第41話 裏金
「間違うなよ。あくまで、“切っ掛け”を作ったのがペコニアなだけで、原因事態は騎士団にあるんだからな。その点は誤解するなよ」
魔王からチャラけた雰囲気は消え去り、至って大真面目な表情に変わる。
魔族の言葉を信用する気にはなれないが、そうかと言って手が出ないのも事実。
まずは話を聞くかと、勇者パーティーの面々はリボンちゃんの話に耳を傾けた。
「なあ、モロコスよ、お前さん、なんで“テンプル騎士団”がお取り潰しになったか、理由は知っているよな?」
「無論。邪神崇拝がどうだの、訳の分からん理由で罪を被せられた。濡れ衣だ!」
「そう。それは濡れ衣だ。なにしろ、騎士団幹部がいた“奥の院”に邪神の神像を仕込んだのは他でもない、ペコニアなのだからな」
「なんだと!?」
リボンちゃんから語られた真実に衝撃を受け、モロコスは驚きのあまり椅子から立ち上がる。
そして、魔王の小さな体を締め上げんと自然と手が伸びたが、そこはデビィドに割って入られた。
伸びた手を掴まれ、制止された。
まともな力の勝負であればモロコスに分があるが、今は転職直後でレベルダウンしており、デビィドの方が勝っていたため、すんなりと止められた。
「よせ、モロコス。いくらレベルダウンしてステータスが下がったと言っても、今のお前でも腕力勝負なら余裕で勝っちまう」
「分かっている! だが……!」
「まあ、目の前に騎士団解散の原因がいるんだし、それについては気持ちは分かる。だが、魔王の転生云々を知らない連中からすれば、こいつをぶちのめしたお前は文句なしの重罪人になっちまう。だから、落ち着け」
デビィドにしても、魔王が転生しているという話はあまり公にするつもりはない。
折角、平和な世になったと言うのに、社会不安を煽るだけだ。
(前後の事情から、おそらくはこの事実に気付いているのは、王国の上層部や、直接接触を持った俺達くらいだ。ならば、現段階では様子見が無難)
これがデビィドの結論であり、ティエラやスオーラもそう考えている。
順法闘争の間は手が出ないデビィド。
優先事項に“子供達”が入っているので、下手な干渉をしてこない間は、反撃に出るつもりのないティエラとスオーラ。
この3人はひとまず“見”の状態だ。
ただ、モロコスだけは騎士団の件があるため、その原因究明が優先事項だ。
「…………。とにかく話してもらおうか、リボンちゃん様」
「ご理解いただけて感謝するよ、“元”聖戦士」
「貴様!」
「おぉ~、怖い怖い。筋肉モリモリのマッチョマンに潰される幼気な少女。世間様はどう思うかな~? 騎士団解散の“表向きな理由”を考えると、あまり暴力的な言動は止めた方がいいと思うが?」
「魔王も挑発は止めてください。話が進みません」
ここでスオーラが止めに入る。
普段は物静かなだけに、不意に発せられる“圧”は一際重い。
なにしろ、かつての魔王討伐から唯一レベルを上げたメンバーだ。
“パワーレベリング業”で自身にも経験点が入ってきており、1つとは言えレベルが上がっており、あの時より多少とは言え強くなっている。
本気になれば、レベルダウンしたモロコスも、“納税者”ではないので無敵状態ではない魔王リボンちゃんも、軽く捻る事が出来てしまう。
そう思えばこそ、魔王も、モロコスも、大人しく引き下がり、席に着いた。
そして、リボンちゃんは一呼吸おいてから話を続けた。
「んでだ、邪神の神像を仕込んだのは、間違いなくペコニアだ。だが、それを“依頼”した者は別にいる」
「誰だ、そいつは!?」
「もちろん、国王のジャンだよ。目障りな騎士団を潰す口実が欲しかったんで、その手伝いを魔王軍が請け負ったというわけだ」
「なん、だと……!?」
そうではないかと疑っていただけに、騎士団取り潰しの“主犯・国王”という説はモロコスも考えていた。
事実、騎士団解散で没収された財産は膨大であり、国庫は大いに潤った。
それを狙っての犯行である、と推察していた。
それが“実行犯”の口から漏れ出たのだ。
モロコスはもちろん、他のメンバーからしても捨て置けない案件だ。
「まあ、考えないでもなかったけど、そうまでして騎士団を潰したかった理由が見えてこないんだけど?」
「ククッ、聡明なる大魔導士でも分からんか。まあ、“天才”には“凡俗”の考えなど、分からんだろうて」
「早く話しなさいよ。勿体ぶらなくてもいいから」
「実に簡単な話だ。それこそ“徴税官”の領分。すなわち、“裏金”だよ。“脱税”と言っても良いかな? 不正な資金の流れ、それがお取り潰しの理由だよ」
ニヤリと笑う魔王。
組織の腐敗が騎士団解散の理由であると、その口より漏れ出た。




