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問.俺は魔王を倒して世界を救った勇者なんだが、それでも税金って払わないとダメなの?  作者: 夢神 蒼茫


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第45話 税の不公平

「それで、大魔導士ティエラちゃんによる税制の講義は終わった?」



 ニヤニヤ笑いながら聞いていたリボンちゃん。


 基本的な話ではあるが、税に関する素人であるデビィドにとっては、新たな知識を得る機会であり、十分にためになる時間となった。


 なお、デビィド以上に金勘定に疎いモロコスとスオーラは、頭から湯気が上がっており、ショート寸前になったいたりする。



「ち~な~み~に~、さっき話に出ていた“とーごーさん”の事だが、後に“ぴん”が入るんだぞ。知っているか? (・∀・)ニヤニヤ 」



 意味深な笑みを浮かべながら、リボンちゃんが指を一本、ピンッと立てる。


 世の不条理を説くかのごとく、笑い飛ばして。



「おいおい、“ぴん”って事は“1割”かよ!? どこのどいつだ、その本来の1割しか税金を払っていないのは!?」



「決まっている。“御貴族様ノーブル”だよ。あと、何かしらの事情で国から特権を与えられている“大商会コンツェルン”とかな。( ̄m ̄〃) ププゥ!! 」



「…………!? じゃあ、“ガチな金持ち”は税金を払っていないってか!?」



「把握できない資金の流れから、税を取る事はできんからな。『身分証明札マインカード』の普及でマシにはなっているが、それでも実態把握はまだまだだ」



「ズルいぞ! 庶民にばっか金を搾り取ってたって事じゃねえか!」



「ここの農場もそれに一役買っているからな。農作物の物納、領主への上納はそうだもんな?」



「現金、現物、領主への支払いは“帳簿に残らない方法”でやっているわよ。そう指定して来るしね」



 ティエラにしても、そんな事は“当たり前”。


 帳簿に残らなければ、それは“存在しない”のと同義だ。


 それらを全て監査するには、国税局の人手も足りていないし、地方の貴族は誤魔化しやすいというのが実態だ。




「先王リシャールもそこらへんは頑張って改革はしていた。『身分証明札マインカード』の普及も、魔王軍こちらが潜ませていた投影魔人ドッペルゲンガーへの対策でもあったが、それは表向きな話。本当は“特権階級からの徴税”を見据えた、社会構造の抜本改革をこそ狙っていたのだ」



「随分と詳しいな、魔王」



「まあ、ここいらはペコニアの受け売りだよ。“金欲”の二つ名を持つのは、何もハッタリでもなんでもない。金の匂いや動きには敏感であるし、それを利用して人間を堕落させたり、破滅させたりするのが、本来のあいつのスタイルだ」



 それについては、勇者パーティー全員が身に染みている事でもあった。


 ペコニアは王国に降伏した後、“徴税官”の職業ジョブを得た。


 結果、一切の暴力を用いず、順法闘争のみで勇者パーティーを壊滅させた。


 まさに水を得た魚状態の活躍ぶりだ。


 デビィドは素寒貧になり、ティエラとモロコスは半ば強制的に職業変更ジョブチェンジによってレベルダウンさせられた。


 スオーラにしても、テンプル騎士団の壊滅がペコニアの差配によるものだというので、間接的に苦境に立たされた事を意味する。



「実はペコニアって、暴力を使わない方が強いんじゃねえか?」



「そりゃそうだ。だからこそ、魔王軍の参謀を務めていたのだぞ。なにより、“金”に対する嗅覚や感性が凄まじい。経済に関する先読みは、ほぼ百発百中だ」



「マジかよ!?」



「だから、たま~に暇つぶしで、遊び半分に人間を玩具にしていたんだぞ。投資アドバイスで」



「例えば?」



「株取引から外為やなんかだな。『際限なく乱高下する破滅をもたらす悪魔の遊戯』とか言って、一体何人の人間を地獄に落としたか」



「もう嫌な予感しかしねえな」



「まあ、あれだ。まず、財布の緩そうな小金持ちを見つけては、投資アドバイスを行って儲けさせる。さらにそいつの伝手から人を集めて、“有償”で投資アドバイスをやって、更に儲けさせる」



「有償? 無償じゃなくて?」



「ああ。“対価”を支払うと、そこに“信用”が生じやすくなるのだ。例えば、『無償で儲け話を提供します!』と、『初期投資は必要ですが、良いお話があります!』だと、前者の方が怪しく感じるだろう?」



「なるほど。言われてみればその通りだ」



「しかも、実際に“最初は儲かる”から、稼いでいる内は信用がどんどん上がる。それが新しい標的カモを呼び込む呼び水ともなる」



「なんという悪魔的発想……!」



「んで、“完璧な信用”を勝ち取ったのを見てから、『この銘柄、来月までに超伸びます! 倍プッシュ、倍プッシュ! 有り金全部ぶっ込みましょう! いやあ、むしろレバレッジ! レバレッジかけましょう! 10倍くらい!』と言って煽るのだ」



「んで、その銘柄が暴落するって話か」



「そうだ。そして、物陰からその破滅した人間を眺めるのが、何よりも楽しいと言っていたぞ。『怨嗟、恐怖、後悔、そして、責任転嫁からの罵り合い、〆の首吊り(・・・)。その光景を眺めていると実に爽やかな風が心を吹き抜ける』とかなんとか」



「悪魔か、ペコニアは!?」



「I am MAO.  d(・ω・*)b ウェ~イ」



「ああ、そうだった! 魔王と、その知恵袋だったな、お前らは!」



 愛らしい見た目の少女であっても、中身は正真正銘の悪魔。


 角と尻尾を気にしなければ超絶美人であっても、やっぱりペコニアもまた悪魔。


 友好的に見えても、所詮は人と相容れぬ存在。


 なんやかんやで話術と【常時発動・魅了チャーム】の組み合わせは、かなり強力ではないかと思うデビィドであった。

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