表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
問.俺は魔王を倒して世界を救った勇者なんだが、それでも税金って払わないとダメなの?  作者: 夢神 蒼茫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/101

第59話 不戦協定

「さて、作戦の概要は説明しましたし、いよいよ“契約”といきましょうか」



 このためにこそやって来た、そう言わんばかりにペコニアは懐から一枚の書類を取り出した。


 魔術要素を織り込んだ特殊な紙である事は、その場の全員が即座に見抜いた。


 そして、それに署名して契約を結べば、それこそ後戻りできなくなる事も。


 気の高ぶりもあってか、デビィドは鼻息を大きく吹き出す。



「なぁ~にが作戦だよ。ほぼほぼ場当たり的な、行き当たりばったりって感じの話じゃねえか」



「別に、そこらへんは縛るつもりはないわよ。自由気ままな冒険者には、“大方針”だけを与えて、委細は任せるって使い方が正しいやり口よ」



「それは否定できんな。あ~しろ、こ~しろ、口やかましく横槍入れられるよりかはマシってもんだ」



「それに細かな指示を出さなくても、あなた達なら最適解で行動しそうだもの」



「そうでなきゃ、魔王なんぞ倒せはしないさ」



 最後に特大級の嫌味を放ち、書類に目を落とす。


 契約の内容は、ざっくり言うと『勇者パーティーと魔王軍の不戦協定』だ。


 “互いに手を出さず、危害を加えない事”が明記されている。


 勇者パーティーと魔王リボー、ペコニアは互いに攻撃できないようにする、と。


 その期間は、前にリボンちゃんと話したように“転生の秘術が発動するまで”となっている。


 そして、報酬についても約束通りであった。


 デビィドは借金(残りの納税額)をチャラにする事。


 スオーラは孤児達の安全と孤児院の再開、そして、その運営資金。


 モロコスは国王ジャンを抹殺する事。


 ティエラは欲望の欲張りセットであったが、それもちゃんとキッチリ網羅されて、書き記されている。


 報酬はちゃんと支払う、そう言う姿勢が見えていた。



「ん~、確かにこちらの要求は全部載せてくれたみたいね」



 ティエラは書類を手にし、漏れがないかも確認したが特に何もない。


 要求を全部受け入れてくれた事を確認した。


 これでよしと首を縦に振り、他のメンバーも同じく首肯する。



「当然でしょ。それ相応の働きには、それに見合う報酬を支払ってこそよ」



「それは結構な事ね。ほんじゃま、さっさと署名しますか。こんな辛気臭い仕事は終わりにして、勇者様とスイ~トな暮らしをしたいのよ、こちとら」



 そう言って、ティエラはさっさと書類に署名した。


 それに続き、デビィド、スオーラ、モロコスも書類に名前を書き込んだ。


 署名はあらかじめ書き込まれていた魔王リボンちゃん、ペコニアに加えて、勇者パーティー4名の分も加わり、完成した。


 青白い炎が浮かび上がり、書類が一瞬で燃え尽きた。


 これが契約成立の合図となった。



「さってと、それじゃあ、モロコス、そのご自慢の筋肉ムキムキの剛腕で、私を殴り飛ばしてくれるかしら?」



「喜んで!」



 いけ好かない悪魔を殴れるのであるから、躊躇はない。


 モロコスは腕をバキバキ鳴らしながら席を立ちあがり、そして、大きく振り上げた拳をペコニアにぶつけた。


 だが、顔面目掛けて放たれた拳打は、どこからともなく生じた薄い膜に阻まれ、命中する事はなかった。


 デビィドがリボンちゃんに殴りかかった時と同じく、攻撃は完璧に防がれた。



「うん、結構! 契約はちゃんと機能しているようね」



「なるほど。こういう感じか。互いに手を出せない、というのは」



「そう言う事! これで互いに危害を加えられなくなったから、これで一蓮托生ね」



 今度はペコニアがお返しとばかりに、モロコスを殴り付けた。


 そして、こちらもまた幕が生じて、攻撃を受け止める。


 ペコニアもまた、契約に縛られた事を確認し、勇者パーティーは納得した。



「よし、これでどちらも契約の影響下にあるって事は間違いなし。んじゃまあ、これからは“共犯者おなかま”って事で」



 そう言って、ペコニアは止められたモロコスの手を握り、握手を交わす。


 敵意や殺意は散らすが、そうでないのであれば触れる事は可能。


 傷つけない行動であれば問題ないと、握手を以てそれを示した。



「さて、これで今日のところはしまい。明日の王宮入りまで時間はあるし、それまでは好きにしてていいから」



 満面の笑みでそう言い、ペコニアはさっさと勇者宅を出て行った。


 本当に効率的であり無駄がなく、用が済めばハイさようならだ。


 どうにもいけ好かないと感じつつも、契約を結んだ後ではもう後戻りは効かない。


 政変を成功させにない事には、未来が完全に閉ざされてしまう。


 納得のいかない事は多々あるが、それでもと我慢をする。


 勇者パーティーからはそんな雰囲気が溢れ出ている。


 ただ一人、ティエラを除いて。



「さて、それじゃあ時間も多少できた事だし、少し動きましょうか」



「動く? ティエラ、今更どう動くってんだ?」



「情報のすり合わせですよ、勇者様」



 そう言って、ティエラは席を立ち上がる。



「これからみんなに、“聞き込み”をして欲しいのよ」



「聞き込み? なんについて?」



「ずばり、“ジャン陛下の世論調査”ですよ」



「つまり、陛下の評判って事か?」



「そうそう。はっきり言うと、あたしらは情報が不足している。ここ最近の陛下の動向や評判ってさ、“リボンちゃん、もしくはペコニア経由の情報”しか持っていないのよ。もしくは、タブロイド紙のゴシップ記事とかさ」



「情報の片寄りだな」



 そう考えると、情報収集というのも当然と言えば当然かと一同も納得した。


 ただ同時に、“遅いのでは?”とも。



「だがな、ティエラ、そういうのは契約とかを結ぶ前にするもんじゃないのか?」



「モロコスの意見ももっともだけど、それだと“罠にハメられない”から」



「罠?」



「悪魔との契約なんて、正気の沙汰じゃない。悪魔は契約には忠実でも、必ず契約の穴を突いて、契約者をおとしめる。そうじゃない?」



「まあ、それはそうなんだが……」



「なら、さっきの契約だって、必ず“穴”があって、その内に何かを仕掛けてくるのは明白よ」



「契約前だと、あちらの思惑が固定化されず、着地点が見えない。敢えて契約を結ぶ事により、あちらの着地点の固定化を狙った。そんなところか?」



「契約を結んだ以上、ペコニアもまたそれに縛られた。当然、こちらを出し抜いてくるのは確実。なら、こちらもそれに被せて、そっくりそのまま返す(・・)



 危険は承知よと、ティエラは笑顔と共に中指を立てる。


 その向きは先程までペコニアが座っていた席があり、露骨に敵意を出していた。


 仕掛けてきたらやり返す、その意志表示だ。



「てなわけで、王都にいる知己に片っ端から当たってみる。モロコスは“木こり(ウッドカッター)”なんだし、土木関係を当たってみて。スオーラは神殿関係をよろしく。勇者様はそれこそ、“ご近所様の生声”を聞いて来て。それじゃあ!」



 ティエラは風のごとく駆け出し、家の外へと出て行った。


 頭の回転の速さと大胆な行動力は相変わらずだなと、他3名もニヤリと笑う。



「まあ、そう言う事でしたら、私も王都にある神殿を回ってみましょうか」



 スオーラも立ち上がり、デビィドもモロコスもそれに続く。


 誰が最後に勝つのか、すでに戦いは始まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ