だ。今、不当に利益を貪り、脱税をしていた者達はどう報われた?」



「その通りでございますわね。失礼いたしました」



 ペコニアは席を立ち、ジャンに向かって恭しく拝礼した。


 臣下の礼、そう取っても可笑しくないほどの礼節に則った態度だ。


 誰かに命令されたからではなく、そうしたいと思うだけの器が目の前の“自称・魔王になりたい男”から感じ取れたからこそだ。



「ジャン王よ、あなたこそ今生の魔王を名乗るに相応しいお方。世界を破壊し、自らもまた消える。絶対的な王者になりながら、王を必要としない世界を求める反骨精神、我が忠を捧げるに相応しい」



「それは重畳。“金欲”に認められるのも悪くはないな」



「あなた様がどこまで突き進まれるのか、是非見届けさせていただきます」



「お前の力も期待しているぞ。勇者と共に、不当な富を回収して来い。正しい税金の使い方を後世に残してやるためにもな」



「承知」



 ペコニアは今一度頭を下げ、ジャンからの命令を受諾した。


 魔王軍とは違った、これはこれでやりがいのある仕事と言える。


 理想的な新天地に巡り合えたかもしれない。


 そう思うと、やる気も自然と湧いてくるというものだ。



「よっしゃよっしゃ! 次もまた御貴族様からふんだくるぜ!」



「そうですね、勇者様! んで、今度はどこに行きましょうか?」



「 (`・ω・´)b ニシ!」



「前回は東だったもんね。個人的には南の方がいいかな」



「いえ。ここはまた東で。まだ締め上げていない商会が結構ありましたし」



「なら、真ん中取って、北にでも行くか!」



「え~。もうすぐ冬ですよ。寒いのは嫌です!」



「 (((;゜д゜;))) ガクガクブルブル 」



「なら、本当の意味で真ん中とって、中央の商会をグルッと回ってみるか!」



 などと“新生・勇者パーティー”はすっかりやる気満々になっていた。


 かつて死闘を演じていた中も、共通の目的意識が芽生えれば仲間となる。


 それは新しい時代の夜明けを予感させるのには十分すぎる姿であった。

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