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問.俺は魔王を倒して世界を救った勇者なんだが、それでも税金って払わないとダメなの?  作者: 夢神 蒼茫


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第57話 王都帰還

 王都に舞い戻った勇者パーティーは、取り敢えず勇者の実家へと向かった。


 リボンちゃんとペコニアからの税の徴収(しゅうげき)を受けてから、まだ2月も経っていないが家は少し荒れていた。


 庭草が少しばかり伸び始め、それが無人であった事を示していた。



「まあ、取り敢えずはまだ没収されたわけではないって事は分かったし、一安心だな。……と言いつつ、安心できる要素はないが」



 なにしろ、まだペコニアに支払わなければならない税金が残っている。


 それを理由に“差し押さえ”が実行される可能性が高い。


 デビィドは両親を失ってから、祖父が親代わりに育ててくれた。


 その幼少期の思い出が詰まった家が没収されるのは心苦しく感じ、他に手段がないからと魔王と結託するハメになった。



「人生、何が起こるか分からんもんだ」



 そう言いながら玄関の扉を開けると、屋内はちゃんと掃除されていて、埃一つ溜まってはいなかった。


 たまに幼馴染である近所のお姉さんが掃除に来てくれており、それが留守にしていた間も続けて掃除に来てくれていた事を意味していた。


 それに、巻物スクロールを使って逃げた際には、愛用の剣一本持ち出すだけで精一杯であったが、冒険者時代に採用していた防具一式も元のままだ。



「勇者様、良かったですね! これでもう一回、魔王とだって戦えますよ!」



「パーティーメンバー4人の内、2人がレベルを落としているいるからな。完全体の魔王と戦うのは無理だな」



「完全体でなかったら?」



「俺一人でぶった切るさ。徴税官の特殊スキルさえなければな」



 そここそ、デビィドがリボンちゃんやペコニアに手も足も出ない理由だ。


 “徴税官”は“納税者”に対して無敵になれる。


 現にこの場で、レベル1のリボンちゃんに対して、レベル50のデビィドが手も足も出なかったのだ。


 圧倒的なレベルさえ覆す厄介なスキルを持っている。


 これをどうにかできないかと考えた結果は、“税金をちゃんと払う”以外には思い浮かばなかった。


 ティエラに借りても良かったが、夫婦になれなかったティエラから借りた場合は、高額贈与になるため多額の“贈与税”がかかる。


 それでは“徴税官”であるリボンちゃんやペコニアを喜ばせるだけだ。


 むざむざ金と経験点をくれてやるつもりはないと決意。


 結局、働いて稼ぐしかないかという、至極真っ当な思考に戻った。



「勇者様、事が落ち着いたら、やっぱりここを拠点にして、剣術道場の師範、やった方が良いんじゃない?」



「結局はそうなるんだよな~」



道場はこ門下生ひともいる。“魔王を倒した勇者”の名声と共に師範やってりゃ、食いっぱぐれる事もないでしょ」



 ティエラの意見は至極真っ当であった。


 そもそも、デビィドの苦境はデビィド自身の“怠惰”に求められる。


 祖父を失ったショックから自堕落な生活を送り、実に1年分の時間と魔王討伐の賞金を失った事になる。


 兄弟子の誘いを拒み、自分の殻に閉じこもっていたかつての自分に説教してやりたい気分だが、過ぎた時間は決して戻らない。


 その未来を新たに構築するために、再び勇者パーティーは結集したのだ。



「まあ、そこはあたしがちゃんとサポートしますから!」



「まあ、それは助かるんだけどだ」



「ふふ~ん♪ 昼は剣術道場で汗を流す夫にかいがいしく尽くし、夜は不埒な稼ぎを貪る悪党を懲らしめる闇夜に舞う蝶」



「なんか今、聞き捨てならない事を言いだしたぞ、こいつ」



「いや~、花の都に可愛らしい棘のある花を一つ、添えてみようかと」



「添えんで良い、添えんで。てか、その為に“怪盗ファントム”に転職したのか!?」



「義賊系の怪盗とか良くない!?」



「合法的に稼げ、合法的に! もうほんとに厄介事は真っ平だぜ」



 冒険者時代とは打って変わって、今の勇者は“普通が一番”と考えるようになっていたりする。


 税を搾られるのは嫌だが、そうかと言って命を削る日々と言うのも勘弁願う。


 それなりに稼げて、かつての名声など忘れられる程に年を取り、そして、ぽっくりと逝く。


 そんな“当たり前の生活”にこそ、魅力を感じるようになっていた。



「もっとも、それを手にするのにこれから散々苦労するし、おまけに魔王と握手せにゃならんしで、踏んだり蹴ったりだがな」



「あら~、それは心外ね」



 不意に声をかけられたのでそちらを振り向くと、そこにはペコニアが立っていた。


 ただ、外見が随分とさっぱりしていた。


 角も尻尾もなく、見た目は完全に人間だ。


 おまけに黒い巻衣トーガではなく、メイド服に身を包んでいるというのも、普段が普段だけに斬新に感じた。



「なんだ、ペコニア、“徴税官”の次は“家政婦”にでも転職か?」



「表向きな肩書は、“伯爵令嬢リボン様の従者”って事になっていますので」



「……リボンちゃん様の養子縁組は無事完了と言う事か」



「ええ。“鼻薬”が利いたんで、役所の手続きもスムーズだったわよ」



「結局はどこもかしこも“金”か」



「物事を円滑に進める特急券よ」



「真っ当な金じゃないくせに」



「フフッ、“上”に行くほど、真っ当じゃない金に出会う方が難しいのよ」



「違いない。反論できんわ」



 実際、借金(税の滞納)を片付けるために、魔王と組むのであるから、稼ぎが真っ当なやり口や収入とは言い難い。


 だが、もう止める事はできない。


 こうして顔を合わせた以上、それは始まる。


 全てを手にするため、全てをひっくり返す。


 その為の顔触れが今、勇者宅に揃った。

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