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問.俺は魔王を倒して世界を救った勇者なんだが、それでも税金って払わないとダメなの?  作者: 夢神 蒼茫


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第91話 新生・勇者パーティーのお仕事 (2)

 ジャンの狙いはインジェヌオ伯爵シャルルの謀反を奇貨とし、貴族への徹底した介入をする事であった。


 そして、その特別チームの頭を務めるのが、勇者デビィドである事も公表された。


 これは民衆の絶大な支持を受け、魔王を倒した英雄が、今度は不正に税を納めない貴族相手にやってくれるのだと諸手を上げて歓迎された。


 ジャンの宣言通り、地方を巡回し、貴族家を順々に回っているのが今の勇者パーティーだ。


 この“黄金の印籠”あるところ、誰も止められない最強の調査チームがいる。


 今もこうしてこの権威の前に、標的にされた侯爵もたじろぐばかりだ。


 なお、勇者が税金を滞納していた点は、しっかりと握り潰されている上に、王室の機密費からこっそりと滞納分も支払われているため、汚点はない(・・・・・)


 清廉潔白にして不正を許さぬ正義の大英雄・勇者デビィドとその仲間達。


 それが今の状況だ。



「ここにおられるは、勇者デビィド様! 特別徴税官なのですよ! 分を弁えなさい、侯爵!」



 ペコニアも容赦がない。


 と言うか、それ以上に今の仕事はまさに天職だ。


 なにしろ、“金欲”の二つ名を持つ悪魔であり、金品を巻き上げ、阿鼻叫喚の地獄に叩き落とすなど、これ以上にない娯楽であり栄養だ。


 角と尻尾を魔術で隠し、人間の姿で活動しているが、その言動は悪魔そのもの。


 重箱の隅を突いては不正を暴き出し、納税者(滞納ないし脱税)を追い詰めるのはこれ以上にない楽しくて愉快な職場であったりする。


 魔王復活を望めない状況である以上、まずは自己保身を優先してはいるが、すでに今の仕事が気に入っていて、悦に入っている状態だ。


 なんて素晴らしい仕事なのかと。



「お、おのれ……! こんな事が許されるわけが……」



「黙れ!」



 再び机を叩くデビィドに、侯爵はビクリと震え上がる。


 なにしろ、レベル53の勇者である。


 まともにやり合って勝てる相手ではない。


 その上、国王の権威付けまでなされ、れっきとした官職まで得ているのだ。


 どう足掻いても勝ち目はない。



「いいか!? 俺は陛下より勅命を賜り、“特別徴税官”の任を受ける身だ!  たかが侯爵風情が指図できる立場ではない! こうして不正の証拠が挙がって来ているのであるからして、公儀にはちゃんと報告しておくし、心して沙汰を待つんだな!」



 デビィドも容赦がない。


 かつて自分が税金滞納で苦しめられた事など忘却の彼方であり、むしろそれを別の滞納者に味わっているもらおうと言う心配りであったりする。


 下衆な発想ではあるが、法律的には“税金を滞納ないし脱税している方が悪い”のであるから、その言動は容赦がない。


 勇者としての実力に、公儀からの職責と権威付けも加わって、もはや本当の意味での“無敵状態”だ。


 相手が御貴族様ノーブルであろうが、妥協も容赦も一切なし。


 搾れるだけ搾り取るだけだ。


 なにしろ、ペコニアだけではなく、他二人も優秀だ。


 応接間で侯爵とやり取りしていると、その二人が姿を現した。


 長年の相棒であるティエラと、ペコニアと同じくモロコスとスオーラの代わりに加入してきた新メンバーのリボンちゃんだ。



「勇者様! 見つけましたよ!」



「 (σ・∀・)σ ゲッツ!! 」



 そう言ってティエラが机の上に置いたのは“金塊”。


 黄金色の輝きを放つ、人々を魅了して止まない不滅の金属だ。



「ななななな! そ、それは!」



「侯爵ぅ~、居間の暖炉の裏に隠し部屋がありましたよ~? そこには金塊が山積みになっていました!」



「何でバレた!?」



 侯爵は狼狽するより他になかった。


 勇者パーティーが侯爵家の居館に姿を現し、強引に監査を開始してからまだ20分と経っていない。


 にも拘らず、裏帳簿をあっさりと見つけられ、挙げ句に隠し部屋まで暴かれた。


 これほどの手際の良さ、それは初めから全てを掴んでいるとしか思えないほどの手管だ。


 そんな侯爵の事などどうでもいいとばかりに、デビィドは金塊を掴み上げ、じっくりとその輝きと重厚感を味わう。



「ペコニア、この金塊について、帳簿には記載されているか?」



「“表”の帳簿には記載がありませんね。“裏”の方にも記載なし。つまり、これは純然たる侯爵の隠し財産。俗に“へそくり”というやつですね」



「そうかそうか、“へそくり”か。つまり、記録上は存在しない財産だな」



「おそらくは、帳簿のズレていた金額の正体がこれではないかと」



「まあいいさ。記録にない財産である以上、没収しても問題ないと言う事だ」



「むしろ、不正の証拠として、押収しておくべきです」



 デビィドも、ペコニアも、ニヤリと笑い、思わずガッツポーズ。


 なにしろ、これは職権で認められた役得であり、正規の報酬でもあるからだ。


 ジャンより約束された報酬は、“没収した金額の3割”が確約されている。


 頑張れば頑張る程に報酬が増える出来高払い。


 しかも、目の前にいるのは不正蓄財を繰り返した御貴族様が、両手の指で数えられないほどにいて、列を成しているようなものだ。


 “貯金箱カモ”という名の“滞納者くずやろう”がいくらでもいる。


 そして、今の勇者パーティーは“金”に関する事では、文句なしの最強パーティー。



デビィド

『職業・勇者ヒーロー レベル53 仕事ワーク・徴税官』

『荒事上等。特別捜査班パーティーのリーダーにして用心棒』


ティエラ

『職業・怪盗ファントム レベル30 仕事ワーク・徴税官』

『潜入の達人。物理、魔術に関わらず、どんな鍵でも開けられる』


ペコニア

『職業・商人マーチャント レベル69 仕事ワーク・徴税官』

『事務処理最強。数字に埋もれた僅かな瑕疵も見逃さない』


リボン(ちゃん付けで呼んで♪)

『職業・姫君メイデン レベル19 仕事ワーク・徴税官』

『変身能力による潜入や聞き込みが得意。誰でも口を滑らす程の魅了チャーム持ち』



 ジャンの目論見通り、“最強のチーム”が完成した。

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