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問.俺は魔王を倒して世界を救った勇者なんだが、それでも税金って払わないとダメなの?  作者: 夢神 蒼茫


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第43話 所得とは (2)

「まあ、御貴族様は本当に大胆にやっているわよ。王都から離れれば離れる程、王様や中央政府の目が行き届かなくなるし。徴税ができているっていうのは、言い方を変えれば『統治が行き届いている』って事だし」



 ティエラとしては、そんな事はごくごく当たり前の話であった。


 デビィドにしても、ティエラがインジェヌオ伯爵シャルルとの交渉の際、“物納”について言及していたので、本当に常態化しているのだと思い知らされた形だ。


 不正の横行は地方に行けば行くほど顕著になる事も、同時に知ってしまった。



「あと、もう一つのやり口として、収入を隠匿するんじゃなくて、逆に支出をわざと増やして所得を減らすって方法もある」



「支出を増やす? それだと、儲けにならないんじゃねえか?」



「普通はそう考える。でも、その増えた支出が“事業外転用”の支出だった場合はどうなるかしら?」



「事業外支出……。例えば?」



「例として挙げるならば、“衣類”とかね。服を買った際にそれを“農業用作業服”と記載して経費に紛れ込ませたり、あるいは手紙とかを出す際も“業務用通信費”の名目にしておいたりね」



「あ~、実際に事業として使っていそうな品目なら、余程細かく監査しない限り、紛れて分からなくなるって話か」



「特に大きいのは燃料代ね。うちは周囲が森の開拓地だから伐採時にまきを確保できるけど、そうでもない街中の作業場とかだと、家庭用の暖炉や調理場の薪代も業務用の燃料費に入れちゃえばかなり浮く(・・)



「事業者と家庭が曖昧だからこそ、可能な裏テク(・・・)って事だな」



「本来なら、“事業用支出”と“家庭内支出”を分けないといけないんだけど、曖昧さを逆手にとってわざとごちゃ混ぜにする。家庭内支出を事業用支出に差し込む事が出来たら、所得が減って税金が安くなる。あと、自分の財布から出さないといけない家庭内支出も実質減るから、二重の意味で金が浮く(・・)



「なるほど。支出を増やした方が却って儲かるって、そう言う意味だったのか!」



 考える人は考えてやっているのだと、またまた思い知らされたデビィド。


 カード決済が普及していながら、わざわざ“現金・現物の支払い”がなお根強く残っているのも、裏道があればこそなのだと。



「ただね、あんましやり過ぎると、お上に怪しまれて“財務監査”が入るけど、そこは上手くやっている(・・・・・・・・)



「そういう言い方だと、ここもそうなのか。前に聞いたけど、ここの農場、税金、ほとんど払ってないんだっけ? 領主に渡してる上納物以外は」



「補助金やら、農家への優遇措置もあるし、そこらへんをフル活用してね。控除ってのは所得から直接引かれるからね」



「そうなのか?」



「例えば、収入1000万マネイ、支出が800万マネイの事業者がいるとして、所得はいくら?」



「そりゃ収入から支出を引くから、200万だよな?」



「そう。んで、控除として“50万マネイ”が出るとしたらば、所得200万マネイから50万マネイ引いて、150万マネイが“控除後所得”になる。そして、控除がある場合は、この“控除後所得”が所得税の計算の参照値となるの」



「あ~、なるほど。仮に税率2割だとすると、控除なしだと、200万マネイの2割だから40万が税金。控除があると、150万マネイの2割だから、30万マネイが税金になるって事か。10万マネイの差はデカいな!」



「それ、違う。正確には“60万マネイ”の差ですよ。控除の金額分、丸々浮く計算になりますから」



「そっか! 控除が出たら、その金額が丸々浮いて、しかも所得税の参照値も下がるから、そちらでも浮く計算か!」



「そこで戻るのが、高ランク冒険者に適応されていた控除の話」



「あ! Bランクは所得の半額控除! Aランク、Sランクは全額控除になるってやつか! 所得やら控除やらの話を聞いた後だと、そのヤバさが分かるな!」



 税金を引かれる事もなく、稼いだ額だけ丸々懐に入る計算になる。


 冒険者と言う“個人事業主”の視点で見た場合、喉から手が出るほどに欲しくなる垂涎の控除額だ。


 デビィドはティエラがAランク昇格の際に踊り狂っていた意味をようやくに理解する事が出来た。


 もちろん、その分だけ今はそのとんでもない控除が失われている事に落胆したが、今となっては完全に後の祭りだ。


 なぜもっとそこいらの所に気を配っていなかったのかと、数年前の自分を叱り飛ばしてやりたくなった。

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