第40話 真なる目的
「いや~、食べた食べた! なんと言うか、こう、腹の膨れる感覚と言うのも悪くないな、物理的栄養摂取は。 (* >ω<)=3 」
ちょいとばかしポッコリ膨らむ腹をさすり、ご満悦な魔王リボンちゃん。
見た目は可愛い女の子。
だが、中身は魔王であり、しかもなんとなくおっさん臭い。
この疫病神はどうにかならんのかと、何枚も重なる皿を凝視する勇者デビィド。
「んで、魔王さんよぉ」
「ちゃんと様付けで呼べって何度も言ってるだろぉ!? (#゜Д゜)凸 ゴルァ」
「態度わる……。はいはい、リボンちゃん様」
「うんうん。下僕への躾は大事だからな。 (((*≧艸≦)ププッ 」
「くっそ、無敵状態が解除されたら、いの一番でボコってやる」
もはや今のデビィドには、傷害罪だとか、未成年略取だとか、そんな罪状はどうでも良くなっていた。
罪を被ろうとも、この目の前にいる女の子の姿をした災厄を、何としてでも取り除かねばと決意を固める。
「まあまあ、そう不貞腐れるな。ここへ来たのは食事と寝床を確保するためでもあるが、こちらの真の狙いを話すためでもあるのだぞ。 (/ω\*) ゴクヒダヨ~」
「メシをたかりに来てる点は認めるのか……」
「人間の体は、その点が不便だ。メシは食わねばならんし、睡眠も必須。安心して食事と睡眠を確保できる場所というのは、年端も行かない女の子の体では貴重だ。それらを確保できる力もないし、財布はペコニアが持っている。 Zzz(-ω- )」
「まあ、その点は分からんでもないが、勇者パーティーの住処に堂々と居座る魔王と言うのもどうかと思うぞ?」
「なら、残っている納税の残金、全額払って♪ щ(゜Д゜щ) カモーン」
「こっちが素寒貧なのを知っているくせに、なんて嫌らしい性格だ」
「そりゃ“魔王”だからな! アハハヾ(≧∀≦*)ノ〃」
たかだかレベル10でありながら、レベル50の勇者を前に物怖じしないのはさすがと言えるが、デビィドからすれば腹立たしい事、この上なし。
無敵状態でなければ、ひき肉になるまで殴りつけていそうな怒気を放つ。
「ねえねえ、勇者様。そんなら、残りの納税額、あたしが出そうか?」
「却下だ」
「いいの? 少なくとも、色んな縛りは解かれるわよ?」
「それ以上に、魔王に金と経験点をくれてやるのが腹立たしい。職業に則した仕事で経験点が入る仕様上、“徴税官”であるこいつにとって“納税”は二重の意味で稼ぎになっちまう」
「まあ、そりゃそうなんですけどね」
「なら、“赤の他人”のお前から多額の金を貰うと、結構な額の“贈与税”を払う事になるからな! 俺の税金の残高に加えて、ティエラまで無駄に税金払っちまうとか、わざわざ“餌”をやる必要もないだろ」
デビィドは目の前の状況をつらつら口にしたが、これはティエラを傷つけた。
“赤の他人”という文言が、殊更に効いたのだ。
本来なら“結婚”を経て“夫婦”となっているはずなのに、その機会をことごとく逃してきた。
魔王討伐直後であれば、それもできた。
だが、デビィドの祖父が亡くなって、喪中にある相手の事を考えて、一度身を引いてしまったのが運の尽きだ。
その後一年間、デビィドは自堕落な生活に陥り、ティエラは何度か手紙を出すも、返事がなかった。
そうこうしている内に、スオーラとモロコスがテンプル騎士団の解散の煽りを受けて、行き場を失った子供達の居場所を求めてティエラに頼る事となった。
モロコスとの偽装結婚、開墾事業と忙しなく日々を過ごし、デビィドと再会してしまった。
やむを得なかったとはいえ、今の自分は既婚者。
ティエラとデビィドの関係は“赤の他人”、せいぜい“顔馴染み”でしかない。
夫婦となれば財布の共有もできたが、それができないのが今の二人。
もう少しうまく立ち回れなかったのかと、今更ながらに悩むティエラ。
何気なしに手を伸ばし、頭を撫でるデビィドであったが、その温かみだけが唯一の救いであり、同時に罪の意識を植え付けてくる。
スオーラやモロコスにしても、ティエラに負担を強いているため、その後ろめたさたるや、これまた重い。
そんな微妙な空気の4人に対し、リボンちゃんは笑顔を向ける。
魔王だと知らなければ、本当に愛くるしい少女の笑顔だ。
「まあ、そう気に病むな、かつての宿敵よ。 (σ´・∀・)σ オゥイェー 」
「かつてって、今もじゃねえか!?」
「なぁに、お前らへの嫌がらせも、“真の目的”の前の予備動作みたいなもんだ。今日ここに来たのも、その勧誘だよ。 (*・ω・)b 」
「どう聞いても、“悪魔の囁き”にしか聞こえんな」
「まあ、お前らがそう思うのは勝手だが、こちらの目的が現国王ジャンを破滅させると聞いてもか? (・∀・)ニヤニヤ」
「乗ろう!」
食い気味に叫んだのはモロコスであった。
「おいおい、モロコス、魔王の誘いに乗るとか正気か!?」
「それがしは正気だ。本気で国王に掣肘を加えるつもりでいる」
「騎士団の件をいつまで引きずるつもりだ。もうあの件は決着がついてんだろ?」
「濡れ衣だ! あれは王の仕掛けた陰謀だ!」
モロコスの目は血走っており、周囲を唖然とさせるほどだ。
だが、そんな狂人化しているとしか思えぬモロコスに、魔王はすり寄る。
「そのと━━━━━━ d(゜∀゜)b ━━━━━━り!!」
「魔王よ、何か知っているのか!?」
「も~ろ~こ~すぅ~、ちゃんと様付けで呼んで♪ (。^ω^)b゛。:+.゜ヨロピク。:+.」
「……で、リボンちゃん様は何か知っていると?」
「モチのロン♪ なにしろ、お前が所属していた“テンプル騎士団”がお取り潰しになる切っ掛けを作ったのは、ペコニアだからな! (*/ω/)キャッ」
「なにぃ!?」
リボンちゃんの思わぬ言葉に激昂するモロコス。
意外な話に驚く他3人。
そして、魔王の口から事件の裏側が語られる。




